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闇世界の廃病棟(第1回/全3回)

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闇世界の廃病棟(第1回/全3回)

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第10章 生命の実験体

-PM22:30-

 美羽たちが実験場に辿り着くと丸い金網の床の周りに並べられた、溶液が入ったシリンダーの中に死体が入っていた。
 天井を見上げると、床との間は7mほど差があった。
「行方不明になった人たちも、この中にいるのかしら?どこにも外傷がないから、これから使おうとしていたのかもしれないわ」
 シリンダーに入った死体を見ながらも、美羽は辺りに資料がないか探す。
「うぅ・・・死体だらけで怖いんですけど・・・」
 おぞましい光景に震えているベアトリーチェは美羽の傍から離れない。
「何ですかここは・・・」
 地獄絵図に義純は、思わず顔を顰める。
「(どうして実験場だけ隔離されているんだ?患者を使って何か人体実験でもしていたのだろうか・・・)」
 眉を潜め速人は疑問符を浮かべる。
「(ただの死体ばっかりで金目の物はなさそうね)」
 目ぼしい物が見つからず、メニエスは嘆息する。
「この辺の扉は全て閉まっていますね・・・」
 錆ついた扉を幸が手で無理やり開けようとするが開かなかった。
「(この死体たちを使い、何かの実験をしようとしていたのであろうか?)」
 風次郎は心中で考え込む。
「こうやって俺たちが行動している所を、犯人が見ているかもしれないよな」
「そうかもしれないであろうな・・・」
「あぁ・・・どこかにカメラが仕掛けられているかもしれないぜ」
 睨むように雷蔵が広い実験場を眺める。
「―・・・やっぱりちゃんと弔ってやったほうがいいわよね」
 リネンはシリンダーによじ登って蓋を外し、中から死体を出してやる。
「遺体は中庭で燃やしてあげましょうか」
「そうね・・・」
 死者を火葬してやろうという義純の提案に、リネンはコクリと頷く。
「エレベーターで運んであげましょう」
 死者を火葬してやるために、葉月はエレベーターの方へ引きずっていった。



 葉月がエレベーターの前へ行くとゴゴゴッと地鳴りがし始めた。
「何・・・地震!?」
 揺れに耐え切れずミーナは床へ尻餅をついてしまう。
 ドォンッドォンッと床を突き上げる音が響く。
「下から何か来ます・・・皆さん下って!」
 大地は叫ぶように言い、生徒たちを壁際へ行かせる。 
 金網状の床を突き破り、体長4mの女型のゴーストが現れた。
 エレベーターでラルクたちを襲撃してきたあのゴーストがまた襲ってきたのだった。
 髪の毛はなく目は白く濁ったような色をしている。
「予想通りゴーストが現れましたね・・・」
 巨大な化け物を見上げて、葉月は睨むよう見据えた。
 ギェエエエッと金切り声を上げ、ミーナ向かって手を振り下ろす。
 紙一重でなんとか避けたが、まともにくらったらただではすまい。
 なぎこがハンマーで殴りかかろうとすると、腹部からもう一つの半身を現し彼女を捕まえようとする。
「危ないー!」
 とっさに真がなぎこを庇おうとするが、彼女の代わりに捕まってしまう。
「ぐっ・・・あぁああー!」
 ゴーストは真の身体を腹部の半身の腕で両手で掴み、ミシミシッと締めつける。
 真を助けようとカガチはハンマーを握り、彼を拘束している手へ殴りつけ、後方へ飛び退き再び捕まえようとしている手から逃れた。
「それなら動きを止めるまでだ!」
 龍壱は六尺程の大太刀状の光条兵器で、ゴーストの足を狙い床を蹴って斬りかかる。
「ちっ・・・浅かったか」
 避けられてしまい掠った程度だった。
「これが実験体でしょうか・・・なかなかの悪趣味ですね。患者や死者を使って作ったのでしょう。・・・・・・大丈夫ですか?」
 異様な光景に苦笑いをした真人は鉄パイプを握り締め、怖がっていないかセルファを気にかける。
「べ・・・別に怖いわけじゃないわよ」
「落ち着きなさい。気持ちを制御すれば恐怖心なんてどうとでもなるでしょ」
「そんなことできるのあんたぐらいよ!」
 セルファはムッとした表情をする。
「そうですか・・・ではいきますよ!」
 鉄パイプを片手に真人は、標的へ突っ込んでいく。
 足元を狙って殴りかかる。
 女型のゴーストはバランスを崩し、ドスンッと床へ倒れる。
「やぁああっ!」
 巨大な光の剣の形状をした光条兵器で、美羽はダンッと床を蹴って右袈裟斬りを繰り出す。
 ザバッと斬られたターゲットの背から、赤黒い血がブシュァアアッと出た。
「けっこうなダメージを与えられたかしら・・・きゃぁああ!」
 立ち上がった化け物から振り降ろされる。
「美羽さん避けてー!」
 ベアトリーチェの声に危機を察知して起き上がろうとするが、ゴーストがブンッと振るう2本の左腕にぶつかり、壁際に身体を飛ばされる。
「―・・・うぐっ・・・げほっ」
 叩きつけられた衝撃で咳き込む。
「今ヒールで治してあげます!」
 駆けつけたベアトリーチェは、美羽にヒールをかける。
 再びギェエエエッと声を上げて、今度はリネンに襲いかかった。
「(あの体格とスピードに加えて恐ろしい力・・・、なかなか致命傷を狙えないわね。さて・・・どうしたらいいかしら)」
 大剣状の光条兵器を構え、リネンは攻撃の隙を窺う。
「(・・・やっぱり狙うなら足よね!)」
 左足を狙いリネンが斬りかかる。
「リネン危ないー!」
 半身の右腕がリネンを捕らえようとしていたその時、ヘイリーがリネンの身体を抱えて床へ転がる。
 ゴーストはドスンドスンッと足音を立てて、彼女たちに襲いかかろうとする。
「こっちです・・・こっちへ来なさい!」
 真人と葉月がゴーストへ鉄パイプを投げつけ、ヘイリーたちから引き離す。
 鉄パイプをターゲット目掛けて、速人は力いっぱい投げつけた。
「ラルクさん、それを踏み台にしてくれ!」
 床に突き刺さった鉄パイプを踏み台にし、アーミーショットガンのトリガーを引き、ターゲットの背骨へスプレーショットを放つ。
 ゴーストの身体はドォオンッと床へ倒れた。
 カガチが亡者の心臓を取り出し、握り潰すと動かなくなった。
「これで絶命するっていうことは、他のヤツと違ってコイツには全てのパーツがあったようだな・・・」
 研究体の身体は蕩け腐り落ち、ドロドロに朽ちていく。
「力を使い果たした末路・・・ということでしょうか」
 葉月は眉を潜めて言う。
「早く死者たちを中庭に運んで火葬してあげましょう」
「あぁ・・・そうだな」
 真人の言葉に頷いた速人たちは、死者たちをエレベーターで病棟の中庭へ運んでいく。