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悪意の仮面

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悪意の仮面

リアクション


第10章

 こうして、“悪意の仮面”にまつわる事件は、一旦の収束を見た。
 回収された仮面について、各学校の研究機関は特殊なマジックアイテムであるとの結論を導き出した。
 それによれば、仮面には悪意を引きだし、増幅する魔力がこもっており、着けた人間にはそれに抗う手はない……とのことだ。
 この事実は早急に報告としてまとめられ、空京の治安組織へと伝えられた。
 仮面を着けて悪意を着けた者たちを、罪に問うことはできない……
 それが、当局の下した結論である。
 結果、仮面を着けた者をどう扱うかは、彼らが所属する各学校に委任された。
 学校のために無償奉仕する……つまり、ボランティアとして何らかの行動をさせることで、ほとんどの学校は決着をみたようである。


「はあ……はあ、はあ……」
 夜明け頃、アストライト・グロリアフルは地面に倒れ込み、大きく息を吐いていた。彼の傍らには、「雄狩る」の仮面を外され、くたりと意識を失ったリカイン・フェルマータが、両手足を縛められている。
「やった……俺はやったぞ。みんなを守ったんだ!」
 果たして、“悪意の仮面”に揺れる空京の影で、アストライトの決死の逮捕術により、リカインの仮面は無事に取り外された。空京の男子諸君は守られたのである!


「私、みんなにたくさん迷惑をかけたわ。でも……分かったの!」
 ボランティア……学園内のゴミ拾い……に精を出しながら、小谷 愛美はぐっと頷いた。
「な、何が?」
 付きあいよく、ゴミ拾いを手伝う小鳥遊 美羽は、おそるおそる聞いてみた。
「運命の人は、無理矢理手に入れるんじゃない。ふたりの愛が、磁石のように自然と引き合うものなんだって!」
 輝く瞳を青空に向け、愛美は高らかに、歌うように言った。
「あ、あはは……全然、懲りてないね」
 マリエルは思わず苦笑いを浮かべてしまう。
「ま、まあ……こんな愛美だからこそ、みんな助けてあげたいって思ったんだと、思うよ」
「そっか……うん、そうだね」
 ほうとマリエルが息を吐く。そしてこんどは、にっこりと笑顔を作った。
「マナ! 早く終わらせて、甘い物食べに行こうよ!」
「えっ、でも、ダイエットは?」
 きょとんとする愛美に、美羽はくすくすと笑いながら肩を叩いた。
「細かい事、気にしないの。こんな時くらい、いいじゃない!」


 拍手に見送られて、若松 未散は座布団を立ち、舞台をハケた。演目は“黒い仮面”、人の性格を変えてしまう仮面を着けてしまった者と、それを外そうとする人々のドタバタを語った創作落語である。
「まあ、それなり……だったかな」
 自分の体験を元にした噺がウケたことに面はゆいものを感じながら、未散は楽屋へ戻っていく。
「未散ちゃん。今の噺、とっても面白かったよ」
 その楽屋の前で声をかけられたことに、未散は思わず驚いた。
「こういうの、出待ちっていうんだっけ……迷惑かなぁ?」
 レイカ・スオウと天禰 薫が並び、照れたように笑みを浮かべている。未散は思わずうっとうなった。
「……ま、毎回やられたら、迷惑だよ」
「よかった」
 薫がぱっと表情を輝かせて頷く。
「わ……私、これが終わったらあがりだから。何か、食べに行く……か?」
「未散くんが自分から友達を誘うなんて! ハル、感激のあまり涙を止められませんぞ!」
「おわあっ!? なんで楽屋にいるんだよ!」
 涙をぬぐいながら現れたハルに、未散は思わず刺々しく言う。
「これを未散くんに届けるように言われたのです」
 と……ハルの手の中には、青紫の薔薇の花束。
「へえ。未散ちゃんにこんなしゃれたものを贈るなんて、なかなかしゃれたファンがいるんですね」
 レイカが感心したように呟く。そのとなりで、薫が首をかしげた。
「誰からのプレゼントなの?」
「さあ……わたくしも、見知らぬ方から未散くんに渡すように頼まれただけですからな」
「と……とりあえず」
 なんとなく照れてしまいそうになるのを押さえながら、未散は咳払いした。
「き、着替えるから待っててくれ」
 そう言って、彼女は楽屋へ戻った。
「はい」
「うん」
「ええ」
 自分の言葉に返事が返ってくることに、不思議な安堵を覚えながら……。

担当マスターより

▼担当マスター

丹野佑

▼マスターコメント

 本シナリオのリアクション執筆を担当させて頂きました、丹野佑と申します。
 シナリオに参加していただき、あるいはリアクションを読んで頂き、まことにありがとうございます。

 本シナリオのアイデア自体はかなり前から温めていたもので、いろいろと考えた結果、これはシナリオとして楽しんでいただけるだろう、と判断して募集の運びとなりました。

 そもそも、このシナリオの出発点はどこだったか、今でははっきり思い出せません。
「性格が変わる仮面をつけたPCに『○○に変貌した』という称号を贈れば面白いぞ!」という、ダジャレだったような気もします。
「PCを悪役にしてしまえば自分で悪役を考えなくて済むぞ!」という手抜き根性だったような気もします。

 ともあれ、GMの想定を遥かに超えるシナリオガイドへの反響に驚きました。
 一風変わったPC間対立をお届けできたと思いますが、楽しんでいただけたでしょうか?
 掲示板での抽選がなんだかすごい事になってしまいましたが、出回る仮面の数が減ったぶん、それぞれのドラマは濃密になったように思います。

 今回も、活躍や内容を踏まえ、何人かの方に称号を贈らせて頂きました。
 おそらく、僕のシナリオとしては最多の称号を遅らせていただいたと思います。

 最後になりましたが、重ねて、ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。
 またそのうち、契約者同士ががっちり対立するようなシナリオを書いてみたいと思います。
 では、機会があれば、またマスターを務めさせて頂ければと思います。