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ティーカップパンダを探せ!

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ティーカップパンダを探せ!

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【11・電波少女と蒼空男】

3日目 A.M. 11:00

 ティーカップパンダを無事保護し、ようやく飛空船のなかへと戻ってきたななな。
 藩大佐への報告のため、司令室に足を踏み入れてみれば。
 先にルカルカ、ダリル、縁、陽たち。それに美羽とベアトリーチェが集まっていて。わいわいとなにやら騒いでいた。
「わー、やっぱりかわいいねー!」
「ええ。ただ、赤色のパンダさんが、凄い目でこちらを見ているような……」
 美羽がメスの赤パンダ、ベアトリーチェがオスの青パンダをだっこしていたが。
 メスのほうが、人間の女に色目使うんじゃないよ的なことを言っているように思えて。
 オスのほうもぶるぶると震えて頷いているように見えた。親しくなったのかは不明だが、はやくも上下関係は成立したらしい。
 そんな心境的なものには構わず、ルカルカは赤と青のティーカップパンダを揃ってデシカメ撮影し、
「決めた! 名前は”ななな”と”るるる”♪」
 いきなり命名させてほお擦りしていた。
 それにダリルが、
「電波度が増えそうだな」
 と溜息をつきながら。藩大佐へ調査結果の報告をつづけていく。
「藩大佐。やはりまだ生態に関しては謎が多すぎます。せいぜいが崖の付近に生息するというところくらいですが、情報として得られたのはその程度のこと……。これだけでは、人工繁殖は一朝一夕にできないでしょうね」
「私もできる範囲で生態を調べましたけどぉ、成果はいまひとつでしたぁ」
 そう言ってダリルと縁は、地形や周囲の動植物などについての報告書を渡し、
「ということで、引き続きティーカップパンダの生態調査を行ないたいのですが。よろしいでしょうか」
「ああ。構わないぞ。私としても、まだまだ研究をするつもりだからな」
「ありがとうございます。では、今回捕獲したパンダは教導団の研究施設で飼育するということで」
「そのつもりだ」
 合意を得られて、ホッと息をついたダリルは。
 ふっとティーカップパンダを見やり、
(カップや胸が有袋類の袋の役割なら、胸のカップの差も比較要素になりうるな)
 などということを頭に思い描いて。
「ルカ、佐々良。お前達胸のカップが違うよな。服を緩めて一匹ずつ胸に乗せてみてくれ」
 躊躇いなく実行するべくそんな発言をして。
「な、なに急にそれ。セクハラ?」
 ルカルカを呆然とさせていたが、
 ダリルのほうは素で分かってないようで、首をかしげ。
 横で聞いてて恥ずかしくなった美羽に軽く蹴られていた。

 そんなほほえましい(?)光景ののち、
 なななと大佐は改めて司令室でふたりきりになった。
「少尉」
「は、はい」
「よくやった……と言いたいところだが、次からはもうすこし手際よくするようにしろ。お前も軍人なら、常に全力でやることをおぼえるべきだ。下手に手を抜けば、それが世界の命運をわけることにもなる」
 なんとも情け容赦ない発言に、さすがになななも自分の目が険しくなるのがわかった。
 その熱がおさまらないうちに、気になっていたことを発言する。
「そういえば、大佐。以前仰っていましたよね、パートナーと仲違いしたって」
「……なんだ。突然」
「今日ここで会った傭兵龍騎士の人なんですけど、大佐と知り合いらしいって聞きました。そもそもあの人は、本当にティーカップパンダが目的だったんでしょうか? これは想像ですけどもしかしたら――」
「そこまでだ。それ以上は論じても意味がない」
 強引に話を切った大佐に、なななは怒りと悲しみが混じったような嫌悪の視線を向ける。
 しかしその視線を受けながらも、大佐は表情を崩さずに。
「私を嫌うのなら勝手にすればいい。もとより軍人をはじめた時より、私はこの身を世の為に使うと決めたのだ。相棒に罵倒され、家族に唾を吐かれようと、そのぶんこの蒼い空の下に笑顔が増えるのなら安いものだ」
「え…………」
 このとき、ようやくなななは気がついた。
 なななにとっては、今回のことは危うく地球の危機になるかもという事態であったが。
 きっと大佐にとっても、こうした任務のひとつひとつが、地球の危機と直結しているのだろうと。
 そう思うと、自分の苛立ちが雲散霧消していくのがわかった。
「それではな」
「あっ、ぱ、ぱんだ大佐!」
 言うだけ言って立ち去ろうとする大佐を慌てて呼び止めるなななだったが。軽く名前を噛んでしまった。
「なんだそれは。皮肉のつもりか?」
「ご、ごめんなさい藩大佐。あの……」
「だからなんだ」
 なにを言えばいいのか、謝るべきか、進言でもすべきか、電波よ教えてと願いたいところであったけれど。
 最終的には、自分の胸のうちを明かしておくことに決め。
「金元なななはこれからも、宇宙刑事として、そしてシャンバラ教導団として、誠心誠意がんばりますから!」
 声高らかに宣言し、姿勢を正し、敬礼をするなななだった。
 藩大佐はそれに苦笑しつつもきちんと見届けたあと、なにも言わずに船室を後にするのだった。


                                     おわり

担当マスターより

▼担当マスター

雪本 葉月

▼マスターコメント

 こんにちは、マスターの雪本葉月です。
 気温や湿度の変化のせいか、久しぶりに風邪をひいていました……。
 みなさんも体調管理は万全にしてくださいね。

 さて。今回のテーマは『信念』です。
 誰に笑われ、誰に蔑まれようとも貫きたい、なにか大切なものを人間は誰しも秘めているものです。たとえそれが他人から見ればどんなにバカらしいものでも、信念があれば人間は力を出せるのでしょう。
 そして、なななと藩大佐は肩書きも考え方もまったく違いますが。根っこのところでは似ているのかもしれません。どちらもあれでかなり夢見がちであり、それでいて現実の問題とどう向き合おうかと苦悩していますからね。
 あと。作中でも藩大佐が言っていましたが、生きていくと他人の信念とぶつかる場面が多々あるわけで。それをいつも避けて通っていたのでは、自身の成長は望めないのかもしれません。

 ……なんて、ムツかしそうなことを言ってみましたが。
 人それぞれなのはあたりまえなので。ぶつかりながらも、なんとか自分の信念を忘れずに生きていければそれが一番じゃないかと。
 それでは、今回はこのへんで。