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とりかえばや男の娘 二回

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とりかえばや男の娘 二回

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「あの女をどこに連れて行ったのでーす」

 奉行所の拷問室で、コアが拷問を受けていた。
「白状しないと、スクラップにしますよー」
 ゼニガタは、手に解体用のドリルをもって脅す。
「知らん」
 コアは答えた。
「知っていても、答えん」
「くー、強情な奴でーす」
 ゼニガタは言うと、コアの顔にドリルを近づけていく。
「言わないと、顔に穴をあけますよー」

「待って下さい」
 そこに、蒼が駆け込んで来た。
「そのお方を、痛めつけないで下さい」
「なんですか? あなたは?」
 ゼニガタは、いぶかしげに蒼を見た。
「ゼニガタ様に、お話ししたい事があります」
「話?」
「はい。この事件の首謀者は、竜胆様ではありません! 第一、役所で審議もなしに3日で処刑とは乱暴すぎるとは思いませんでしたか?」
「何をいうデスかー。証言ははっきりととれておりマース。それにお奉行様は言いました。あの娘を審議すれば、我々が奈落人に取り憑かる恐れがある。だから、審議無用で一刻も早く殺せーと。お奉行様の言葉絶対ね」
「その証言に誤りがあったとすれば?」
 エメがお栄を連れて入ってくる。
「オー! 与吉さんの奥さんではないでーすかー?」
 お栄はゼニガタに駆けより叫んだ。
「親分さん。私に小太刀を渡したのは、紫色の髪の男です! 黒髪の娘さんではありません」
「なんですって?」
 ゼニガタが青ざめる。
「しかし……お奉行様は」
「お奉行様の真意は分かりませんが、こんな乱暴な審議を葦原の重臣の後継ぎになるかもしれない方にするとは……葦原藩に話が伝わればどうなるか見えている」
 蒼の言葉にゼニガタはますます青ざめた。
「葦原の重臣の後継ぎ? あの娘さんが? そんな事聞かされておりませーん」
 その言葉に、蒼はエメを見た。
「どう思いますか? エメ様」
「これは、やはり関係者全てが奈落人に支配されている可能性がありますね」
「私、お奉行様に問いただして来まーす」
 ゼニガタはドリルを捨てると、拷問部屋を飛び出した。
「……今のうちだ。逃げよう」
 エメはコアを繋いでいる鎖を解こうとした。が、その時、
「ご苦労な事だな」
 声がして、でっぷりとした男が現れる。その後ろから、もう一人別の男が。どこかで見たような顔だ。
「腹黒大膳……それに柳川吉安!」
 蒼が叫ぶ。
「やはり、君たちが裏で糸を引いていましたか」
 エメの言葉に冷笑を浮かべ。
「左様。竜胆が真犯人でない事ぐらい、分かっておる」
 と、腹黒は言った。
「この度の事は、刹那様を日下部家の跡取りに戻し、我らも元の地位に戻るために考えた事」
 柳川が言葉を続ける。腹黒と柳川は前回の一件以来、お役御免になり蟄居を申し付けられていた。
「なんて、卑怯な……。お奉行様に訴えます」
 蒼の言葉に、
「無駄だ。奉行も奈落人に操られておる」
 腹黒は答えると、
「この者達を捕らえよ。竜胆と同じように処刑してやる」
 と、配下の者達に命令した。

 その時。

「もうよせ、大膳」
 声がして、紫色の髪の青年……刹那が現れた。
「刹那様」
 大膳が驚いて叫ぶ。
「なぜ、ここに」
 すると、刹那は答えた。
「邪鬼ヤーヴェは、封じられた。藤麻の手によってな」
「封じられたですと? しかも、藤麻様の手で?」
「そうだ」
 声とともに藤麻が姿を現す。その後ろには竜胆も……。
 それを見て青ざめる腹黒と柳川。
「大膳、私は正気に戻ったのだよ。奉行も今頃は正気を取り戻しているだろう。お前達の居場所はもうない」
 刹那の言葉に二人はがっくりと、うなだれた。