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リアクション
第2章 隠されたカードキーを探せ!
-PM17:10-
「ちくしょうーっ、探索だけのつもりだったのに帰りそびれちまったぜ!」
探検気分でゴーストタウンに来た白上 蓮(しらかみ・れん)は、苛立ち紛れにトンネルの奥でダンダンッと足を踏み鳴らす。
「このレンガの壁・・・どんな技使っても壊せねぇみたいだな。はぁー・・・ここにいてもしかたねぇし。とりあえず病棟に戻って一晩過ごすか」
銀色の髪を片手でぐしぐしと掻き、病棟の方へトボトボと向かっていく。
そっと入り口の戸を開け、病棟へ足を踏み入れた。
人の気配がまったくしない、静まりかえった不気味な空間に彼は思わず唾を飲み込む。
「確か・・・俺の他にも生徒たちがトンネルから町に入って行ったよな。もしかしたらまだ何人かこの中にいるかも・・・。おぉーいっ、誰かいないのか?おーい・・・」
呼びかける声がだんだんと小さくなっていく。
「べっ別に怖いわけじゃないぞ!ただ、1人で夜明かしするのは退屈だなーって・・・」
独り言を並べて強がりながらズンズン廊下を進む。
「今、足音が聞こえたような・・・。―・・・なぁ、誰か・・・そこにいるのか?」
エンシャントワンドを握り締め、蓮は恐る恐る近寄っていった。
「―・・・っ!」
悲鳴を飲み込んだ彼は相手に気づかれないよう、慎重に離れようとする。
人間はいくつも頭を持っていない、足首から先がギロチンのような刃をしていない。
生気の感じられない灰色にくすんだ肌のゴーストが蓮に気づき、ギェエエーェエッと悲鳴のような金切り声を上げ、両手で床を這うように迫り来る。
「うっ・・・うぁああああー!!」
叫び声を上げるとやっと足が動いた。
「こんなところで・・・こんなところで死んでたまるか・・・死んでたまるもんかぁああっ!」
絶対に生きて帰るんだと自分に言い聞かせるように叫び、手術室の中へ逃げ込んだ。
床に落ちていた薄汚れたシーツを被り、化け物に見つからないように医療機械の後ろに隠れる。
何の力も持たない人間だったら気が狂ってしまいそうだった。
じっと動かずに、夜が明けるのを待つことにした。
「ねぇ・・・さっき誰かの声が聞こえなかった?」
手術室の傍を通りかかった神和 綺人(かんなぎ・あやと)が、声の主を探してキョロキョロと辺りを見回す。
「えぇ、私も聞こえました・・・。もしかしたら・・・誰かがゴーストに襲われたのかもしれませんね」
クリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)は軽く頷き、亡者に追われて怪我をしていないか心配そうな顔をする。
「・・・もしかしたらその辺にゴーストが潜んでいるのかもな。注意して進もう・・・」
ナースステーションの方へ顔を向け、ユーリ・ウィルトゥス(ゆーり・うぃるとぅす)は死者が徘徊していないか警戒する。
「まずは持ち出し記録を確認しないとね」
カードキーの持ち出し記録を確認しようと、綺人はナースステーションに入ると、棚に納まっている1冊のノートを手に取った。
「えっと・・・4階のエリアEに1枚あるみたいだね」
「―・・・たしか2階までしか階段がなかったよな?」
「2階から先はエレベーターを使うんですよ。まずは実験場へ向かいましょう」
「・・・あぁ・・・そうだったな。よし、じゃあ行ってみるか」
ユーリたちはカードキーを探し出すため、エリアEへ向かうことにした。
-PM18:05-
「・・・ふぅ、やっとついたか」
30分かけて4階に上ったエレベーターから降り、ユーリは両腕を上げてぐーっと背伸びをする。
「持ち出し記録によると、ここから5つ目の部屋にあるみたいだよ」
「ではそこへ行ってみましょうか」
明かりのない真っ暗な廊下を慎重に進んでいく。
「さっき4つ目のドアの前を通ったはすだから・・・ここかな?」
ドアに手を触れて数えながら確認し、ようやく5目のドアの前にたどり着いた。
「ゴーストたちが寄ってこないように明かりを点けていないから、どこに何があるのかさっぱりだよ」
「アヤ・・・この中に何かあるみたいですよ」
クリスは凍った水槽に手を触れ、机の中を調べている綺人を呼ぶ。
「平べったい小さな四角いカードがあるね・・・。えっ、まさかこれが!?」
「犯人が使えないように、わざとこういう風にしたんでしょうか・・・」
「うーん・・・かもしれないね」
「どうします?アヤの火術なら氷を溶かせると思いますけど」
「そうだね・・・ちょっと不安だけど、それしか方法がないしなぁ・・・」
水槽を逆さにして床に置くと綺人は精神を集中させ、火術の力を調節して氷を徐々に溶かしていく。
「・・・これがカードキーなのか?」
ユーリが両手で水槽をひょいっと持ち上げて白いカードを拾う。
「うん、そうだよ」
「ゴーストの気配がしません・・・今のうちに行きましょう」
亡者たちが待ち構えていないか、クリスがドアから顔を覗かせて確認する。
「さぁAエリアへ急ごう!」
綺人たちは白のカードキーを手に、エレベーターへ駆け込んでいった。
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