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第1回魔法勝負大会

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第1回魔法勝負大会

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3.第1回戦

 
 
「さあ、第一回戦第一試合、ラスティ・フィリクス(らすてぃ・ふぃりくす)選手対、ジャワ・ディンブラ(じゃわ・でぃんぶら)選手です」
 シャレード・ムーンの呼び出しに応えて、ジャワ・ディンブラが大きくはばたきながら、武舞台にちょこんと舞い降りた。
「こばー」
 風のあおりを食らった小ババ様が、吹き飛ばされてころころと転がっていく。
「どこに行っておったのじゃ、ここにおらぬか」
 アーデルハイト・ワルプルギスが、ひょいと小ババ様をつまみあげて放送席のテーブルの上においた。
「本気出していいのか?」
 やる気満々のジャワ・ディンブラが、観客席にいるココ・カンパーニュ(ここ・かんぱーにゅ)たちの方に首をのばして訊ねた。
「いいぞー、私の分までやっちゃえ!」
 無責任にココ・カンパーニュが答える。本当は彼女自身が参加するつもりだったのだが、星拳エレメント・ブレーカーでバリアごと吹き飛ばす気満々だったのを見抜かれたのと、各種エネルギーを吸収する星拳エレメント・ブレーカーを使うのは反則だということになって参加を取り消されている。ココ・カンパーニュとしては不満たらたらで、その分、参加したゴチメイ隊への応援は力が入っていた。
「ちょっと、これは聞いてないのだよ!」
 自分の何倍もの体格があるジャワ・ディンブラを前にして、ラスティ・フィリクスが異を唱えたが、あっけなくエリザベート・ワルプルギスに却下された。
「あーあ、こりゃ初戦から負けたな」
 自身は魔法が使えないのでしかたなく応援に回った椎堂 紗月(しどう・さつき)が、絵づらを見ただけで半分諦めた。まるで、蛇に睨まれたカエルだ。
「では、遠慮なく。我が火炎の息吹よ、集え!」
 大きく息を吸い込んだジャワ・ディンブラの眼前に火球が収束していく。
「ま、負けるものか……」
 意を決して、ラスティ・フィリクスも呪文の詠唱に入った。
「大地吹き抜け天をいだく大いなる風よ、遥か天高く澄み渡る祈りで我ら風の精にその恩恵を。この世のすべてをつつみ永劫続くそなたの力、今ここに顕現せよ。遥けし天空望む風の都(ウィンドリィ)!」
 スペルの一つ一つと共に風が生まれ、ラスティ・フィリクスが着る雷霊の衣の裳裾をはためかせた。渦巻く風の中に細かい閃光が生まれる。それが一つに集まったかと思うと、雷光と化して迸った。
 同時に、ジャワ・ディンブラの火球も放たれる。
 大きく右に曲がったジャワの火球が、対面にいるラスティ・フィリクスの右面から襲いかかった。だが、エリザベート・ワルプルギスが渡した指輪のバリアによって弾かれて派手に周囲に飛び散った。安全だと分かってはいても、さすがに至近距離でこんな物を見せられては怖い。
 対するラスティ・フィリクスの放った雷光は大きく回り込んで後ろからジャワ・ディンブラの背中に炸裂した。
「あっ!?」
 直撃を受けたジャワ・ディンブラが、思わずバランスを崩してつんのめる。
「おいっ! ジャワ!」
 唖然としてココ・カンパーニュが叫んだ。
 バタバタと翼でなんとか元の位置に戻ろうともがくジャワ・ディンブラが、果たせず、スライムの海にバチャンと倒れ込む。
「うわっ!」
 飛び散るスライムに、観客たちがあわてて身を引いた。
「あーあ、やられちゃったよ」
「やられてしまいましたね」
 なんという期待はずれと、マサラ・アッサム(まさら・あっさむ)が気の抜けた声で言い、ペコ・フラワリー(ぺこ・ふらわりー)がうんうんとうなずいた。
「くっそぉ、とりあえず、対戦相手はぶっ飛ばす」
「待ってー、お姉ちゃん、それ反則だから。だめー」
 あわやラスティ・フィリクスをドラゴンアーツで吹っ飛ばそうとするココ・カンパーニュを、間一髪でアルディミアク・ミトゥナ(あるでぃみあく・みとぅな)が取り押さえた。
「あらら、勝っちゃったよ。ほんとか!? こりゃ、なんとか優勝までいってもらいたいもんだな」
 初っぱなからゼイゼイ言いながら、再びかけられた橋を渡って戻ってくるラスティ・フィリクスを、椎堂紗月がちょっぴりの期待を持って出迎えた。
 対するジャワ・ディンブラは、べっちゃりと翼を広げた姿のまま、スライムの表面を流れるようにして運ばれていき、奧の救護室にぺっされた。
「勝者、ラスティ・フィリクス選手!」
 シャレード・ムーンの声が、会場に響き渡った。その直後に、ジャワ・ディンブラの咆哮とも悲鳴ともつかない声がカーテンのむこうの救護室から聞こえてきた。
「いったい、あのカーテンの奥で何が起きているんだ……」
 ココ・カンパーニュが、ちょっと青い顔をして言った。
 
    ★    ★    ★
 
「さて、第二試合に移りたいと思います。朝野 未那(あさの・みな)選手対、ノルニル 『運命の書』(のるにる・うんめいのしょ)選手!」
「魔法少女ノルン、綺羅星に代わって天誅です」(V)
 空飛ぶ魔法↑↑でふわりと武舞台の上に舞い降りたノルニル『運命の書』が、嫌々半分、魔法少女乗り半分といった感じで名乗った。とはいえ、魔法少女と言うよりは、魔法幼女といった感じだ。
 本人は参加する気はなかったのだが、いつの間にか神代 明日香(かみしろ・あすか)にエントリーされていて、しかたなしの参加である。
「よろしくお願いするですぅ」
 反対側の武舞台で、朝野未那がぺこりとお辞儀をする。
「じゃあ、いきます。集まれ、よい子の明るい輝き!」
 ノルニル『運命の書』が魔砲ステッキを高く掲げると、その先端に周囲から光が集まり始めた。
 同時に、朝野未那が、合わせた両手を左右に開いた。その手の間から、雷鞭がスパークをあげながら現れる。
「稲妻よここに走れー!」(V)
 ヒュンと振りかぶると、朝野未那がノルニル『運命の書』の左側にむけて雷鞭をぶつけた。
「ライティング・シュート!!」
 かけ声と共にノルニル『運命の書』が振り下ろした魔砲ステッキの先端からはビームが放たれる。下にむけて放たれた光が、クンと曲がって下から朝野未那に突き刺さる。
 だが、魔法障壁で無力化されたビームは、照明のように下から朝野未那を照らして、彼女の童顔に本人が意図しない凄みを与えただけであった。
「きゃん」
 対照的に、真横から襲ってきた雷鞭に打ち据えられて、勢いを受けとめきれなかったノルニル『運命の書』の小柄な身体がポーンと思いっきり吹っ飛んだ。
 ぽっちゃんとスライムの海に落ちたノルニル『運命の書』の魔法少女コスチュームが、変身が強制解除されてしまったかのようにバラバラになって飛び散る。あわやすっぽんぽんかと思われたが、下に着ていたスクール水着のおかげでなんなきをえた。
「勝者、朝野未那選手!」