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続・悪意の仮面

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続・悪意の仮面

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第六章

「さて、泰輔君を誘き出すには小銭が必要なんだけど……おっと、ここに100G硬貨が」
 懐を探していたエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は硬貨を見つけ、それを取り出した。
「ふむ、それを落として誘き出してみましょうか」
「……って、それ、オイラのお小遣いじゃないのか!?」
 傍にはパートナーのクマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)
 メシエは同意するものの、クマラはエースの取り出した硬貨に顔色を変えた。
「待て待て待って! オイラのお小遣いは絶対に落とさないでヨー!」
「じゃあ、他に何を使って誘き出すというのですか」
 駄々をこねるクマラに、メシエが問いかける。
「おまえたちみたいなお金持ちには、硬貨はそんなに重要じゃないだろうけどな。オイラにとっては大事なお小遣いなんだぞ! 100Gでどれだけ駄菓子を買えると思ってるんだヨー!」
「だから、その代わりに落とすものはあるのかって言っているんだ」
 エースもただ懇願するだけのクマラに打開策を求める。
「ここにある硬貨は、この100Gしかないしな」
「普段から買い物はカードでしますしね。お金を持たないのも仕方ありません」
 二人の言葉に、クマラは悔しそううに睨み付けた。
「くっそー! これだから金持ちは!! わかったよ、じゃあオイラ秘蔵の六文銭を使うもん! 100Gに比べたらまだ安いし!」
 クマラは泣く泣く六文銭を取り出す。
 そして、少しやけっぱちにそれを放り投げた。
「よし、この音を聞きつけてきっと来るぞ! だからそれは仕舞ってくれよ」
 クマラの言葉にエースは考え込む。
「そんなに大事に思うものなのかな、これは」
「そうなんでしょうね。そうだ、私もちょうど持ち合わせていたのです。念のためにこちらも落としてみましょう」
 メシエは懐から取り出した小銭を躊躇なく投げた。
「それ、古銭じゃないの? そんなんで来るの?」
 エースはメシエの投げた物を見て、疑問を挟む。
「駄目でしたか?」
「うーん、それを見て泰輔君が価値を見出すかどうか。やはり、ここは念を入れてこの100G硬貨も投げてみるか」
 エースも躊躇なく手にしていた小銭を投げ込む。
「あー!! 何するんだヨー! せっかく代わりのものをオイラが投げたのに!!」
 クマラは半泣きで小銭に飛びついた。
「おーっと、僕を呼ぶ小銭の声は、ここからしているんやろか? 大丈夫、今から僕が拾ってあげるから寂しくないよ♪」
 だん! と勢い良く100G硬貨の上に靴が被さった。
「あーー!!」
 クマラが悲痛な声をあげた。
「やあ、泰輔君。まさかこんなに素直に誘き出されてくれるとは」
「別に誘き出されてはおらんよ。俺は小銭に呼ばれただけや」
 エースの言葉に、大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)は朗らかに返す。
「周りから見たら、十分に罠にかかってますけどね」
 離れた所で泰輔をつけていたパートナー、フランツ・シューベルト(ふらんつ・しゅーべると)が突っ込みを入れる。
「そうか。でも会ったら訊きたいと思ってたんだけど、なんでそんなに小銭にこだわるんだ? 紙幣ならまだわからないでもないけど」
「何を言うんや! 小銭だって十分価値があるやろ。さて、他にも僕を呼んでいる子がおるからもう行くわ」
 エースの問いに多少熱くなるものの、本来の目的を思い出し、すぐにひょいと身をかがめて、クマラに取られる隙を作らず泰輔は硬貨を拾い上げる。
「そんじゃ」
 泰輔が去ろうとする。
 その瞬間、メシエが動きを止めようと氷術を放つが、泰輔はすんでのところで避けきった。
「外れましたか」
「あーもう、危ないやんか! さっさととんずらさせて頂きますわ!」
 泰輔は急いで走っていく。
 離れた場所からフランツも泰輔を追って走っていった。
「あー! オイラの100Gが〜〜〜〜!!」
「おいおい、六文銭と古銭もちゃっかり盗られてるみたいだぞ」
 後にはクマラの悲痛な叫びと、エースの苦笑だけが残っていた。