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ムシバトル2021

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ムシバトル2021

リアクション


1回戦Cブロック

○Cブロック第1試合○

 Cブロックの開幕も、セレンフィリティ&セレアナによる選手のコールからだ。
「パラミタカブトムシのビリー! 騎乗するのは黒崎 竜斗(くろさき・りゅうと)、そしてユリナ・エメリー(ゆりな・えめりー)、共に入場です」
 ゲートから姿を現したのは、堂々たる体躯のパラミタカブトムシだ。
「ボクが拾ってきたんだよ! ビリー! がんばれー!」
 セコンドからリゼルヴィア・アーネスト(りぜるゔぃあ・あーねすと)がぶんぶか手を振っている。
「勝ったら、大好きなピロシキをやるからな。がんばるのだぞ、ビリー」
 その隣のミリーネ・セレスティア(みりーね・せれすてぃあ)がリゼルヴィアの手を取る。
「期待されてるみたいだな。こいつは、負けるわけにはいかないな」
「もちろんです。さあ、頑張りましょう!」
 竜斗はビリーの背で軽く肩をすくめ、ユリナは決意を新たにする。
「対するは、パラミタミヤマクワガタ、ステキ自然! 3年目の入場だー!」
 大きなアゴを動かして、堂々とやってくるクワガタ。その背には御神楽 陽太(みかぐら・ようた)ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が乗っている。
「がんばろうね、ステキ自然!」
「今年こそ、ムシバトル王を目指そう」
 前に立っているのはノーンだ。陽太はメインの乗り手を彼女に譲っているらしい。
 カブトムシとクワガタ。その組み合わせだけで観客達の緊張と期待が高まっていく。
「試合開始!」
 ゴングが高く響く。ビリーが一気に距離を詰めるが、対するステキ自然は目から生体レーザーを放つ!
「そんな! ステキ自然にこんな能力が!?」
 驚きの声を上げるユリナ。表皮でレーザーを弾くものの、熱は確実に伝わってくる。
「いいや! 接近すれば使えないはずだ!」
 ガッ! リングの中央で、カブトムシとクワガタムシががっぷりと組み合う!
 中央で押し合いへし合い、互いに一歩も引かずに組み合う二匹。だが、徐々にステキ自然の力が弱まり、ビリーが押しはじめる!
「ステキ自然! こんなものじゃないはず……まさか!」
「そう! ビリーだって単なるクワガタじゃない。体から放たれる鱗粉が、ステキ自然の力を弱めているんだ!」
 竜斗が叫ぶ。ついに、ステキ自然がリング際まで追い詰められた。
「ああっと、意外な展開です! このまま、ビリーが押し切るのかー!?」
「いや、この瞬間こそムシバトルの最後の反撃のチャンスだ。ステキ自然の目は諦めていない!」
 実況席の発言にも力がこもる。
「よく耐えたね、ステキ自然! ここから反撃だよ!」
「最後の力を振り絞りましょう!」
 乗り手たちの声に応えて、ステキ自然のアゴがビリーの体を捉える。そして、大きく羽ばたいた!
「ああっと! これは何という技だ−!」
「いっくよー!! トルネード重力落しぃ!」
 実況の声に応えたわけではないだろうが、ノーンが叫ぶと同時、ステキ自然の巨体が大きく回転する。その勢いが、ビリーの体を土俵際から放り投げた!
「決まったー! 勝者、ステキ自然! やはり強ーい!」
 歓声が会場に広がる。リング外で体勢を立て直すビリーに、リゼルヴィアが駆け寄った。
「ビリー! 大丈夫? けがしてない?」
「すまない、俺たちの力が足りなかったばかりに……」
 頭を下げる竜斗に、身リーなが首を振る。
「いいや、ビリーも、主殿もよくやった。だが、相手はさらなる研鑽と気力をもって望んできたのだ。次にまた挑めばよい」
「……そうですね。また、がんばりましょう、ビリー」
 そっと肌を撫でるユリナ。一方、リング上ではステキ自然とその乗り手たちが手やアゴをかかげ、歓声に応えていた。
「この調子で、どんどんいくよ!」
「応援してください!」

Cブロック第1試合 勝者:ステキ自然(パラミタミヤマクワガタ)
決まり手:トルネード重力落とし
解説員によるコメント「互いに強力な攻撃力を持ったムシどうしのバトルだった。決め手は必殺技を繰り出すタイミングだったな」


