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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第2回)

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6-06 ジェイコブ・バウアー

 さて、香取・水原が篭城する敵に対する間に、この男は、やっていた。
 ジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)だ。
 彼は、パラ実が香取らとの対峙に注意を引かれている隙を突いて、鉱山急襲を決行したのである。
 迫ってくる香取らの大軍に慎重な警戒を敷いていた国頭ではあったが、鉱山のその後の守備については手を回しきっていなかった、とも言える。ここには、パラ実占領軍側の有能な指揮官は置かれていなかった。
 救出作戦の決行直前、単身、その能力を最大限に生かし警備の目を掻い潜って忍び込んだジェイコブ。
「秦良玉? いるか」
「秦良玉……いえ、彼女は鉱山を追放されたわ。私はアンジェラ。あなたは……ジェイコブね」
「いいか。オレ達が看守どもの注意を惹きつけているうちに、仲間を全員逃してくれ」
 ジェイコブは囚われの者らに救出チームが来ていることを告げると、フィリシア・レイスリー(ふぃりしあ・れいすりー)と待つその同志たちのもとへ向かった。皆、頷きあう。決意の表情。いよいよ……布石を置いてきた"パルチザン"の開始だ。
「オレたちの力でパラ実野郎に一泡吹かせてやろうぜ!」
「おぉお!!」
 彼らは手薄な警備にできた隙を衝いて、鉱山を急襲。まずは看守を倒し、戦友たちを救出した。フィリシアは注意しつつ皆を外へ逃がし、付けてきた道標に沿って安全な場所へ移動させる。弱っている者も少なくない、フィリシアは肩を貸し、「頑張って、必ず生きて帰ろうよ!」と道すがら励まし続けた。
 ジェイコブは、パルチザンの同志たちと、鉱山で大暴れだ。
「おっと」
 敵だ。
「ヒャッハァアァァァァ!!」「グヘヘ……」「ウへヘェ」
「おぉ、怖いねえ……」言いつつ、取り囲む不良どもに全く怖がっていない凶悪な笑顔を見せる。「小便ちびりそうになってきた」
 たじろぎ、しかし襲いかかってきた敵にクロスファイアをぶち込んだ。
「ギャァァァ」
 ジェイコブたちパルチザンは、鉱山を大混乱に至らしめた。
「遅くなってすまねぇ、戦友!」ジェイコブは、無事脱出した教導団員らと肩を抱き合いながら、「だが、今もピンピンしてるところを見ると、まだ悪運は尽きてねぇッて感じだなァ!」



 ジェイコブ、フィリシアは、救助した者たちを伴い、物資を携え後方部隊として峡谷に残った大岡輸送隊のファイディアス・パレオロゴス(ふぁいでぃあす・ぱれおろごす)熊猫 福(くまねこ・はっぴー)のもとへ、駆け込んだ。フィディ、ここは「プリーストである私の務め」、と早急な治療に入る。
「さいわい、物資はありますからね。よかった。鉱山では調教……いや虐待なぞはされませんでしたか?」
「ファイディアス」
「ジェイコブ殿。いかがなされましたか」
「オレたちに、武器弾薬を補充させてもらえるか? 再武装して香取隊に追いつく」
「ええ。さいわい、物資はございますから。それに、わたくしたちも戦闘に加わりましょう」
 パワードスーツに着替えた、熊猫福は、
「任せて。活動を援護するね」
 そのまま光学迷彩で姿を消した。
 フィディも自信ありげに笑む。「槌の舞う姿を見ていただきましょうか」
「ファイディアス。福。フィリシア。戦友たち、行くぜ!」