薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

【十二の星の華】秘湯迷宮へようこそ

リアクション公開中!

【十二の星の華】秘湯迷宮へようこそ

リアクション


第2章


 迷宮内は仄暗く、かなり視界は悪いが、地面がうっすらと光っており、明りがなくてもなんとか進むことが可能だ。
 迷宮に入るとすぐに三叉路が現れた。
 皆、思い思いの道へと入っていく。

■□■□■□■□■

【ルート1】

 三叉路を左に曲がった道へと入っていったのは夜薙 綾香(やなぎ・あやか)アポクリファ・ヴェンディダード(あぽくりふぁ・う゛ぇんでぃだーど)メーガス・オブ・ナイトメア(めーがす・ないとめあ)だ。
 その後ろを風森 巽(かぜもり・たつみ)ティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)が追う形となっている。
 道を曲がって暫く歩くと、目の前には30度くらいはありそうな上がり坂が現れた。
「これは……罠というより……」
「罰ゲーム?」
 綾香の言葉をアポクリファが続けた。
 メーガスがしゃがんで、地面に手を付けると自分の顔の前に持っていった。
 よく見るとメーガスの手がぬるぬると光っている。
 ぬるぬるの透明な液体が坂いっぱいに塗られているようだ。
「この坂の滑りは良さそうだ」
 立ち上がりながら、メーガスが告げた。
 坂の上には杭が一本立っているのが見える。
「違う事に使おうかと思っていたのですが、今使ってしまった方が良さそうですぅ〜」
 杭の場所を確認するとアポクリファはワイヤーを取り出し、洞窟内に落ちていた石に括りつける。
 出来たものを綾香が受け取ると、頭上でぶん回し、坂の上へと投げた。
 ワイヤーは杭の周りをくるくる回り、しっかりと巻き付いた。
 綾香が下から引っ張ってみるが、問題なさそうだ。
 自分達の手をハンカチでくるむと、しっかりとワイヤーを掴み、綾香、アポクリファ、メーガスの順に上って行った。
 3人が上り終わると、メイガスが急いでワイヤーを回収した。
 回収が終わると、ちょうど巽とティアが坂の下に到着した。
「この坂は上りやすい」
 メイガスがそう言うと、3人は更に奥へと進んで行った。
「登りやすいんだって!」
 ティアは無邪気にメイガスの言葉を信じ、坂へと走って行った。
「ティア、待って下さい!」
 何か、引っかかるものを感じた巽が止めたが、時すでに遅し。
「うきゃんっ!」
 ティアはぬるぬる液体に足を取られ、思いっきり顔面から地面に激突。
 地面に突っ伏した形のティアが坂から流れてきた。
 巽は慌ててティアを抱き起こす。
「大丈夫ですか!?」
「登りやすいんじゃなかったのー!?」
 真っ赤になってしまった鼻をさすりながら、ティアはぷんぷん怒っている。
「さて……どうやってこの先に進みましょうか……」
「任せてー!」
 ティアはそう言うと、氷術を発動。
 坂に沿って、氷の階段を作っていく。
 やっと先に進むことが出来た。


 先を行く綾香達は曲がり角を曲がると、3人揃ってハリセンの洗礼を受ける事となってしまっていた。
 ティアと同じく、鼻が赤くなっている。
「我にこんな嫌がらせをするとは……あの秘湯鄙とかいう者……あとでどうしてくれようか……ふふふ」
 メイガスは屈辱だったらしく、黒い笑いが漏れている。
 暫く歩くと、またすぐに次の曲がり角になった。
 平坦な道。
 特に何もないように思われたので、アポクリファが地面には油、頭上には摩り下ろした山芋を設置した。
「これであの方達が追い付いても、少しは足止め出来ると思いますぅ〜」
 罠の設置が完了すると、歩きだした。
 次の曲がり角を曲がり、暫く歩いていると、またも三叉路を発見した。
 左手の道は明るい。
 何かありそうだと、足を運ぼうとした瞬間――
ゴロゴロゴロゴロ――
「なんの音でしょう〜?」
 3人がその音に耳を傾けていると、前方の道から何やら丸くて大きな物体が転がってきた。
「こっちだ!」
 綾香は2人をひっつかんで、先ほど行こうとしていた道へと急いで入った。
 丸い物体が通っていった。
 しばらくするとズシンという音が響いてきた。
 曲がり角を曲がれず、ぶつかったのだろう。
「な、なんなんですか!」
「山芋の次は巨大アルマジローーー!?」
 すぐ背後まで迫っていた巽とティアが餌食になってしまったようだ。
 巽とティアの鼻が赤い、ハリセンも受けてしまったのだろう。
 悲鳴を尻目に綾香達は先を急いだ。
 すると、目の前が突然明るくなり、人が大勢出現した。
「これは……鏡だな」
 メイガスが言うとおり、大勢の人がいるように見えたのは部屋一面に張り巡らされた鏡のせいだったようだ。
 しかも、鏡の迷宮状態。
「迷宮の中にある迷宮……か」
「ここに玄武甲があると良いですねぇ〜」
 後ろからはアルマジロを倒したのか巽達の足音が聞こえてきた。
「行くぞ!」
 綾香の号令で3人は鏡の迷宮へと足を踏み入れた。
「こんな仕掛けまであるんですか……」
「わぁ! 鏡がいっぱい!」
 巽は少し考え、ティアの方へと向いた。
「ここはあの3人に任せて、我等は守るべき者を守りに行きましょう。ここは時間がかかりそうですし、玄武甲に興味はあまりありません」
「うん!」
 ここまで来て、2人は早々に迷宮の脱出を図ったのだった。