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至高のカキ氷が食べたい!

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至高のカキ氷が食べたい!
至高のカキ氷が食べたい! 至高のカキ氷が食べたい! 至高のカキ氷が食べたい!

リアクション

 紅護理依(こうご・りい)が隅っこのほうでいじけていると、優しく穏やかな旋律が奏でられ始めた。
 理依が顔を上げると、そこには弦を弾くベルテハイト・ブルートシュタイン(べるてはいと・ぶるーとしゅたいん)の姿があった。そして横には壁に背を預け穏やかな表情で微睡んでいるグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)がいた。
「ここ、寒いけど寝かせていいのか?」
「グラキエスは暑さに弱いからな。だから、この話は渡りに船。氷を入手するのが目的じゃなくてグラキエスをここで休ませてやりたいのだよ」
 ベルテハイトはグラキエスの髪を手櫛で梳きながらそういう。
「確かにここの夏は暑いよな……」
「だから、グラキエスの代わりに我が話をしようと思うのだ」
 硬い鱗に覆われたゴルガイス・アラバンディット(ごるがいす・あらばんでぃっと)が声を潜めて言う。
「次は我が話をしよう」
 隅から立ち上がり皆の輪からゴルガイスは一歩出る。
「ふむ。どういう話を聞かせてくれるのだ?」
「グラキエスの魔鎧、アウレウスと契約したときの話でもしよう。一緒にいたのは我だからな」
「契約の話は中々人それぞれ味があって面白いからな。聞いてるわたしも飽きないよ」
「そうか、それはいいことを聞いた。それとこちらからの要望だが、主のグラキエスを暫くこの洞窟で休ませてもらってもかまわないだろうか?」
 氷よりも主の体調。暑さに弱いグラキエスは、氷精の住処のようなひんやりと冷えた場所で休息を取りたいらしいらしい。
「それは話を聞いてから考えよう」
「一考してくれるだけでも助かる。それでは話をしよう」
 そうして、ゴルガイスはその日の記憶を鮮明に思い出すように語りだした。
「夏でもないのに、とにかく暑い日のことだった。グラキエスはとにかく暑さに弱いから我が涼める場所まで連れて行ったのだ」
「ほう、お前の主は暑さに弱いのか」
 氷精はちらりと眠り始めたグラキエスを見やる。
「ああ、我は逆に火竜ゆえ長時間寒いところにいるのは苦手とするが……なに、これは別の話だ。今グラキエスの着ている魔鎧アウレウスもここのような凍りついた洞窟で出会ったのだ。
 涼めるかと思い探索をしていた所で床が抜けてしまってな、落ちたところは一見して宝物庫の様相を呈していた。そこにいたのが……」
「そこにいたのが、そのアウレウスとやらだったと」
 ゴルガイスは頷く。
「ああ、そうだ。最初は暴れまわっていてな、当然戦う羽目になる。まあ、グラキエスが魔鎧の兜を叩き割ったら正気に戻ったからよかったんだが、アウレウスから話を聞くと、その洞窟は昔悪魔の住処だったとのことだ。そして、アウレウスはその悪魔の作品の一つだったようでな」
「魔鎧が意味も無く暴れるとは、また面妖なこともあるものだな」
「何、洞窟が海と繋がっていたのを気づかずに住処としていた悪魔が、ある日津波で浸水した洞窟を慌てて凍らせて引っ越していったらしいのだ」
「……アホな悪魔もいるものだな。立地などはしかと見極めてから住処にせねば、わたしのように!」
 氷精が自信満々にそういうが、今の氷精の言葉聴いたうちの誰かは、こんな辺鄙なところに居を構えるなよなどとぼそりと漏らしていた。
 洞窟内は暑いし、氷精の元へ来たら急激に寒くなるし、立地条件が最悪なのはお互い様だろう。
「まあ、確かに立地を考えずに住処にするのは愚かだな」
「そうだろうそうだろう」
 ゴルガイスも内心少し氷精の住処の選び場所はおかしいのではないかと思ってはいたが、口には出さなかった。
「話を戻そう。アウレウスは年月が過ぎる毎に氷から染み出す海水の塩気で錆びるのではないかと危惧し暴れていた、という話だったんだ」
「魔鎧が錆びると思い込むなんて、作り手がアホなら鎧もアホなのかね?」
 クスクスと氷精はおかしそうに笑い声を上げる。
「それは、我とグラキエスも指摘したさ。この話は我らの中でよくあがる笑い話の一つだな」
 ゴルガイスも表情を緩め氷精の言を肯定した。
「それからがまたおかしいのだよ。この話が終わってからアウレウスはグラキエスに跪くと“主”と恭しく呼び出したのだ。グラキエスは相当困惑して、兜と頭の中身一緒にこわしてしまったか? と焦っていたな。発狂しそうなところで止めて話を聞いてくれれば確かに敬いたくもなると思うがな」
「自分の危機を救い、外へ連れ出してくれる人間が現れたらそうなるかもしれないな……」
 氷精は笑みを引っ込め感慨深げに言う。
 ゴルガイスは話は終わったとばかりに、氷精に問う。
「それで、グラキエスを休ませてもらうことはできるだろうか?」
「……好きにするといい。中々に面白い話であったよ」
 氷精はどこか上の空のような様子で淡々と答えた。
「ありがたい……」
「まあ、また立ち寄ったときにでも外の話を持ってくるといい。そのときはまた休ませてやろう。そこの小僧に伝えて置くのだな」
「ああ、確かに伝える。氷精の心遣いに感謝する」
 ゴルガイスは一礼しグラキエスの元に向かう。
 ずっとグラキエスを見ていたベルテハイトに氷精からのお達しを告げた。