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盗んだのはだ~れ?

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盗んだのはだ~れ?

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 洞窟から抜け出したドゥルムを生徒達は胸を撫で下ろしながら迎えた。
 そして、彼らの間を抜けて目の前にやってきたリーラテェロの手には、盗まれたドゥルムの首飾りが握られていた。
「ん……」
 リーラテェロは無言で首飾りを突き出し、ドゥルムも黙ってそれを受け取る。
 何か言いたそうにしながらもお互い口を開こうとしない。
「気持ちは口にしないと伝わらないよ」
 遠野 歌菜(とおの・かな)が二人の背中を押してあげる。
 二人は見守る生徒達の顔を見上げたあと、相手の目を見た。
「あ、あの……」
 そして、先に口を開いたのはドゥルムの方だった。
「疑ってごめん! こんな危険な目に合わせるつもりはなかったの!」
 リーラテェロが怒っていると思ったドゥルムは、震える手で首飾りを握りしめて謝った。
 本当に犯人は別にいたにも関わらず、信じることができなかった。
 すると、今度は暫く黙っていたリーラテェロが思いがけない言葉を口にする。
「ごめんなさい! 犯人は、私なの!」
「え!?」
「本当は窓から盗んだの、私なの。でも、でも、食堂に置いたのに、なくなって、て……どっか、いっちゃって……」
 リーラテェロの言葉に嗚咽が混ざりはじめる。
 その様子に、ドゥルムは怒るべきか、許すべきか、わからなかった。
 すると、背後から歌菜がドゥルムを抱きしめる。
「でも、探したんでしょ?」
「……うん……一生懸命探した、けど……見つからなくて……」
 食堂から無くなった後、リーラテェロは慌てて独りで首飾りを探していたという。それでも見つからず、問い詰められた時には皆の前で本当のことを話すことができなかったという。
「反省してるんでしょ? もうこんなことしないよね?」
 リーラテェロは鼻を啜りながら頻りに頷いていた。
「ねぇ、許してあげたら?」
 歌菜の言葉に、ドゥルムは戸惑いながらもリーラテェロを許そうと思った。
「大切なものだから」
 リーラテェロは頻りに謝り続けていた。
 すると、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)がパンと手を叩いた。
「泣くのはもうやめよう。これから何でも抱え込まず、困ったことがあったら大人に相談するんだよ」
 エースは頑張った勇敢な女の子二人に、棘のない薔薇を一輪ずつ渡す。
「これからは仲良しね。あまりお友達と喧嘩しちゃ駄目よ?」
 リリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)は二人の手をとると、友達の証として握手を交わさせた。

「……問題……なさそう……」
 菊花 みのり(きくばな・みのり)はドゥルムに見せてもらった首飾りを返す。
 回収した時に光ってた首飾りの石は、今はなんの変哲もない宝石になっている。
「……そう、でした……住んでた所……どんな、所?」
「どんな所? スロトルオ族はシボラにある小部族だよ。昔からカゲガミ様を奉っていて」
「……影?」
「どうかした?」
 みのりはごそごそと洞窟に捕まえた犯人が被っていた帽子を取り出す。
「これ、テェロの!?」
「……影が、犯人……ですか……?」
 みのりは詳しいことを聞くべく、ドゥルムからスロトルオ族について色々尋ねた。
 その様子をベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)は顎に手を当てをながら見守っていた。
「ちょっと調べておいた方がいいか」
 揺れは収まったが、もたれかかった桜の木は既に花びらを全て散らしていた。
 不意に、遠くからドゥルムとリーラテェロの名前が呼ばれる。
「「シスター!!」」
 目を凝らすと、シスターと子供たちが向かって来ていた。
 駆け出したドゥルムとリーラテェロはシスターに抱きつき――
「こらっ!!」
 骨の角ばった拳骨をくらった。
「危ないことをしちゃダメだといつも言ってるでしょう!!」
「ごめん」「ごめんなさい」
 怒られているのに、なんだか二人は嬉しそうだった。
 彼女たちの姿を見ていた川村 詩亜(かわむら・しあ)も思い出したように川村 玲亜(かわむら・れあ)を怒る。
「玲亜もあんまり迷子になっちゃダメだよ!」
「う〜ん、なんでだろう? いつの間に、お姉ちゃん達どこか行っちゃったの?」
「いなくなったのは玲亜の方だからね?」
 不思議そうにする玲亜に、詩亜は心配したことを伝えていた。
「そういえば、シスター! 洞窟にでっかいムカデがいたよ!」
 ガミガミと叱るシスターの話の腰を折って、リーラテェロが両手を広げて話した。
「テェロはヒラニプラムカデにあったのですか。丁度産卵時期ですから、狩りに入るにしてももう少し待たないとダメですよ」
「……へ?」
 シスターは木苺などの果物を与える代わりに、ヒラニプラムカデを食用として利用させてもらっていることを話した。
 身がプリプリしていて海老のような触感がするのだと話すシスター。
 話を聞いたリーラテェロの顔が青ざめる。
「そうだ。漬けていた物があったはずですが、皆さんもどうですか? 摘まみにもいけますよ?」
 生徒達が反応に困っていると、どこからともなく焼き菓子の甘い香りがしてくる。
「みんな準備ができたよ!」
 ドゥルムが見つかった後、シスターを呼びにいった想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)がクッキーを乗せた皿を持って戻ってきた。
「教会の庭にお菓子とお茶の支度があるけど、どうする?」
 夢悠が子供たちと作ったクッキーを配り始める。
 生徒達はムカデはまた今度にして、用意されたお菓子と飲み物を頂くことにした。

 教会に戻ると、生徒達は夢悠と子供たちのコラボ演奏を聞きながら穏やかな時を過ごす。
 一緒に食事し、話し相手になり、遊んだり……そんな中でドゥルムはリーラテェロに手を引かれていた。
 今まで馴染めなかった教会が、ドゥルムにとってその日初めて『家』に感じられた。

(水竜の洞窟――完)

担当マスターより

▼担当マスター

虎@雪

▼マスターコメント

 『盗んだのはだ〜れ?』にご参加いただきありがとうございました。
 リアクション製作を担当させていただきました、虎@雪(とらっとゆき)です。

 今回は初登場の子供二人の話になりました。

 洞窟ということで相手はムカデと水竜。
 水竜は鱗が硬い、でかい。ムカデは甲羅が硬い、そしてでかい。
 一緒か?
 ちなみに私は昆虫全般が苦手です

 楽しく書かせていただきましたが、皆さまに喜んでもらえる作品になっていれば嬉しいです。 

 いつものことながら素直な感想が聞ければと思います。

 機会がありましたら、またどうぞよろしくお願いいたします。
 ありがとございました。