○Cブロック第2試合○

「第二試合! ビックホーンの入場です! 種族は、オオツノゴリラカブト……?」
「手元には、そういうカブトムシの類名はありませんが……」
 リング上のセレンフィリティとセレアナが顔を見合わせる。
 ずーん、ずーん、と足音と共に現れたのは、カブトムシ……の、形をしているが、巨大で二足歩行をした何かだ。首がもげてしまうのではないかと心配になるほど大きなツノ。四本の脚はまるで腕のように発達している。
「え、えー……実は、ビックホーン選手は、専門家によれば突然変異であると見られています。そのため、種族はブリーダーの和泉 絵梨奈(いずみ・えりな)氏によるものになっています」
 実況の衿栖がフォローを入れる。解説の未散も、信じられないモノを見る目つきながら、なんとか言葉を続ける。
「大会運営委員会によれば、『分類上は昆虫と見るしかないため、広い意味ではムシだろう。よって、参加オーケー』との回答が出ています」
「出場が認められた時点で、僕たちの勝ちは決まったようなものね……」
 その背に乗った絵梨奈が、ふっと笑みを浮かべた。
「出場するのが最大の難関っていうのもどうなんだ」
 絵梨奈の体に纏われている魔鎧、ジャック・メイルホッパー(じやっく・めいるほっぱー)がぽつりとうめいた。
「も、もう一方は、3年目! セカイジュオオカマキリのストライカー!」
 観客もかなり反応に困っていたようだが、人気ムシの搭乗で一気に会場がわき上がる。
 ソア・ウェンボリスと雪国 ベアは、並んで観客席に手を振っている。
「そんなわけ分かんない、怪しいムシにストライカーは負けませんよ!」
 ビシッ! と指を突き出すソア。腕を組んだベアが、大きく頷く。
「その通りだ! ブリーダーとムシの絆……もっとみんなに見せてやろうぜ!」
「ビックホーンはわけ分からなくなどありません。見せてあげましょう、僕たちの力を」
「両者の気合いは十分! 今、ゴングが鳴らされます!」
 試合開始の宣言と同時に、ストライカーがカマを掲げる! それは乗り手であるソアの魔力を伝わせ、さらに切れ味を増している!
「いきますよ! 『マジカル☆スラッシュ』!」
 ストライカーが鎌を振るう! それは真空波を生みだし、カマイタチとなってビックホーンに迫る!
「その程度ではビックホーンを傷つけることはできません。もっと近くで攻撃しなければ……ね!」
 ビックホーンの背に乗った絵梨奈があからさまな挑発を仕掛ける。だが、その言葉の通り、ビックホーンの腹側まで分厚い外皮に真空波は弾かれている。
 一方、二本脚で歩くビックホーンの動きは、当然ながら鈍重だ。ビックホーンの方から近づいても、ストライカーが飛んで逃げればそれまでだろう。
「挑戦されて、受けないわけにはいかないぜ、ストライカー!」
「そうですよ! 至近距離型マジカル☆スラッシュ、見せてあげましょう!」
 あえて挑発を受ける乗り手とストライカー。羽を広げて一気に間を詰める!
 ストライカーの直進に、ビックホーンはその場から動くこともできない……いや、じっと待ち受けている!
 空気を切り裂き、ストライカーのカマが振り下ろされる。ムシ相手には必殺の一撃、いや連撃だ!
 ……だが!
「ああっと! なんということでしょう! ビックホーンの前足が、ストライカーのカマを受け止めています! これはムシバトル史上初ではないでしょうか!?」
 二足歩行するビックホーンならではの技だ! がっきと脚とカマがかみ合う!
「行きますよ、カウンターです!」
 絵梨奈の指示が飛び、ビックホーンが低い体勢から巨大なツノを突き出す!
 決して重量級とは言えないストライカーが、捕まえられて弾き飛ばされては耐えられるはずがない。一撃でリングアウトした。
「なんと、これは番狂わせ! 突然変異の新人、ビックホーンがストライカーを破った!」
「文字通りの大型新人を止められるものは居るのか? 2回戦での戦いぶりに注目が集まるな」
 実況・解説の煽りを聞きながら、ソアとベアはストライカーを労っていた。
「よくやったぜ、ストライカー! 熱い戦いだった!」
「きっとみんなにもムシバトルのすごさは伝わりましたよ!」

