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刮目! アイドル大喜利!!

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刮目! アイドル大喜利!!

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会場にアナウンスが流れる。

「第3試合の結果は ……チーム若草は座布団6枚。

 若松プロデュースは座布団5枚ゲット。

 ここまでのトータルはチーム若草11枚! 対する若松プロデュースは9枚です!

 これから始まります第4試合で結果が決まりますね! 

 第4試合、司会はアナウンサーの私が勤めさせていただきます」

両者の座布団獲得数は僅差。第4試合出場の面々に緊張感が走る。

「それでは先攻、若草グループの一番手はネル・マイヤーズさんです」

「よろしく頼む」

実直な大度で挙手するネルを舞台袖から見やり、斎藤 邦彦(さいとう・くにひこ)は感慨にふけっていた。

(しっかしネルやりやがったな。こんな大舞台に立つとはたいしたやつだ。

 そそのかした ……もとい、推薦した者として鼻が高いわな

 今後はその勇姿を客目線として見守らせてもらおうじゃないか)

「私は【お題:なぞかけ】で行かせてもらう。アナウンサーとかけてトローチと解きます」

「アナウンサー。私と同じですね ……その心は?」

「どちらも噛んではいけません」

「確かにアナウンサーがかむのは大変まずいです。

 のどのお薬も噛んでしまうと効き目がありませんね。座布団2枚差し上げます!」

ネルは輝くような表情で肉体美を誇示するようなガッツポーズを取った。そしてマイクを手にして、

「で、次、斎藤 邦彦が参ります」

と言った。そして舞台袖にすたすたと歩いてゆき、邦彦の手をつかんで舞台中央へと何ごともなかったかのようにまたすたすたと戻ってくる。あわてたのは邦彦だ。

「お、おい、ちょっと待てってネル、何故俺まで壇上に上げる!
 
 止めろ、俺はそんな目立つ所に立ちたくないっ!」

「……私をこんなにした責任をとれ」

「ちょっ、待て!! 誤解を招くようなことを言うな。

 ……仕方ない。まぁ相棒として手伝い位はするかね」

「それでは斎藤 邦彦さん、よろしくお願いします!」

アナウンサーがにこやかに言う。

「あー。 ……では俺は、【お題:名前であいうえお作文】で。

 さ:ぁ行くぞ

 い:文化体験海外旅行

 と:うちゃくしたら

 う:とうとします

 ……こういうのってさ、行くまでが疲れちゃうよな」

会場からざわざわと賛同の声が上がる。アナウンサーもそういった経験があるようだ。実感をこめた口調でしみじみと言った。

「そうですねえ。やはり長時間じっとしていなくてはならないと言うのは疲れますね。

 座布団1枚差し上げましょう!」

ネルと邦彦は、無言で手を打ち合わせた。

「それでは周防 春太(すおう・はるた)さん、お願いします!」

 見かけは銀髪の童顔の少年と言った風情だが、実は男友達の間ではエロ春太で通っている。とはいえ春太は女性にはからっきし弱い。ネルの支持理由も、実は彼女が一番いろいろな意味で色っぽいからだったりするのだが、そんなことは本人に向かっては口が裂けても言えないのである。

「えー、周防 春太こと、他他亭温太です〜。

 僕は【お題:なぞかけ】でいきます!

 サイコロとかけてケンカした恋人と解きます!」

「サイコロと恋人ですか。またずいぶん違うもの同士ですねー。その心は?」

「どちらも振りたくなります」

「うーん。これは、ケースにもよるでしょうが。 ……クールを通り越して冷たいですねー。」

 冷たい君には、冷たい床に座っていただきましょう。座布団1枚没収です」

「うーん。外しましたかー」
 
リュートがすたすたとやってきて、すぱっと座布団を没収してゆく。確かに木の舞台床は冷たかった。

「さてお次は木本 和輝(きもと・ともき)さん。どうぞー」

「アイドルとテレビに出れると聞いてやってまいりましたー!

 通り雨とかけまして、告白ととく、その心はと申しますと……。

 ふられました、温めてくれると嬉しいです」

ここで一旦言葉を切り、よよよと泣く真似をしてみせる。

「そんな木本 和輝こと遊亭 寿悟朗(あそびてい としごろう)です。よろしくお願いします」

「自己紹介から謎かけ行きますか」

「はいはい、本編入ります。【お題:なぞかけ】で参りましょう。

 ええ、歳とかけまして、化粧と解きます」

「トシとお化粧ですか。なんだか不安な気もいたしますが、その心は?」

「とってもとってもきれいです」

ここでにっこりと微笑んでみせる和輝。会場の女性たちから熱狂的な拍手が送られる。

「おおーっと、広告のキモ、女性の心を見事に捕らえたようです!

