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【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ

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【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ
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リアクション

 ツァンダの森林公園。
 クロ・ト・シロ(くろと・しろ)は呆然と立ち尽くし、目の前にそびえる苦難に戦慄していた。
「……クソっ、畜生め」
 今、オレの眼前には途方もない壁が立ち塞がっている。仰ぎ見る事すら躊躇われる程の巨大な壁だ。
 軽い気持ちでオレが挑んでしまった……オレの『敵』だ。
 最初はほんの出来心だったんだ。誰にでも出来るような簡単な事……。
 そう、人間にも出来る簡単な事を、猫であるオレが出来ない訳がないと、そう思っていたんだ。
 その結果がこれだ。ただ目の前の敵を相手にして、呆けたように眺める事しか出来やしない。
 いや、諦める事も出来る事は出来るんだ。ただちっぽけなオレの自尊心が、それを邪魔するんだ。
「絶対に諦めて堪るか、人間に出来てオレに出来ない筈がない!!」と、心の中で吼えるんだ。
 再度眼前を見直せば、『敵』は未だ顕然とそこに聳えていた。
 そうだ、これは試練だ。過去に打ち勝てという試練とオレは受け取った。
 猫の成長は、未熟な過去に打ち勝つ事だとな。
 お前もそう思うだろう、クロ・ト・シロ。覚悟はいいな。オレは出来ている。
……さっきから自販機の前で何をしているんです?
 相棒のラムズ・シュリュズベリィ(らむず・しゅりゅずべりぃ)は怪訝な顔で尋ねた。
 身長102cmのクロにしてみれば、自販機と言えど立派な巨大な壁である。
「やっべww丁度良いわ、ラムズwwwちょっと跪けよwwwww」
「はい?」
 イラッとする口調で言うクロと自販機を見比べ、なるほど、と頷いた。
「ああ、買いたいってことですね。でしたら私が押せば……」
「ばっかwwオレが押してぇんだよwww言わせんな恥ずかしいwww」
 はいはい……と肩をすくめ、クロを肩車する。
「サンキュwwww……うぉら!」
「ちょ、自販機を蹴らないで下さいよ」
「うっせwwww良いから飲み物取れよwww」
 午後の昼下がりっぽい……かどうかは不明だが、そんなやりとりをする二人である。
 その様子を少し離れたところから、茅野瀬 衿栖(ちのせ・えりす)がベンチに座って見ている。
 パートナーとともに、公園をぶらぶらしていた彼女だったが、パートナーは電話で席を外しているようだ。
「うーん、いい天気……。ツァンダにもこんな場所があるなんて知らなかった……」
 空を仰ぐ衿栖……と、その目に、見覚えのある人影が映った。
と、トリニティさん!?
 驚くのも無理はない。
 その人物とは、なんとナラカエクスプレスの車掌【トリニティ・ディーバ】だったのだ。
 ナラカの冒険の道先案内人だった彼女だが、全てが終わった今、再び会えるとは思ってもみなかった。
 しかし、頭にウサ耳を付けてるのはなんなのだろう……。
「トリニティさーん!」
 声をかけたが、彼女はしきりに時計を気にして、駆け足で前を過ぎていく。
「まさか二度寝してしまうなんて……不覚でございます……!」
「ま、待ってー!」
 慌てて追いかける衿栖。
 と、勢い余って前から来た通行人にぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさい……!」
「いや、俺は大丈夫。それより怪我しなかったか?」
 通行人……風祭 隼人(かざまつり・はやと)はそう言って、尻餅をついた彼女を助け起こした。
「すみません……。懐かしい人が通り過ぎて……それで急いで追いかけてて……」
「気にしなくていいって。でも、ちゃんと前見ないと危ないぞ」
 衿栖はペコリと頭を下げ、また駆け出して行った。
「さて、俺たちも行くましょうか、ルミーナさん」
「ええ」
 隼人の言葉に、傍らのルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)は微笑む。
 2人は病気で寝込んでしまった友人の見舞いに行く途中。いや、厳密に言えば2人ではなかったが……。
「おーい、待ってくれ!」
「このクソ親父……」
 KYなテンションで、2人の間に割って入る風祭 天斗(かざまつり・てんと)
 保護者同伴で歩く公園はなんとも気まずい。頼むから2人きりにしてくれ……と隼人は必死に視線を送る。
 だがしかし、そんなデリケートな対応が出来るなら、最初っからこの親父はここに来てない。
「ほら、スーパードクターから薬を貰ってきたぞ。風邪なんざコイツで一発だ」
「薬……って、スーパードクターは内科じゃなくて、精神科だろ? なんの薬貰ってきたんだよ??」
「リア充夫妻の見舞いに行くと言ったら、快くこの『病気のない世界に行ける薬』をくれたぞ」
「……おい、瓶にドクロマークが付いてんじゃねぇか!」
な、ちょっと洒落てるよな
洒落てるとかじゃねぇ! 完全にあのドクター抹殺にかかってんじゃねぇか!
 隼人はビシィと人差し指を突き付ける。
「つーか、その格好はなんだよ! なんで防毒マスク着用なんだよ!
「だって病人のところに行くんだぞ。大人なら健康に気をつけるのは当然のことだ。さぁおまえも付けろ」
「失礼すぎんだろ!」
 マスク片手に迫る天斗の肩を、不意にポンとお巡りさんが叩いた。
「そんな格好で何やってるの!」
「お、お巡りさん……俺は見ての通り、決して怪しい者じゃ……」
「むむっ? ちょっとなんですか、この怪しい薬は?」
「それは病気の友人に持っていく薬で……」
「何言ってんの、完全に毒薬だよ、これ! 詳しい話は交番で聞くから、ほら一緒に来なさい」
「ええー! だから誤解だって……隼人、おまえからもなんとか言って……ってうええ!?」
 既に彼は他人のふりを決め、先を急いでいた。実に賢明な判断である。
「あの、放っておいて大丈夫なんですか?」
「なにひとつ問題ありません。先を急ぎましょう、ルミーナさん」
「隼人ぉ〜〜〜!!!」
「あーあー聞こえない聞こえない」