Cブロック第2試合 勝者:ビックホーン(オオツノゴリラカブト)
決まり手:ツノ攻撃
解説員によるコメント「ストライカーのスピードをまともに追わず、待ち伏せる作戦が功を奏したな。激しいぶつかり合いはムシバトル史上に残るだろう」


○Cブロック第3試合○

「Cブロックのトリを飾る選手の入場です! イルミンスールオオゴマダラ、トールマック・アルケー!」
 観客席からため息が漏れる。ゲートから現れたのは、美しい模様を持つ蝶なのだ。
「さすがに、前大会と同じようにシャンバラダンゴムシの背中に乗って戦うわけにはいかないものね……でも、この子は強いわよ!」
 観客の反応に満足そうに頷き、須藤 雷華(すとう・らいか)が笑みを浮かべた。
「ブリーダーの須藤さんは、去年とはパートナーを変えての参戦です!」
「イルミンスールオオゴマダラは、イコン・アルマインの動作モチーフとして研究が進んでいた蝶だ。研究データを元に、ムシバトルへ応用するのも可能だったろう」
 実況席から解説が入る。
「未散さんも、あれなら平気みたいですね」
「ムシには違いないけどな……ああ、もう、これ以上気持ち悪いムシが出てくるなよ……」
 ぼそぼそとマイクに拾われない会話。その間に、セレアナがもう一方のムシを呼び込む。
「パラミタサンドワームのさんちゃん! 乗り手は南部 ヒラニィ(なんぶ・ひらにぃ)さんです!」
「さんどわぁぁぁぁあむ!」
 奇怪な鳴き声と共に、うぞうぞとうごめく巨大なミミズのようなムシが現れる。ちなみに鳴いているのはさんちゃんではなく、その背でサンドワームコスプレを決めたヒラニィである。
「ぎゃあああああ!」
 解説の未散が思わず声を上げる。そして、解説席の下に潜り込んだ。
「み、未散さん! 落ち着いて!」
「だ、だってあんなうぞうぞ動いて……ああああああ……」
 顔を真っ青にして震える未散。放送席のスタッフは大慌てだ。急遽、未散の代わりに846プロ公式グッズの未散ちゃん人形が解説席に置かれることになった。もっともレアリティの高いミニスカ着物バージョンである。
「ま、まあ、私もいまだになれないから、あの反応も当然かな……」
 セコンドについた琳 鳳明(りん・ほうめい)も冷や汗を流している。
「と、とにかく、試合開始です!」
 カーン! ゴングが打ち鳴らされると同時、上ではトールマック・アルケーが、下ではさんちゃんが素早く動き回る。トールマックは生体レーザーを、さんちゃんは砕いたリングのつぶてを放つが、互いに命中には至らない。
「一気に行くわよ!」
 雷華がギターを高くかき鳴らす。その旋律が、トールマック・アルケーへの指示を兼ねているのである。リズムに乗って羽ばたくと、細かい鱗粉が飛び散る。そこにレーザーを放てば、予測しがたい反射と拡散によって、さんちゃんの逃げ場を封じた広域攻撃となる!
「さんちゃん! 最強であることを示してやるのだ!」
 ヒラニィが叫ぶ。だが、その声はすぐにかき消される。さんちゃんがさらに巨大な吠え声を上げたのだ。
「み、皆さん! 私の声が聞こえているでしょうか!? サンドワームの超音波が、会場に響いております! 耳を! 耳を塞いでください!」
 解説員がいなくなったぶん、衿栖はひとりでなんとか実況を続けている。
「し、しまった、これじゃあ……」
 ギターの旋律で雷華の意図を感じ取るトールマック・アルケーにとって、これほどやりにくい環境はない。音波によって聴覚が乱され、ろくに命令を聞くことができないのだ。
 ふらふらと頼りなく飛び回るトールマック・アルケー。そこへ、さんちゃんのつぶてが飛来した。羽が破れるようなことはなかったが、まともに飛び続けることは難しい。そのまま、蝶は羽を休める格好で降り立った。
「こ、降参よ。相手が悪かったわ」
「わしと宿命という名の硬い絆で結ばれたさんちゃんが最強であることを示さざるを得ない! さんどわ〜む!」
 勝利の雄叫びらしきものをあげるヒラニィ。さんちゃんも長い体をうねらせて、喜びを表現していた。

ブロック第試合 勝者:さんちゃん(パラミタサンドワーム)
決まり手:超音波咆哮
解説員によるコメント「もう勘弁してくれ……(コメント拒否)」