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見えざる姿とパンツとヒーロー

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見えざる姿とパンツとヒーロー

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序章

 覗き、痴漢、下着泥棒といった犯罪行為を繰り返す変態がいた。
 その名は通称【インヴィジブルポーズ】と呼ばれ、一部ではヒーローとも呼ばれる謎の存在。
 彼、または彼女の捜索が始まり、慌ただしい雰囲気の魔法学校イルミンスールでは、他校を含める多くの生徒が参加していたが、目的は各々違っていた。


 童顔つり目のウィザード、ウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)は囮を使うことにした。
 彼は餌となるモノを購買に買いに行く。即ち、パンツかそれに準ずるモノだ。
 囮用とはいえ、かなり恥ずかしい事だったが、とりあえず気にしない事にする。
 その道中、廊下の曲がり角だった。パンツが落ちているではないか。
「なぜ、こんな所に……」
 まぎれもないパンツ。しかも紐。いわゆる紐パン。突然のセクシーパンツ出現に驚くウィルネスト。
 周りには誰もいない、落とし物……無いだろう。パンツを落とすとは一体どのような状況か考え、気づく。
 今、この状況でパンツがある。それは、つまり……。
「めっけたで〜!」
 そう叫んだのは銀色の髪をオールバックにしたナイト 叶野虎詠(かのう・こよみ) だった。
「もう逃げられへんでぇ〜、インヴィジブルポーズ!」
「ちょっと待て、俺は……」
「言い逃れはできへんよ。そこのパンツを盗もうとしたんを見てたんやで?」
「だから俺は……」
 だが、誤解を解こうとするウィルネスト無視する虎詠。
「たぁ〜!」
 ウィルネストへ向かって投網が襲いかかる。
「な、なんだこりゃ?」
「大漁〜大漁〜♪ 後はフォンテーヌに任せたで」
 そう言われたのは虎詠のパートナーである前髪ぱっつんロング魔女の オディロン・フォンテーヌ(おでぃろん・ふぉんてーぬ)
「貴様のその根性を我輩が叩きなおしてやろう……!」
 囮用に自分のパンツを使われたオディロンは、怒りの矛先を網にもがく獲物へと向く。
「しっかし、囮用のを落とした方に掛るとは思わんかったで」
 つまり、考えていた事は同じだった。下着を囮にして捕まえる。そんな事はわかっていた。
 爆炎が巻き起こり、ウィルネストに絡んでいた網が灰となる。
「な、なんやなんや?」
「勝手に人を犯人扱いしやがって……とりあえず、燃やすぞ?」
 ウィルネストの周囲を炎が渦巻く。
「あらら、もしかして……人違いやったかなぁ?」
 答えは紅蓮の炎だった。虎詠を焼き尽くさんと荒れ狂う炎。ウィルネストは爆発寸前だ。
「ちょ、まっ、間違いやったんや。堪忍してや〜?」
 冷や汗を流す虎詠。
 その時、誰かが間に割って入った。
「やめなさい、こんな争いは無意味です」
 その覆面らしきモノで顔を隠した誰かはそう言った。仲裁のつもりらしい。続けて言う。
「何が原因かは私には解りません……しかし、彼は謝ったのです。許しては貰えませんか?」
 急に言われて驚いたウィルネストは、少しだけ冷静になった。
「まあ、確かに……俺も囮に掛かった奴を、問答無用で焼いてやろうと思ってたしな」
 物騒な事を言うウィルネストだが、一応は許してくれたらしい。
「助かったで〜ありがとなぁ」
 礼を言うと、その誰かは、当然の事をしただけです、と言うと、そのまま廊下に落ちていた紐パンを拾い上げ去っていく。
「いい人やったなぁ」
「待て、何故に吾輩の下着を持って行く?」
 一瞬の間の後に気づく、紐パンが無い。あまりのさり気ない動きに気付けなかった。
「あいつ、まさか……」
 そして思い出す。覆面らしきモノを……あれはなんだった? あれは、あの布は……。
「あいつがインヴィジブルポーズかいな!?」
 ならばと、去って行った方に振り向いて、虎詠は相手に聞こえるように叫んだ。
「そのパンツ、男が穿いてるやつやぞー!」
「ご心配無く! 私はどちらでもイケる!」
 返事はすぐに返ってきた。その後、炎を手にするウィルネストと、楽しそうに笑ってる虎詠、そして鳥肌が抑えられないオディロンは後を追う。
 パンツを頭から被り、尚且つ、紳士的な姿勢を崩さない変態紳士【インヴィジブルポーズ】を……。