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占拠された新聞社を解放せよ!

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占拠された新聞社を解放せよ!

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第3章

 (一面)死闘! ビル内での戦い!
 契約者たちは奇襲に次ぐ奇襲により、ビルの内部、敵の本隊への激突を迎えた!
 輝く刃を持つ勇者、健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)
 戦うアイドル、神崎 輝(かんざき・ひかる)
 帝王、ヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)
 彼らとその仲間たちの戦いは、まさに英雄的な行いであった。


「たった今入った情報だ。脱出させた社員によれば、まだ人質が残っている……社長やデスクみたいなお偉いさんは、リーダーの目が届く位置に置かれているらしい」
 レン・オズワルドのテレパシーによる連絡だ。健闘 勇刃は告げられた内容を、自分の周囲に居る皆に伝えた。
「つまり、再突入が必要ということだ。俺たちの出番だ、みんな!」
 勇刃が周囲に告げる。彼らは、飛空挺を用いてビルへと向かっているのだ。本来、敵の守備力を考えればとうていできたことではないが、今は他の契約者たちがかなり敵を追い詰めている。窓の外にまで気をめぐらせる余裕が無いらしい。
「それじゃあ、派手に行きますよ。3,2,1,とっかーん!」
 神崎 輝が独特の声で叫ぶ。同時、彼らの飛空挺が窓に接近し、窓を突き破ってビルの中へ突っ込んだ!
「何だっ!?」
 フロアに集まっていたソルジャーたちが叫ぶ。窓から突っ込んできた契約者たちと、ついでに記者たちに驚いたのだ。
「自分たちの望まない情報を発進しているからといってメディアを占拠しする横暴、見過ごすわけにはいかない!」
 びしっ! と、勇刃が指を突きつける。そして、輝く剣を振るった。
「くらえ、破邪の刃!」
 輝く光がソルジャーの胸を撃つ。わざわざ技の名前を叫ぶのは、もちろん記者へのアピールである。
「ああっ、ひとりだけ目立って、ずるい! あたしだって負けないんだから!」
 ソルジャーたちが銃を構えたところに、熱海 緋葉(あたみ・あけば)がサイコキネシスを発揮、机を持ち上げて振り回す。弾丸への防御となり、また敵を弾き飛ばすのだ。
「み、みなさーん。こんなことをしても、ただの悪質な行為としか見られません。嫌われてしまいますよ」
 そのただ中で、紅守 友見(くれす・ともみ)が説得しようとしている。本来、もっと話を聞いてくれそうなところに行きたかったのだが、勇刃と緋葉に押し切られてここへついてきたのだ。
「派手だなあ……こっちも、負けてられないですよ!」
 ぐっと拳を握りしめた輝が、ショルダーキーボードをかき鳴らし、複雑に上下する音程で歌い始めた。その曲が力となり、歌が魔法となって敵を鈍らせるのだ。
「人質は、この階にはいないみたい。みんな、全力で戦えるよ!」
 祝福の祈りを捧げたシエル・セアーズ(しえる・せあーず)は、周囲を確かめて叫んだ。ここはどうやら、防衛ラインとして戦力が配置されていたらしい。階下からの襲撃に備えられた場所に窓から突っ込んだのだ、不意打ちとしても上々の結果である。
「皆さん、援護します! ファイア!」
 一瀬 瑞樹(いちのせ・みずき)のミサイルが空中で弾け、巨大な弾幕になる。その中を勇刃が駆け、次々に敵をなぎ倒していった。
「俺が倒した数が一番多いな!」
「何を!」
 勇刃と緋葉が競い合うように敵をなぎ倒していく。が、敵もさるもの、体勢を立て直し、今度は階段側に陣取って窓から侵入した敵に当たろう……と、したとき。
「ここにも敵は居るぞ、撃ってこい!」
 輝とはまた違う、大きく響く声。ヴァル・ゴライオンが階段から姿を現し、仁王立ちでソルジャーたちに向かったのだ。
「なんだ!? 撃て、撃て!」
 ソルジャーたちが銃を向け、一斉にヴァルへと引き金を引いた。
「ぐおおおっ!」
 無数の弾丸をかわし、あるいはその強じんな肉体で受ける。
「あの人、何を!」
「身を張ってチャンスを作ったんだ。大技、行くぞ!」
「は……はい!」
 ヴァルの異様な存在感が敵を引きつけているのだ。こちらへの防備が薄くなったところを狙い、勇刃が、緋葉が、輝と瑞樹が攻撃を放つ。
 轟音の過ぎ去った後は、ソルジャーたちが倒れ節、ヴァルは膝を突いていた。
「やれやれ。命を粗末にするなと叫ぶ者が、それでどうする?」
 ヴァルの背後に潜んでいた神拳 ゼミナー(しんけん・ぜみなー)が肩をすくめ、傷に手を当てる。
「向き合わなければ、分からないこともある。彼らの本気を、この身をもって知りたかったのだ」
「向き合うって、そういうことじゃないと思うんですけど……仕方ないですね。動かないでください」
「ホントにね。でも、おかげで助かったよ」
 友見とシエルが、共にその傷を癒した。
「彼らの意見を聞かなければ、正確な記事を書くことはできないだろう。この事件にも、れっきとした理由があるはずだからな」
「この数を運ぶのはことだな」
 やれやれとゼミナーが肩をすくめた。
 異変が起きたのはそのときだった。



