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黒い悪魔をやっつけろ!

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第4章 戦い終わって陽が暮れて

「百合園といっても、やっぱり下水道は汚いね……。で、でも頑張らないと!」
 百合園の友人が暮す寮がピンチと聞き蒼空学園から駆けつけたリアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)は、桜井静香の許可を得て、下水道を探索していた。
 右肩にライトをつけて歩いていくと、Gだけではなく様々な害虫を目にする。
 とりあえず、他の虫は放っておいて、今回はGだけをターゲットに、倒していく。
 幸い、Big・Gの姿はない。化粧水も多少は下水に流れたかもしれないが、これだけ薄まっていると触れても巨大化しないようだ。
「寮にも、学院にも行かせないよっ!」
 固まっているGを発見したリアトリスはバスタードソードで爆炎波を放ち殲滅する。
「リアトリスさん」
「……ん?」
 声に振り向くと、百合園の用務員の姿があった。
「寮の方、落ち着いたようですから、そろそろリアトリスさんも上がって下さい」
「よかった……。じゃ、一通り見回ったら戻るね」
 リアトリスは笑顔を見せて、最後にライトの光を当てて下水の中をくまなく見回すのだった。

 全体清掃であらかた片付けた後、部屋の中の物をすべて収納し、百合園生と手伝いに来た人々は手分けしてくん煙殺虫剤を寮全体で使用した。
 寮の外で黒い悪魔や死骸、黒い悪魔の被害にあった食料、衣服などをすべて燃やしていく。
 掃除用具も丁寧に洗い、身につけていたエプロンや三角巾の洗濯も協力し合いながら行なった。
 すべての片付けが終わる頃には、寮に戻れるようになっていて、寮に戻って殺虫剤の空き缶を処分した後、ようやく皆の顔に満面の笑顔が戻ってきた。
「化粧水もいいですけれど、ここは肌に良い食事を採って、百合園の乙女に相応しい健康的な美しさを手に入れましょう」
 寮長のその言葉を受けて、百合園生達は食事の準備を始める。
 寄せてあったテーブルを戻して、椅子を並べて。
 他校生も交えて、皆で野菜たっぷりの料理を囲むのだった。
「それにしても、大きなカブトムシでしたね。地球の男の子達に送ってあげられればよかったのですが」
 ロザリンドは素でそう言った。Gがクワガタ、カブトムシのような子供に愛されている昆虫だと完全に思い込んでいた。
「私が捕まえた分は、寮長と相談して魔法学校生に差し上げました。イルミンスールの森あたりでは静かに暮らせそうですから」
「そ、そうなんです、か……」
 話を聞いたは、イルミンスールが少し心配になった。
「ふふふふふふ〜♪」
 その隣では、エミリアが楽しそうに化粧水を顔にペたぺたと塗りつけている。
 部屋を巡り、見つけ出した化粧水を拝借したのだ。とはいえ、量が少ないのでこの試しの1回だけで使いきってしまいそうだったが。
「まあ、ホント……すべすべになりますわね」
 テーブルに並んだ食卓よりも、ミラベルも、報酬代わりに1回分だけもらったピンクの化粧水に夢中だった。
「蒼空学園に持ち帰って、同じ事態になったりしないようにしないといけませんね」
 言いながら、優希も化粧水を試してみる。
 手鏡を取り出して自分の顔を見ると、普段より艶めいていて。触れてもすべすべで自分の肌ではないくらい心地よい感触だった。
 思わず大きく感嘆の溜息をつく。
「いいのう……」
「はいこれ」
 と、レキは、羨ましげにミラベルを見ていたミアに小瓶を渡す。
「お、おおおおっ。欲しいと思っとたんじゃ!」
「ミアが欲しがってたから、校長に分けてもらったんだ。でも売って儲けるとか悪巧みに使うのは禁止だよ?」
「わかったのじゃ」
 ミアは嬉しそうに瓶を握り締める。美容というより、少しでも大きくなれればと期待を込めて。
「ふぅ……ヒドい目にあったぁ〜。でも、もう大丈夫だよね? 大丈夫だって思っていいよね?」
 意識を取り戻したミルディアはまだ不安気に床を見回している。
「もう大丈夫よ」
 ルーナが優しく声をかけると、ミルディアは強く頷いた。
「うん、ありがとね! それじゃ、食べようか〜」
「いただきます」
「いただきます」
 少女達の元気な声が上がり、楽しい夕食会が始まる――。


