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マホロバで迎える大晦日・謹賀新年!明けましておめでとう!

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第四章 初詣6

「あの……お餅ください」
「え? お餅、いいですよ。どんどん食べてね」
 葦原の鬼鎧調査を行ってきた卍 悠也(まんじ・ゆうや)は、鬼鎧で子供たちにお餅を配っていた。
 彼は「はい」と、北郷 鬱姫(きたごう・うつき)に渡す。
 鬱姫は餅を受け取るのはすでに3週目であり、先ほどはハイナや房姫からお年玉を受け取っていた。
 悠也の妹卍 神楽(まんじ・かぐら)は、気になって悠也に行った。
「兄様、そんなに愛想よく女の子にお餅をあげて……また例の病気ですか!?」
「いや、あの子は中学生くらいじゃないか。ボクはもっと小さい方が……」
「……兄様」
 正月から怒る気もなれず、神楽は健気に餅料理を運ぶ。
「まあ、兄様だ楽しそうにしてればそれでいいですけど」
「ユーヤお兄ちゃん、カグラお姉ちゃん。お餅どんどん突いていいの?」
 鬼鎧の搭乗口から黒妖 魔夜(こくよう・まや)がひょこっと顔を出す。
 先ほどから鬼鎧を操っていたのは魔夜だ。
「思ったよりはけがいいから、鬼鎧もう一機あればなあ……あれ、灯姫様だよ!?」
 魔夜は風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)たちと一緒に歩いていた灯姫を見つけた。
 一緒に鬼鎧でお餅をつかないかと誘う。
「……やったことはないが、私で役に立てるなら」
 瑞穂の鬼鎧に乗り込み、魔夜と灯姫は交互に巨大臼を付き始めた。
「すっげ。こんな餅ツキ、はじめてみた!」
 波羅蜜多実業高等高校所属の御弾 知恵子(みたま・ちえこ)は、パートナーの機晶姫フォルテュナ・エクス(ふぉるてゅな・えくす)とともにその光景を眺めていた。
 鬼鎧――イコンのような巨大鬼――で餅をついて楽しむなど、マホロバは案外豪快な国かもしれないと思い始めていた。
「着物をレンタルしてまで来て、良かったな。パラ実生だって、日本人らしい正月を過ごしたいしな! ……にしても、マホロバは本当に日本の江戸に良く似てるな」
「人々の着物から風習までな。おかげで餅にありつけたぜ……ん、知恵子。何をする気だ?」
 知恵子は財布から五円玉を取り出す。
「さっきお参りしたとき、実は日本の五円玉をいれたんだ。『ご縁がありますように』ってね。コレ……マホロバで高く売れないかねえ?」
「え、硬貨で商売するのか? やめとけ罰があたる。それに、しょっ引かれても知らんぞ」
 フォルテュナが知恵子の野望を阻止しようとしていた。
、葦原明倫館総奉行のハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)が声をかけた。
「お、日本の硬貨でありんすか。わっちもあまり見た事はなかったんでありんすが……そうだ。これ、お餅に入れたらそうでやす。アメリカでは、コインを一枚いれたケーキを焼いて、取り分けた中にコインが入ってたら幸福になれるって占いがありんすよ」
 葦原の総奉行に言われて多少驚いたが、知恵子ももともとは古風な真面目な優等生だったのだ。
 魔法に関する勉強をしていたら、当然まじない関係などもやる。
 面白そうだと彼女はその妙案にのることにした。
「よし、じゃあここに居る全員にそのことを知らせよう。誰が五円を引くか……楽しみだ!」

 みんなが、餅をもらいに集まってくる。
 樹龍院 白姫(きりゅうりん・しろひめ)からのお年玉である個人鬼鎧(イコン)『輝旗楯無』に乗って遊ぶ鬼城 白継(きじょう・しろつぐ)将軍にも、土雲 葉莉(つちくも・はり)が貰ってきてやる。
「白継様、ゆっくり食べるですよ〜。のどに詰まらせたりしたら大変ですからねー」
 白継はお餅をもぐもぐ食べ終わると、再び鬼鎧で、今度は凧揚げに興じていた。
「さっすが将軍様……御奉行がアメリカンな凧で空を舞っている……」
 神楽が感心していると、鬼鎧の中から魔夜が言った。
「うん。でもユーヤお兄ちゃんとカグラお姉ちゃんもすごいと思うよ」
「え、どこが?」
「だって『まほろば大奥譚』で一番名前呼ばれてたよ? お話の区切れにある『卍卍卍』ってやつ」
「……真面目にきいた私が馬鹿だった」
「えーなんで、なんでー? 魔夜すごいこと思いついたと思ったのに……あれ、あそこで暴れてる人がいる」
そこには、お餅を配ってる最中に子供たちに「まんじゅうやがお餅配ってるー」といわれてキレまくってる悠也の姿があった。
 解説するなら、
 卍悠也>まんじゆうや>まんじゅうや>饅頭屋
と、いうことである。
「誰が饅頭屋じゃ、ゴルァ!」
「またか、兄様は……」
 神楽はくらくらする頭を抑え、今年も兄の面倒を見ることになるなと確信していた。