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合法カンニングバトル

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合法カンニングバトル

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「誰か気付いてくれるかな……」
 教室を巡回する筑摩 彩に、生徒達の何人かが目を向ける……
 それもそのはず、今の彩の服装は少々……個性的だった。
 スカートには大胆にスリットが入っている、時折ちらりと覗く下着がセクシーだ。
 しかし上着には野菜をあしらった可愛らしいワッペンが縫い付けてあったりする……コーディネイトがちぐはぐだ。
 悪い意味で目立つ服装だが、もちろんそれには意味がある。
(あんな問題反則だよ、生徒達にはせめて何かヒントをあげなくちゃ……)
 そう思って考えた彩が思いついたのがこの『答えになるものを身に着ける作戦』だった。
 そのスリットから覗くセクシーな下着も、エリザベートが今日身につけているものと同じ色……
 もし生徒がそれに気付く事が出来れば、充分活路になる。
 しかし生徒達の反応といったら、ただ鼻の下を伸ばすだけ……
 彩の服装の不自然さに疑問を抱こうともしない。
(もっとあからさまにやってもよかったのかな……例えば、あんな風に……)
 回答を挟んだ教室の反対側では変熊仮面がダンス? それとも何かの儀式だろうか……怪しげな動きをしながら巡回していた……その股間には回答が張られたままだ。
「生徒諸君、何故目線を逸らすのだ、もっと私を見たまえ! とても良〜いものが、見れるぞ〜」
 アピールする為に腰を振る変熊、しかし、そういった動きが逆に回答をカモフラージュしてしまっている事に気付かない。
 生徒達からは『変わったデザインの下着』にしか見えていなかった。


「まさかあの服装……」
 彩の願いが通じたのか、ヒントに気付いた生徒が現れた……本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)だ。
(ということは……あのスリットの奥には問1の答えが?)
 しかし女性の下着を覗くというのは……良心の呵責に悩まされる涼介。
「涼介? お前何を見てるんだ……あー!!」
 隣に座っているクラスメイト、竹中が涼介の視線の先に気付いた。
「お、お前ってやつは……」
「い、いや……あれはですね……おそらく、問1の……」
 詰め寄られ動揺する涼介、つい推理を口にしてしまった。
「なぁにが問1だ、このムッツリが……ん? 問1……?」
 初めは照れ隠しの言い訳だと思ったものの、何か引っかかるものを感じたのか、問題用紙を見直す竹中。
「こ、これは……そうか……そういう事なのか……」
 想像もしなかった展開に震える竹中。
「でかしたぞ涼介! 後で焼きそばパン奢ってやる!」
 そう言って立ち上がる竹中……
「ちょっと、さすがにそういう事は……う……」
 竹中を止めようとする涼介に竹中の鼻息がかかる……生暖かい。
「下着だ! 今教師達は問1の答えと同じ色の下着を穿いているっ!」
 教室中に竹中の声が響いた……
『なんだって!!』
 その瞬間、教室の空気の色が変わった。


「な……なんなの?」
 彩の周囲が一気に殺気立つ……
「これはカンニング……そう……カンニングなんだよな……ハァハァ……」
 これまで彩に見向きもしなかった生徒達が、目を爛々と充血させていた。
「い、嫌……来ないで!」
 悲鳴をあげる彩にじりじりと迫っていく生徒達、絶体絶命だ。

 もちろんそれは彩の周囲だけではない。

「ふん!」
 ルイの一撃を間一髪でかわす綾乃。
 その拳圧でたなびくスカートの中を覗こうと生徒達が集まる。
「な……」
 それまで戦闘に集中していた彼女にとって、予想外の行動だった。
 慌ててスカートを押さえる。
「おや、いかが致しました? どこか具合でも?」
 その行動にルイが疑問を抱く……
「いや、その……」
 スカートを押さえながら顔を赤くする綾乃……
 そんな姿を受けて、周囲の生徒達のテンションが上がる。
 ここでようやくルイも周囲に気付いたようだ。
「なるほど、いつの間にやらギャラリーが……これは燃えてきました」
 ……全然わかっていなかった。
「何も恥ずかしがることはありません、持てる技の限りを尽くしましょう!」
「や、だから……その……」
 激しく勘違いしているルイの猛攻。
 周囲の生徒に下着を見せないように凌ぎ切るのは難しかった……
「し、志方ありません!」
 覚悟を決める綾乃……下着にかまってなどいられない。
 いよいよパンチラに期待する生徒達だったが……
「痴漢は絶対ダメっ!」
 銃弾のようなものに撃たれ、生徒達が吹き飛ぶ……ルカルカの放った指弾だ。
「そんな悪い子達には、おしおきだよっ!」
 だがしかし、今度はそんなルカルカの胸に視線が集まってくる。
「な、なんてけしからんおぱいなんだ……ハァハァ……」
「うぅ……ほ、本気出してもいいかな……」
 身の危険を感じるルカルカだった。

「あ……み、みんな? ……どうしたのかな? い、息が荒いです、よ?」
 江利子の周囲でも、目を血走らせた生徒達が荒い息を吐いていた。
「こ、こうして見ると江利子先生の体もなかなか……」
「江利子先生はドジだからポロリとかもあったりして……ゴクリ」
 あらぬ妄想まで膨らんでいるようだった。

 一方……

「ようやく気付いたようだな……さぁ、回答はここにありますよ〜」
 ここぞとばかりにアピールをする変熊だが……

 ―――ポツーン―――

 ……そちらを見る生徒は一人もいなかった。
「な、何故だぁぁぁぁ!!」
 壊れた窓から木枯らしが吹き付けた……
「へっくし」