薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

人形師と、写真売りの男。

リアクション公開中!

人形師と、写真売りの男。
人形師と、写真売りの男。 人形師と、写真売りの男。

リアクション



エピローグ


 例の事件から数日が経った。
 ルイの石像が一晩中、それどころかリアたちが迎えに来た昼過ぎまで置かれていたため、都市伝説的妙な噂が流れ、人だかりも消え。
 写真を引き金にしたこの事件は完全に解決されていた。
 なので工房も通常営業。今日も今日とて人形作りに取り組んでいたら。
「ちわっス」
 リンスの耳に届いた、聞き覚えのある声。
 ドアへと視線を向けると、紺侍が立っていた。
「いらっしゃいませ」
「客じゃねェっス」
「そう」
 再び人形作りに戻る。と、視界に入るように箱が置かれた。
「何これ」
「迷惑かけたら菓子折り持ってお詫びに行くべきだって帝王さんに言われて」
「金ないからあんなことしてたんじゃないの」
「や、これ持ってけって渡されたンでオレの懐は痛くないっス」
 なるほど、と頷く。それから紺侍をじっと見ていたクロエに「お茶淹れて」と箱を手渡しお願い。
 丁度いいから休憩しよう。するつもりはなかったけれど。何分あの数日で仕事が溜まってしまったので。
 お茶と、芋羊羹の乗った皿がリンスの前と紺侍の前に置かれた。菓子折りは芋羊羹だったらしい。なかなか渋いチョイスをしたものだ。
「お構いなくっス」
「おかまうのよ!」
「そっスか」
 クロエの言葉に紺侍が笑んだ。それを見てクロエも笑む。そんな二人を見てから羊羹を一口。甘すぎなくて美味である。
 黙々と羊羹を食べて、お茶を飲んでいたら。
「侘びと、現状報告しに来ました」
 紺侍が口を開いた。
「アンタの写真もクロエさんの写真も回収してきたっス。燃やすなりシュレッダーにかけるなりなんなりして下さい」
 それなりに大きな封筒に、そこそこの厚み。
 随分ばら撒かれたものだと嘆息した。
「あとこっちはあの全員集合の記念写真っス。写ってる人数分枚数あるンで、機会があれば渡しておいてください」
 また別の封筒がテーブルに置かれた。それまで混ぜてしまわないようにと先に確保しておく。
「他には……迷惑かけたっぽい人にも謝って、データも消したっス」
 それから、と謝罪行脚の内容を大まかに端的に告げる紺侍に視線を向け、黙って話を聞く。
「以上っス」
 報告終了! とお茶を一気飲みし、羊羹を一口で平らげて紺侍が立ち上がった。
「え、以上?」
「オレ何か忘れてました?」
「紡界がどうなったのか全然わかんない」
「はあ?」
 だっていろいろあるだろう。
 バイト見つけたとか、そういう報告。
「えっ、……えっ? してほしいんスか」
「微妙な関わりのままブツ切れたらなんか嫌」
「……アンタ、お人好しとか馬鹿とか変人とか言われません?」
「たまにならね」
 どうでもいいから話して見せなよ。
 視線で問うと、「えぇと」紺侍は指折り出来事を辿る。
「えっと、まずはさんのところで非常勤カメラマンとして雇ってもらうことになって、それからレティシアさんや美咲さんにバイト紹介してもらって、ああそう今度壮太さんとデートします。デートっつーかオレがごめんなさいを兼ねてメシ奢るだけっスけど。
 デートと言えば貴瀬さんともする予定っスね。ツーショット写真撮れそォな場所まで行ってきます。
 あーあと他に、シーラさんと一緒に写真撮影しに行きます。どっちがイイ写真撮れるか勝負っス。
 後はねェ……」
 次々と列挙されていく知り合いの名前と楽しそうな行動の数々に少し笑ったら。
「あ」
「?」
「そういうカオ、撮りたいんスよ」
「はあ?」
「今度、撮らせてくださいね。
 じゃあクロエさん、お茶ご馳走様っした。そんじゃ!」
 ばいばい、と大きく手を振られて、小さくこっちも振り返した。
「リンス、たのしい?」
 それを見たクロエが笑って訊いてきたから、
「ちょっとだけね」
 肯定的な返事をした。


担当マスターより

▼担当マスター

灰島懐音

▼マスターコメント

 お久しぶりです、あるいは初めまして。
 ゲームマスターを務めさせていただきました灰島懐音です。
 参加してくださった皆様に多大なる謝辞を。

 久し振りな50人シナリオでしたね。なんか毎日酷い文字数を叩いていた気がします。75人との執筆期間の差にちょっと混乱しました。無事に終わって何より。
 今回、『自キャラ大好きっ!』な灰島得シナリオといわれても何ら否定できないシナリオに参加していただきありがとうございました。
 紺侍へドタバタかけたり、リンスのことを心配してくれたり、クロエ関連で来ていただいたり、あるいはドタバタに一切関連せずマイペースに楽しんで行っていただいたり。
 本当に楽しかったです。やっぱり日常系が大好きなようです。

 あと、知り合いの視線には耐えられても、見知らぬ他人の視線に耐えられないリンスのアレは実はわたしと同じだったりします。
 きっとわたしもリンスも、前世がどこかの動物園のパンダなんですよ。嘘ですよ。

 さて、そろそろ締めの挨拶にでも移りましょうか。あとがきまで長くしてはいけません、きっと。
 今回もご参加いただきました皆様。
 素敵なアクションをくださった皆様。
 本当に灰島得でした。ありがとうございます。皆さまも楽しんでいただけますように!

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。