「ミア、なんだか嬉しそうですね」
「駆除のついでに目的のものを手に入れたからのう♪」
 イルミンスールに戻ったセトは、エレミアの嬉しそうな様子に微笑みを浮かべた。
 自分は寮には入れなかったが、エレミアは友人を助け、目的を達することができたらしい。
「それじゃ、友人宅に行ってくるのじゃ」
 エレミアは楽しそうに走り出す。その手の中には、ピンク色の液体が入った小瓶が。

「校長、実験用に持ち帰りました」
 朱宮は、クーラーボックスに入れて百合園からもってきたBig・Gを、イルミンスールの校長室でかぽっと開けてみせる。
「あれ? 何かありましたか?」
 焦げ臭い匂いがする。見回せば、所々に焦げた跡があった。
「ありましたですぅ、やむなくすべて処分しましたぁ。百合園から持って来たソレはすぐ実験室に持っていくですぅ〜」
「はい。……あ」
 クーラーボックスに入れてきたとはいえ、ヴァイシャリーからイルミンスールは結構な距離がある。
 勿論ソレは解凍されていて……。
 飛び出したGがべたりと朱宮の顔に張り付いた。
「!!!!」
 思わず、朱宮は自分の顔を張り飛ばすが如く、外へGを払い飛ばした。
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!」
 突如、空が赤く染まった。
「ううっ、木に吊るしておいた暴走魔がまた暴走したですぅー!」

 校長室をパニックに陥れたウィルネストは、パートナーのミーツェに箒で殴られて気絶した後、エリザベートの命令でイルミンスールの木に吊るされていた。
「さーて、使ってみようかのぅ♪」
 エレミアがそんなウィルネストの傍で、捕獲器の中のGに薬を振り掛ける。
 次の瞬間、再び響き渡る叫び声と炎。
 イルミンスールの眠れない夜が始まる……!


 魅世瑠と、フローレンスラズの3人は、キマクの荒野へと戻ってきていた。
「負けたもの、食う! 逃がすことナイ! 焼肉定食、森のオキテ!」
「いや、今回だけは特別だ」
「なんだか、他人事とは思えなくてな」
 ラズは魅世瑠達が捕まえたもの――3種類のGを焼肉定食にするべきだ……もとい、弱肉強食を主張するも、魅世瑠とフローレンスはすっかりGを不憫に思ってしまっていて、フローレンスの方はヒールまでかけてあげていた。
「ここなら人間様には迷惑はかからねぇだろ。強く生きるんだぜ!」
 魅世瑠はGを荒野に逃がすと、力強く声をかける。
「ま、あとは運次第だねぇ。ツキがありゃ生き延びられるだろ。そんときゃまた逢おうぜ!」
 フローレンスはさわやかに別れを告げた。
「ん〜〜〜〜」
 ラズは不満だったが、2人の満足気な様子を見て、説得を諦めて、振り返ることもなく去り行くG達の艶やかな背を見送った。

 ――その後、キマクの荒野で巨大な黒い昆虫とピンク色の昆虫のカップルの姿が冒険達により目撃されたという。

担当マスターより

▼担当マスター

藤森あず

▼マスターコメント

大変お待たせいたしました。申し訳ありません。

リアクションの代筆をさせていただきました、川岸満里亜です。
藤森マスターのリアクションを楽しみにされていた方、すみませんっ。
なんだか皆様のプライベートを覗き見てしまった気分です――!

今回のリアクションは藤森マスターのプロットを参考に川岸が最初から書かせていただきました。

それにしても、今年はとにかくGと縁がある年でした。
一番恐ろしかったのは、台所のレンジの……イエナンデモアリマセン(汗)。
せめて、パラミタがG王国にならないよう注意したいと思います。
イルミンスールに関しては、駆除剤を作り散布して解決したはずです!

それでは、今後共蒼空のフロンティアを楽しんでいただければ幸いです。

▼マスター個別コメント