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ミッドナイト・シャンバラ3

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ミッドナイト・シャンバラ3

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08.ゲストコーナー

 
 
「次のお便りは、カ……。
 ちょっとお待ちくださいね。
 ゲストコーナー!!」
「ノー、我が輩のハガキをスルーしましたネー。恐るべし、シャレード・ムーン!」
「いや、すぐばれるでしょうが」
 頭をかかえて悔しがるアーサー・レイスに、縄でグルグル巻きにされた日堂真宵が突っ込んだ。
「まずはお葉書から。
 ペンネーム、愛くるしいエリザベートちゃんで胸がいっぱいさん。
 シャレさん、アーデルハイト様こんばんは〜。
 
 先日アーデルハイト様の妹と名乗る方とお会いしました。
 人物の心当たりはあるでしょうか、
 その方はアーデルハイト様のことは匂いでわかるそうです。
 チョコバナナのような甘い匂いでもするのでしょうか。
 
 では質問です。
 狡賢いアーデルハイト様なら妹属性を考慮し、
 ご自分のほうが妹だと主張すると思ってましたが実際はしていません。
 何か企みがあるのでしょうか?
 
 ついでにもう一つ質問です。
 様付けですと親しみがわかないのでちゃん付けでお呼びしたいのですが構いませんか?

 さすがに、これは本人でないと分かりませんねえ。アーデルハイト様に姉妹がいるなんて話聞いたことありませんし……。
 では、チョコッとだけ聞いてみましょう。
 ええと、本当に妹さんがいらっしゃるのですか?」
「こばっ?」
 いや、それ大ババ様違う、小ババ様や。
 副調整室で、日堂真宵がそう突っ込んでいるようだが、放送には入らない。
「アーデルハイド様は、本当にチョコの匂いがするのですか?」
 一応、律儀に、シャレード・ムーンが質問をする。
「こばぁ♪」
「では、何か企みはあるのでしょうか?」
「こばこばこばあ」
「最後の質問です。小ババちゃんと呼んでもいいでしょうか」
「こ……、こばばばば」
 最後の質問は、小ババ様は嫌らしい。それ以外は、はっきり言って答えにもなっていない。
「以上ゲストコーナーでした」
 
 
こんな物買っちゃいました

 
 
「こんなもの買っちゃったコーナーでーす。
 最初の買っちゃったさんは、ペンネーム、でも、本当に欲しいのは胸の脂肪さん。いつもありがとうございます。
 こんばんわシャレさん!
 こんばんはー。
 前回投稿させてもらったオルフェリア・クインレイナー(おるふぇりあ・くいんれいなー)と申しますですよ♪
 って、あれっ、あれっ、本名でちゃってますよ。いいんですかねえ。
 そういえば、以前も同じことしてませんでしたか。
 私が間違って読んだんじゃないですからね。ほんとですよ。
 続けます。
 聞いて下さいシャレさん!
 ちょっと前からオルフェはお茶に凝っててですねー。
 最近新しいお茶っぱを買ってお友達に淹れて貰ったのですよ♪
 他の人が淹れると普通のお茶なんですがとある友人が淹れると不思議なことにお家に居る気配が増えるのですよー♪
 賑やかになってとても嬉しいのですーw
 あ、そうそう。
 ちなみに淹れるたびに一人増えるみたいで家にはどんどん居ないはずの声とか気配が聞こえるようになるったんですよ♪
 とても素敵なのです♪
 今度シャレさんもお茶の葉を買って新たなる出会いをしてみませんか?

 それは、お茶っ葉をポットに入れるときのサプライズの人なのでしょうかねえ。
 それとも、一部で噂になっているフラワシでしょうか。
 でも、私、フラワシって見たことないんですよね。本当にいるんでしょうか。
 本当は、光学迷彩でゆる族が悪戯していたりして……。
 さて、次のお便りです。
 ペンネーム、ちっぱいは稀少価値さん。
 この間はパートナー自慢の投稿を読んでもらってありがとうございました
 嬉しかったです
 
 今回は最近購入したモノについて報告します
 でも、買いに行ったときはわたしは手にしたまま、なかなかレジに持っていけずにしばらく躊躇してたの
 他の人もいる中で躊躇なく購入できる人は、きっと勇者に違いない
 
 それは優れ物で、これを使えば今よりもずっと私の見た目が良くなる
 だけど、それを使う事は、何か手に入れ何かを失う、そんな気がしていたから
 だって、わたしにはあれが不足していると認めることなんだもん
 それでも、わたしもあきらめることはできなかったから決死の思いでレジに並んだの
 家に帰って試してみたら、やっぱり効果はてきめんだった
 でも、なんでだろ
 それの効果がすばらしければすばらしいほど、どうしてこんなにも敗北感を感じるんだろ
 
 いわゆる天使の谷間ブラと呼ばれる「それ」を購入したんです
 
 シャレード・ムーンさんはどう思います?
 わたし間違ってないですよね?これを使って同じ舞台に立っても、みんな許してくれるよね?