 鏖殺寺院への復讐か 謎の襲撃者
 記者団の報告によれば、ビルの内部では対策チームにも鏖殺寺院にも所属しない契約者が見られたという。
 その性別、年齢、その他一切のプロフィールは謎であるが、その言動からは寺院関係者への強い恨みを感じられた。
 こういった力の使い方をする契約者の存在も、我々は心にとどめておかなければならない。


 はじめそれは、影のようにあらわれた。
「鏖殺寺院は許さん。……死ね」
 それは、超霊の面で顔を隠した鬼崎 朔(きざき・さく)である。流れるような動きで、容赦なく剣を引き抜き、すでに無力化されたソルジャーへ突き通そうとしたのである。
「殺させるな!」
 超人的な隠密能力を得た朔の姿にはじめに気づいたのはゼミナーである。彼が叫ぶと同時、勇刃が身を翻した。
 がっきと勇刃の剣が、朔の刃を受け止める。
「邪魔をするな。……邪魔をするなら、貴様も五体満足ではかえさんぞ」
「構うものか。ヒーローとして、過剰な暴力は見過ごせん!」
「何が正義だ、くだらん。……シグマ」
「は……はい」
 シグマと呼ばれた少女……同じく、顔を隠したスカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)が機晶姫独特の光を放つ。その光を受け、力を増した朔が剣を薙ぎ、勇刃を押し返した。
「ぐうっ!?」
「あなた、ここまで来るだけでも相当な疲労じゃない。無茶だわ」
 シエルが見かねて言う。寺院と、契約者と、両方からここまで来たのだとすれば、相当の使い手だ。だが、その身動きひとつからも、疲労の色が見て取れる。
「……関係ない」
 朔はゆらりと剣を構え直した。ヴァルはようやくふさがった傷を押さえながら、きっと目を向けた。
「おまえにも退けない理由があるのだろう。だが、それはすなわち、彼らにも同じだけの理由があるかも知れないと言うことだ。だというのに、殺してどうなる?」
「……邪魔を、するな!」
 朔が容赦なく、ヴァルの胸元に突きを繰り出す。が、
「させませんわっ!」
「見て、られないわよ!」
 歴戦! 友美が突き出したバゲットが朔の剣の軌道を逸らす。わずかに崩れた体勢を見過ごさず、緋葉の念力がその体を突き飛ばした。
「ぐッ!?」
「ごめん!」
 輝が渾身の力を振り絞り、剣を振るう。刀身から放たれた電撃が、壁際の朔を打った。
「……ああっ!」
 朔の体が大きく跳ねる。
「朔様っ!」
 スカサハが駆け寄る。連続したショックで、ごく浅い失神を起こしている。
「身元を探るような、野暮なことはしない。そいつを連れて、帰ってくれ」
 勇刃が身を起こした。その場に居る全員が、自分たちの動きに反応して飛びかかることができると、スカサハは気づいた。
「……ありがとう、であります」
 スカサハは素直に、言った。こうしなければ、朔は止まれなかっただろうから。
 朔を腕に抱え、ビルの窓から飛び出していく。すぐに、夜の闇に紛れて見えなくなった。
「よかった……んでしょうか?」
 輝がぽつりと漏らす。
「たぶんな」
 勇刃が答えた。ふたりとも、疲労の色が濃い。
「やれやれ、確かに、契約者のほうが、鏖殺寺院よりもよっぽど恐ろしいかもしれんな」
 ゼミナーがため息混じりに言った。
 彼らは後を仲間に任せ、その場に居る寺院のソルジャーたちを捕らえる事にした。