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リアクション
第二章 灯台へ 1
数時間で、船は灯台島へと到着する。
イーハブが碇を降ろし、島と船とを結ぶ木の板を設置する。
「では、ワシの護衛隊と船の護衛の二手に分かれてもらいたいんじゃが」
イーハブ甲板に集まった生徒たちをザッと見回す。
「それでは、自分が!」
一歩前に踏み出したのは、剛太郎だった。
イーハブは、ジッと剛太郎の目を見る。一瞬、鋭い目つきになり、右の口端をグッと上げて笑みを浮かべる。
「ほう……」
そんな真剣な顔も、すぐに崩れ、わざとらしい弱々しい顔つきになる。
「男だけじゃ花がないのう。誰か、女子は来てくれんのか? ワシ、男だけじゃと灯台に登る気力がなくなるわい」
「まぁ、まぁ、そう言わず。自分の相方も連れていきますので」
そう言って、剛太郎はソフィア・クレメント(そふぃあ・くれめんと)を紹介する。
「マシンで詰まらないとは思いますが一応は女の子だし、コレでも良かったらいっぱいHな事していいですよ〜」
「む、そ、そうか? ほう、それなら……うむ……」
イーハブはソフィアをジロジロと嘗め回すように見る。
その視線を受けて、ソフィアは額に血管を浮き上がらせる。
「……剛太郎さん。その発言、必ず後悔させてあげますわ」
「わ、私も行きます!」
そう言って、手を上げたのはアリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)だ。
「ほう、これはまた、可憐なお嬢ちゃんじゃのう」
イーハブがアリアを、身を乗り出して見る。
「ほうほう。幼そうに見える顔に似合わず、ナイスバディじゃ! このアンバランスさがたまらんのう」
「え? あ、ちょっと、どこ見てるんですか」
アリアが顔を真っ赤にして、両腕で胸を隠す方にしてかばう。
「あー、一ついいですか?」
ツルリと光る、頭髪の無い頭をペンで書きながら守屋 輝寛(もりや・てるひろ)がイーハブに言う。
「灯台の周辺の調査も必要じゃないですか? 灯台の光が消えてから魔物も出るという話ですからね」
「うむ。もっともじゃが……」
イーハブは、輝寛の横にいる、ナディア・ウルフ(なでぃあ・うるふ)と大祝 鶴姫(おおほうり・つるひめ)を見る。
「ハゲはいらんが、そっちのボインちゃんと、大和撫子ちゃんは、灯台に来てくれんかの? ハゲはどうでもいいんじゃが」
「……」
「殿はハゲではありません」
ナディアがキッと、イーハブを睨み、鶴姫が眉根を上げながら言う。
「ま、まあ、いいじゃないですか。それでは許可が下りましたので、行きましょうか」
「島の巡回ですか、わかりました」
輝寛とナディア、鶴姫が船を下りていく。
「ああ、ボインちゃんと、大和撫子ちゃんが……」
「じゃあ、アトリ、僕たちも湖を見に行こうよ」
「そうだね」
そう言って、甲板から降りようとする、リアトリスとベアトリス。
と、同時にイーハブの目がキラリと光る。
「「うわっ!」」
リアトリスとベアトリスが同時に悲鳴を上げる。
「ふっふっふ。どうせ灯台にきてくれないなら、せめて、お尻くらい触ってやるわい」
リアトリスはギュッと拳を握り、ベアトリスはピクリと足が動く。
二人は深呼吸をして、イーハブへの怒りを収め、トントントンと甲板を降りて駆け出していく。
「じゃあ、俺は灯台の方に行こうっと。ちょっと実験したいこともあるんだよね。いいかな?」
城定 英希(じょうじょう・えいき)が隣にいる、ミュリエル・フィータス(みゅりえる・ふぃーたす)を見る。
コクリと頷く、ミュリエル。
「灯台を直すことがマスターの望みならば、お供するのが当然です」
甲板を降りて、灯台の方に向かう英希とミュリエル。
「船から下りろ? その命令に対するわしの返答は拒否またはノーである」
船の上で仁王立ちして言ったのは、パラミタ 内海だ。それを呆れ顔で見るウィルネスト。
「おいおい。ここまで来て、こんな面白そうなイベントに参加しないってか? 冗談じゃないぜ」
「ありていに言えば、わしの可愛いおべべとわしの栄光の体が、濡れたくないと申してるのじゃよー」
「いや、だから、そもそも内海の地祇なのに、水が嫌いって意味が分からないだろ!」
「……はっ! 誰かがわしを丁重に陸地まで運べば良いのじゃよー」
「……弱りきった俺に、それをしろと?」
「じゃあ、船の上で大人しくしてるにゃー」
「ぐ、くそ……」
こうしている間に、灯台に昇る者、船に残る者、島を調査する者の三組に分かれたのだった。
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