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リアクション
第十四章 ワイバーン登場
一方その頃、キングチーター&クロから一位を奪取したジャイアントワーム&魅華星はそのまま一位を独走していた。
「ふわあああ、なんだか退屈すぎて眠くなってきましたわ」
読書をしていた魅華星はそれにも飽きたのか、ゆっくりと本を閉じて背筋を伸ばした。
「誰かわたくしを楽しませてくれる人はいないのかしら」
魅華星はふと、地面の方に目をやるとジャイアントワームの後ろにピッタリと張り付くようにして、巨大な影があるのに気が付いた。
「あら、面白そうですね。ふふふ、どなたかしら? こんなことをするのは」
魅華星は楽しそうに空を見上げて、影の正体を確かめた。
「……どうやら見つかってしまいましたね」
「別にバレても大丈夫でしょ。誰も呪詛子ちゃんたちには勝てないって」
ワイバーンに乗った呪詛子と英彦の遥か下にはジャイアントワームが地面を進んでいた。
「あまり目立ちたくなかったのですが、そろそろ動き出しますかね」
英彦は巧みな手綱さばきでワイバーンを操作する。
ひゅおおおお!!!
地上スレスレまで急降下したワイバーンは、この日初めて他のモンスターと対峙した。
「あら、その顔はどこかで見たことがありますね。たしかアーバン砂漠だったかしら」
魅華星はふふっと笑いながら、ワイバーンの上に乗っている少女に視線を投げた。
「うん? 呪詛子さま、あの方と知り合いなのですか?」
疑問に思った英彦が呪詛子に問いかけてみるが、何故か呪詛子の方は急に怒り出してしまう。
「あ、あんな奴知らないわよ?! 早くワイバーンの炎でジャイアントワームなんか焼き払って!」
「は、はあ……。まあ、初めからそのつもりだったので問題ありませんが」
英彦は呪詛子の態度に困惑しながらも、ワイバーンに命令を出す。
一瞬、ワイバーンの口が開いて辺りが光に包まれたかと思うと、次の瞬間には辺り一面が焼け野原になっていた。
魅華星を乗せたジャイアントワームは砂漠とは比較にならないほど熱された地面を嫌い、レースを逆走してしまう。
炎を吐いたワイバーンはゲポっと残りガスを吐き出しながら、余裕で一位を奪取した。
「わたくしとした事がしてやられましたね……」
「ふふふ! 優勝は呪詛子ちゃんが貰ったわ!」
レースも残すところ後わずか。サンコブラクダに乗ったカーマインは少しずつ順位を上げ続け、ついにはトップ集団に合流していた。
「やっとここまで来ましたか……」
カーマインは自分のやり方が間違っていなかった事に、ほっと胸をなでおろす。
だが、次の瞬間、ボトンという音がしてカーマインの目の前に巨大な障害物が出現する。
突然のことに動揺したサンコブラクダは、カーマインを振り落として自分だけ障害物を避ける。
「ふぇ?!」
サンコブラクダから振り落とされたカーマインは、もろにその障害物にぶつかってしまった。
「ワイバーンのアレって凄いのね……」
呪詛子がおええっと気分悪そうにしながら、今しがた落下していった物体の行方を見つめる。
「アチャー、誰かに当たったわね」
ご愁傷様、と呪詛子は下の人間にご冥福を祈る。
「呪詛子さま、そろそろゴールが見えてきましたよ」
「ふふ、この分じゃ優勝確実ね。でも呪詛子ちゃんは完膚なきまでに相手を叩きのめして勝ちたいの、分かる?」
「……もう一回炎を吐いて遠回りをさせるのですね。たしかに確実性は増しますが、なんというかフェアではないような気がしてしまって」
「なによ英彦! そんなこと言ったら、このワイバーンをゲットしたのだってフェアじゃないじゃない」
「わかりましたよ……」
英彦は渋々急降下して、ワイバーンに紅蓮の炎を吐かせる。
「ふふ、何度見てもいい眺めね」
呪詛子は下々の人間たちが困惑する様子を見てにやにやとしていた。
だが、次の瞬間ガクンと呪詛子の視線がズレる。
なんと、炎を吐きすぎて体力が限界に来ていたワイバーンが落下し始めたのだ。
「ああ、もうだから言わんこっちゃない」
英彦がやれやれという表情をする。
そして地上の方ではあと、少しでゴールという所で失速を始めたワイバーンを捉える者がいた。
「「「だんごおおおおおおおおおお!!!!」」」
桃太郎号に乗ったミーナ・犬・猿・雉は乳酸菌の向こう側に到達し、凄まじい勢いでペダルを漕ぎ、ついに音を置き去りにしていた。
そしてとうとうゴールまであと数十メートルという所で頭上のワイバーンを抜き去り、単独トップに躍り出る。
とうとう今までの努力が報われる。
一人と三匹はえもいわれぬ昂揚感に包まれていた。
ゴールまであと数メートル。
ミーナが自転車から手を放してゴールテープを切る態勢をし始めた時に、英彦はワイバーンの背中から飛び降りた。
――ザシュン
ブライトシャムシールで桃太郎号のタイヤを一閃する。
ミーナを筆頭に桃太郎号の面々は顔面から地面に直撃していった。
「ゴォオオオオオール!!! やっぱり呪詛子ちゃんが一番ね!!!」
態勢を崩したワイバーンをなんとか操りながら、呪詛子は見事ゴールテープを切っていた。
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