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激熱…夏の陣!東西ロケット花火戦争

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第4章 不味いと思えば撃沈うまいと思えばうまし

 敵地を混乱させるために進入している朝霧 垂(あさぎり・しづり)は、東軍側で花火を撃っていた。
 もちろん仲間として信用させるための行動だ。
 パートナーのライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)は、東軍の人々に垂が作ったオニギリを配っている。
 数分後ライゼは垂へアイコンタクトで、西軍側へ戻る合図を送った。
「何で敵側の人間に俺の作ったオニギリを配ってたんだ?」
「それは相手を倒す必殺兵器に・・・」
「へい・・・何だって!?」
 ボソッと小声で言うライゼに、垂は眉を吊り上げて詰め寄る。
「いえっ敵に塩を送るという意味ですよ。あっははは・・・」
 とっさに言い訳し、ライゼは乾いた笑いをする。
 西軍の基地へ帰ろうとしたその時、バイクを隠してある岩場付近に東軍側の人間が1人待機していた。
「そこのおまえ!この間決めた東軍の合言葉、今すぐここでいってみろ」
 運が悪いことに宮辺 九郎(みやべ・くろう)が垂とライゼの行く手を阻む。
 これは九郎が作った嘘で、合言葉の答えなんて存在しない。
「えっ何だっけ・・・えーっと・・・(どうしよう、そんなの知らないぞ・・・!)」
 冷や汗を頬に浮かべて、垂は記憶中から答えを探す。
「うーん・・・レッツゴー戦争でしたっけ?」
「―・・・違う!(何だその適当すぎる答えは)」
 適当に答えるライゼに対して、九郎は人差し指でビシッと指した。
「怪しいなぁ・・・素直に白状すれば簡便してやる。さもなくば・・・」
 九郎は指を鳴らしなら2人へ詰め寄っていく。
「あわわっ・・・!あっそうだ、これどうぞ!」
「何だニギリメシか?」
「そうです垂さんが作ったんですよ」
「丁度腹も減ってきたし・・・もらうか」
 ライゼからオニギリを受け取り、九郎は口に放り込んだ。
「うっ・・・ぐぁああっ!」
 苦しそうに呻き出し、顔を青ざめて九郎は悲鳴を上げてしまう。
「―・・・な・・・何で?ただのオニギリだぞ!?」
「まっ・・・ま・・・不味い・・・宇宙の不味さが競い合うように、無限地獄のハーモニーが!」
 凶器を食してしまった彼は、地面にのたうち回ってもがき苦しむ。
「おまえっ、それ以上言ったら土中に埋める!」
 垂は怒りで顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。
「それよりも今のうちに逃げましょう」
 ライゼは垂をなだめながら、バイクの方へ向かう。
「(フフフッ、ゲテ汁やタバスコスプレーなんて垂の料理と比較にもならないね。普通に作っても凶器になるんだから)」
 肩を震わせてライゼは必死に笑いを堪える。
「くそぉお覚えてろよー!」
 後ろにライゼを乗せてバイクを走らせ、悔しさのあまり叫んだ垂の声は、シャンバラ大荒野中に響き渡る。



「こんなところで何寝ているんだよ、九郎兄ぃ〜」
 倒れている九郎を皆川 ユイン(みながわ・ゆいん)が見下ろす。
「ユ・・・ユイン!」
 相手の顔を見るなり、九郎は慌てて飛び起きた。
「―・・・どっち側についているんだ?」
「どっちって?」
「合言葉を言え・・・」
「知らない」
「スパイだな・・・?」
 きっぱり言うユインを、九郎が縄で縛り上げようとする。
「だとしたらどうだって言うんだよ」
 ユインは軽々と避け、ロケット花火を九郎の尻に突き刺す。
「―・・・痛ってぇえー!てめぇユイン、何しやがる!ちょっちょ・・・待てやめろ!!」
「打ち上げ花火・・・いっくよー♪」
 問答無用で突き刺した花火にライターで火をつけた。
「あっはははー♪綺麗な花火だなぁ」
 笑いながらユインが天空を仰ぎ見る。
「そこで寝ていなよボウヤ。私は楽しく遊んでくるからさ」
 空から落下して地面につっぷす彼を見下ろし、ユインはスキップしながら東軍基地へ潜入する。



 垂とライゼは西軍側へ戻る途中、落下してくる花火から身を守るためにライゼが大傘型の光条兵器を取り出した拍子に、残りのオニギリを地面に落としてしまう。
 もちろんわざと落としたのだった。
「あぁああーっ、俺がせっかく作ったのに落としやがったなぁあ!」
 バイクを運転しながら垂が怒鳴る。
「不可抗力だよ、不可抗力♪」
「(ちくしょう・・・コレが終わったら後で覚えてろよライゼ・・・)」
 憤怒のオーラを身に纏い、垂はバイクを走らせる。