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ザナドゥの方から来ました シナリオ2

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ザナドゥの方から来ました シナリオ2
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第2章


 一方、いち早く宮殿へと侵入したコントラクター達は、すでに迷宮において戦闘を開始していた。
「可能な限り戦闘をしていくであります」
 冷静に告げたのは、金住 健勝(かなずみ・けんしょう)である。パートナーのレジーナ・アラトリウス(れじーな・あらとりうす)は、神秘的な瞳を瞬かせ、呟いた。
「……戦闘を避けたほうが、効率的ではないのですか?」
 だが、健勝はトラップに警戒しながらも、可能な限り迷宮の探査と、そこを警備している魔族たちとの戦闘を引き受けるつもりであると、レジーナに告げる。
「自分はパーフェクト兵士でありますから……この程度の戦場で死ぬことはないであります。
 それよりも、後からやってくる者たちが進みやすいようにしたほうが、全体の生存率が上がるのであります」
 どうやら、勘で進んだ通路は行き止まりのようだ。寸前の曲がり角まで戻った健勝は、籠手型HCでマッピングを続けた。少し戻り、行き止まりへと続くの通路の壁に、塗料でバツ印を付けて行き止まりであることを示す。
「理解しました。それでしたら私も手伝いましょう――いかにパーフェクト兵士といえど、協力は必要でしょうから」
 そのレジーナの首元には、カメリアの『バキュー夢』で生成した鉱石『チヂミウム鉱石』がある、蒼白い光を放つその鉱石は、パーフェクト剣の花嫁であるレジーナには必要なものだった。
 人工的に改造された兵士である『パーフェクト剣の花嫁』であるレジーナはこの『チヂミウム鉱石』からの光を定期的に浴びないと、やがて身体が硬直して死んでしまうのだ。
 だが、逆説的に言えば、その鉱石の光を浴び続けることで、レジーナはパーフェクト剣の花嫁としての性能をいかんなく発揮できるということでもある。レジーナは『我は纏う無垢の翼』で天井付近に仕掛けられていたトラップを手早く解除した。

「――勝手にするといいいであります。――来たでありますね!!」

 呟いた健勝の視界に、Dトゥルーの配下の魔族が映る。
「――フッ!!」
 先手必勝、とばかりに健勝のクロスファイアが炸裂した。レジーナのサポートもあって、健勝は難なく戦闘に勝利する。
 二人は、先を急いだ。


 なお、同行者がいないため、ザナドゥ時空の影響である『パーフェクト兵士』や『パーフェクト剣の花嫁』、小麦粉などを溶いて焼いた外はパリパリ、中はふっくらとした食べ物によくにた形をしているという『チヂミウム鉱石』などに関しての突っ込みは不在である。


                    ☆


「おっと、どうやらこちらは行き止まりらしいな」
 と、シェイド・ヴェルダ(しぇいど・るだ)は呟いた。健勝とレジーナの残した通路のバツ印を見つけたのである。
 パートナーである神楽坂 紫翠(かぐらざか・しすい)もまた、その印を見て呟いた。
「ふむ。どなたかが残して下さったのですね、ありがたいことです」
 同行するもう一人のパートナー、レラージュ・サルタガナス(れら・るなす)もその後に続いた。
「それならば、これをつけた方々とはまた別なルートを進んでいけば、少し迷宮の探査が進みますわねぇ。
 さぁ、先に進みましょうか」
 といいつつ、レラージュはすたすたと先に進もうとしてしまう。
 そのレラージュを、シェイドが呼び止めた。
「おいおい。一人で進むなよ、レラ。トラップは解除されているようだが、一本道じゃないんだ――どこから敵が出てくるか分からんぞ」
「……あら、どうやらそのとおりらしいですわよ?」
 どうやら、Dトゥルーが作った空中宮殿内は、レラージュにとって心地よい魔界の空気が流れているようだ。ついつい元気になってしまったレラージュが先走った先に、迷宮内を徘徊する魔族が現れた。

「……いきますよ」
 紫翠は、冷静に対物ライフルを構えて、先頭の魔族を狙い撃つ。
「……言わんこっちゃない」
 と、シェイドもため息混じりにツインスラッシュを放ち、レラージュをガードした。
 さきほどから、紫翠たちは何度か魔族に遭遇し、その都度撃退してきた。確かにDトゥルーは魔神、魔王としての実力を持ってはいるが、魔族6人衆もそのほとんどが無力化され、軍勢にもかげりが見えているように感じられる。