 紹介の謎かけとあわせて、座布団2枚差し上げましょう!」

(やったああああああああああああ!!!!!!)

クールにそつなく軽く一礼して見せながら、和輝は内心は飛び上がって喜んでいた。

「それでは若草グループの出演はここまで。後攻、若松プロデュースへとバトンタッチいいたします。

 一番手、イランダ・テューダー(いらんだ・てゅーだー)さんです!」

イランダとももたろうが出演すると言うので柊 北斗(ひいらぎ・ほくと)姫月 輝夜(きづき・かぐや)を伴って大喜利を見に来ていた。もっとも輝夜は席につくなり丸くなって寝てしまい、実質見ていたのは北斗だけなのだが。

「輝夜、イランダが出るぞ」

北斗は寝ている輝夜を突っつく。面倒くさそうに輝夜が薄目を開け、朦朧と舞台を見やる。

「はーい、イランダ・テューダーこと伊蘭舵です!

 よろしくお願いします!」

イランダがマイクを手に、本題を言いかけた瞬間、とことこと進み出てきたよいこの絵本 『ももたろう』(よいこのえほん・ももたろう)が、マイクを奪った。

「い:いつもイランダさんが北斗さんに、

 らん:乱暴なことをしてしまうのは

 だ:大好きな気持ちの裏返しで……」

「ちょっ!!!! なにを言うのよっ!!!!」

まさにイランダにとっては爆弾宣言である。イランダの投げた座布団が直撃して転倒し、舞台に額をぶつけて昏倒するももたろう。イランダが早口でまくし立てる。

「も:もちろんそんなワケないでしょ!

 も:妄想も

 た:たいがいにしないと

 ろ:ロープで縛って
 
 う:海に捨てるわよっ!!!!!」

真っ赤になって涙目のまま、いたたまれない思いでじたばたするイランダ。北斗は頭を抱えた。

(まったく……。俺が異性にもてるはずがないだろう。 ……イランダとはただのパートナーだって。

 なんだってこんなドタバタになるかね……)

北斗以外には、イランダのうろたえようは自明なのであるが、一人気づかぬは思われ人、なのであった。舞台上の騒ぎと、それ気にする北斗の渋い表情を見て、輝夜は朦朧としたまなざしのまま肩をぽんと叩くと、再び体を丸めて寝入ってしまった。舞台上から下ろされたももたろうが、医師の手当てを受けている。

「……なんだかちょっと気の毒なことになっているようですが。 

 ……ももたろう君の命に別状はないようです。ちょっとぶつけたところが痛むようですが。

 それにしても、きちんとあいうえお作文となっていたやり取りはお見事。座布団3枚を差し上げます!」

喜んでいいのか、怒っていいのか。イランダは複雑な表情だ。

そしてそのころ。
舞台端のほうで待機していたマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)は、ラスト出演とあって緊張していた。TVでよく見る大喜利に、ぜひとも参加したいと思い出演を申し出たのだが、思いがけず締めの大役となったのである。

(……大喜利は楽しい! しかし……。 なかなか良いアイデアなんて浮かばないのだ)

そんなマナをすでに出番を終えた、マナの側仕えでもあるシャーミアン・ロウは、じっと見つめていた。

(マナ様が回答を導き出すのに苦慮されている御様子! ああ、何とかして差し上げたい!)

が、言葉に出しては、こう囁いたのであった。

「大丈夫、マナ様ならきっと素敵なアイデアを思いつかれるはずです。

 マナ様の方がアイドルなんかより、断然賢くてカワイイということを証明するのです!」

「若松プロデュース、トリを勤めますのはマナ・ウィンスレットさんです!」

マナは深呼吸をひとつして、すいっと挙手をした。

「マナ・ウィンスレットこと、ちびっこドラゴニュートでございまする。

 【お題:なぞかけ】で参りますっ!!

 『現状』とかけて『閉店間際の寿司屋』」と解きます!」

「閉店間際の寿司屋ですか。しかしてその心はっ!?」

マナはここで、すいっと姿勢を正した。

「その心は、そろそろネタが尽きそうです」

会場がどっと沸いた。

「これはトリをしめるのにふさわしい謎かけでしたねー!

 お見事! 座布団3枚差し上げましょうっ!」

座布団3枚をゲットしたマナが照れくさそうに微笑み、ロウは飛び上がってわが事以上に喜んでいる。