 敗北じゃないですよ。
 寄せられるだけの物があるんですから、ない人よりも凄くましです」
 シャレード・ムーンの回答に、副調整室でまた日堂真宵が暴れようとしてアーサー・レイスにこづかれた。
 
    ★    ★    ★
 
「主……」
 ラジオを聞いていた蒼天の書 マビノギオン(そうてんのしょ・まびのぎおん)が、そっと指先で涙を拭った。
 以前と同じペンネームなので、すぐに投稿主が芦原 郁乃(あはら・いくの)だと分かった。
 しかし、今回は一緒になって「読まれてよかったね」と喜んでいいものかどうか……。
「最近そわそわしていたと思ったら、そういう理由だったのですね。さっきの胸の脂肪がほしい人といい、どうして世の男たちはたっゆんがいいのでしょう。でも、中にはチッパイ命の人も必ずいるはずです。そのへんを主と明日しっかりと話し合いましょう。たかがブラジャー、されどブラジャーです。まったく、勉強になります」
 同じ頃、別の部屋では荀 灌(じゅん・かん)もラジオを聞いて唖然としていた。
「お姉ちゃん……。ちっぱい仲間だよねとあれほど固い絆で結ばれていたのに、私をおいてきぼりにして、一人別世界へ旅立とうとしていたのですね。別に、悔しくなんかないんだからね。ふんだ」
 ちょっと悪態をついてから、あらためて荀灌が自分の胸を見下ろした。綺麗に爪先が見られる。
 少しむっとしながら、荀灌が両手で胸を左右から押してみた。パジャマの上からでは、たいして変わったようには思えない。ブラジャーだと、もっと劇的に変わるのだろうか。
「私だって女の子です。谷間くっきりな胸元に憧れはあるです。私も着けたら胸が大きく見えて、大人っぽくなるのかな? だとすれば着けてみたいかも……」
 ほわんとちょっと大人になった自分を想像しながら、荀灌がつぶやいた。
 明日絶対にいろいろと聞きだすんだと心に誓いながら、荀灌は軽く目を閉じた。
 
    ★    ★    ★
 
「ペンネーム、赤い野球のバット大好きっ娘さんからです。
 つい最近とても大きなものを買いました。
 今まで移動するのには小型飛空艇で移動していましたが、冬は風を切りながら走るため寒く、夏は太陽の日差しに晒されて扱ったのですが、これからはこれが有れば快適です!
 シャンバラでも個人で購入できるようになった輸送用トラックです。
 荷台部分は発注時にカスタマイズしてもらい、快適に居住空間として使用できるようにしています。
 4tトラックペースですので、軽トラックを改造したキャンピングカーよりもずっと空間に余裕があるため内装も色々と凝っていますよ。
 音響機器や通信機器も搭載していますのでちょっとした移動ラジオ局としても使えるようにしています。
 シャレードさんも一度来てみませんか?

 トラックですか。最近一気に普及しましたねえ。
 やっと、シャンバラでも、いろいろな工場が動きだしたということでしょうか。
 でも、まだまだオフロードが多いですから、運転には充分に気をつけてくださいね。
 それにしても、トレーラーハウスっていうのはいいですねえ。
 いちおう、うちの局にも、中継車はちゃんとあるんですよ。ペットレースとかイベントのときに使われています。
 でも、中継車って、おっしゃる通りに狭いんですよねー。中は機材で一杯だし。
 うちも、大型のトレーラー、備品で買ってもらおうかしら」
 
    ★    ★    ★
 
「あー、これ、メイベルの投稿じゃないのかなあ」
 トラックを運転しながら、セシリア・ライトが言った。
 すぐ横では、フィリッパ・アヴェーヌが小さな寝息を立てている。
「うんうん。このトラックっていいよねー」
 放送された投稿にうなずきながら、セシリア・ライトはトラックを走らせていった。