 そしてまた、一行と魔族との戦闘が本格的に開始されようとしたその時。


「どけえええぇぇぇいっ!!!」


 通路の後ろの方から、竜の角と尻尾、翼を生やした少女、曹丕 子桓(そうひ・しかん)が走りこんできた。
「!?」
 驚いたレラージュは、咄嗟に魔族の手を逃れてシェイドの背後に隠れる。
「――ちっ! 挟み撃ちか!?」」
 さすがのシェイドも驚きの声を上げる。何しろ、曹丕の姿は竜の鱗を持った反竜半人という姿。この状況下では魔族と間違えられても不思議はない。
 だが、シェイドの驚きをよそに、曹丕は何かから逃げ出してきたかのように、前方の魔族にチェインスマイトを放ちながら突進していく。
「どけと言っとるだろうがぁぁぁっ!!!」
 ひらりと、紫翠たちが身をかわして通路を空けると、そのまま曹丕は魔族の群れの中へと突進し、勝手に蹴散らしていく。
「――何でしょう?」
 状況を把握できない紫翠が、曹丕に視線を送ると、レラージュがさらに通路の後方を指差した。
「――あれじゃ、ないんですか? 原因は」

「……おいおい、待てというのに……おっと、敵か」
 その後ろから曹丕を追う様にして来たのは、曹丕のパートナー、柳玄 氷藍(りゅうげん・ひょうらん)だった。
 氷藍は、曹丕が突撃して行った魔族の群れに容赦なく『鬼払いの弓』による魔法攻撃をかける。
『ぐわあぁっ!?』
 すっかり紫翠たちと戦闘をするつもりでいた魔族たちは総崩れなり、そこに紫翠やシェイド、レラージュが追い討ちをかけた。

「に、逃げなくては……!!」

 魔族の群れを追い払った後、その隙をついて曹丕はまた逃げ出そうとするが、シェイドがその肩を後ろから掴んだ。
「おい――一体何を――?」
 振り向いた曹丕。その瞳は、まっすぐにレラージュに向けられ――そして叫んだ。
「あ、危ない!! 逃げろ!!」

「え?」

 レラージュが反応するのと、氷藍がレラージュに襲い掛かるのとは同時だった。
「きゃっ!!」
 両手を突き出して、レラージュの胸元に掴みかかる氷藍。
「……いい胸を……しているな」
「な、何ですかっ!?」
 辛うじてその氷藍を避けたレラージュ。まさかいきなり胸倉を掴みかかられるとは思ってもいないので、驚きの声を上げた。
 いや、胸倉を掴もうとしたのではない。氷藍が狙ったのは、レラージュの胸、そのものだ。
「その胸ならば……いいおっぱい団子が作れそうだ……」
 にやりと、氷藍が不気味な笑みを浮かべた。
「ひぃっ!?」
 本能的な恐怖と嫌悪感に身震いするレラージュ。
 すでに通路の奥に逃走中の曹丕は叫んだ。
「氷藍の様子がおかしいのだ!! ザナドゥ時空とやらに取り込まれたせいかもしれん!! さっきから『おっぱい団子』を作るのだと言って俺の胸を――」

 その言葉に、ギギギ、とい氷藍の首が曹丕のほうを向く。

「――おや、あんなところにも――いい団子の材料が」

「ひっ!」
 その視線を感じて一目散に逃げ出す曹丕。氷藍は、その後を追ってまた走り去っていく。
 後には、呆然とした顔の紫翠たちが残されたのであった。

「……あれは、何だったのでしょう」
 紫翠の呟きに、シェイドは応えた。
「……まあ、ザナドゥ時空とやらの影響ってことだろうな……大丈夫か、レラ?」
 辛うじて自分の胸を守り通したレラージュも、安堵のため息を漏らした。
「ええ……ですが、できるならあのあの方たちとは別なルートで進みたいですわね……」
 一行は、曹丕や氷藍とは別な道を進み、『庭園』へとやってきた。
 そこは、季節を問わず花が咲き乱れる、美しい場所だった。

「ここが、『庭園』……どうしてこの宮殿にこんな場所が……。
 まあ、ひょっとしたら危険なものがあるかもしれませんし……他の方々が来るまで、少し露払いをしておきましょうか」
 そう言った紫翠の着物の裾が少し破れ、血が出ているのをレラージュが見つける。
「あら、紫翠様……お怪我なさってますわよ。気付かなかったんですか?
 綺麗なバラには棘があるとも言いますし……気をつけなくては」
「ああ……気付きませんでした」
 呟く紫翠に、呆れ顔のシェイドが近づく。
「全く……集中していたとはいえ、自分の怪我にも気付かないとは、無茶しすぎだ……どれ」
 紫翠の目にしゃがみこんで、傷口に口を当てて血を舐め取るシェイド。
「ん……んぅ」


 その美しい庭園には、特に敵らしい影は見えない。一休みして、戦いの疲れを癒す一行だった。


                              ☆