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THE RPG ~導かれちまった者たち~

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THE RPG ~導かれちまった者たち~

リアクション

「ほう……。このカジノで50億VGを賭けて勝負したいですって? 面白いじゃないですか」
 カジノタウンを仕切る闇社会のドン、戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)はやってきた勇者たちにニヤリと笑いました。
 彼は、両端に美女をはべらせ、豪奢な部屋で勇者たちを出迎えます。
 部屋の脇には屈強なボディーガードたちが威圧的に並んでおり、まさに大親分といった風格。
 いかにもまともな職業の人間ではなさそうですが、それだけにお金は持っていることでしょう。勝てば本当に50億VGくらい払ってくれそうです。が……。
「そちらは何を賭けてくれるのですか? 失礼ですがね、お嬢さん方。もし負けたら、あなたたちを風俗に沈めても回収できない額ですよ、それは。くっくっく……」
 オルフェリアたちをじろじろと眺め回し、残虐そうな笑みを浮かべる小次郎。
「……う」
「とはいえ、挑まれた勝負を逃げたとあっては、このカジノの沽券にも関わるところです。どうでしょう、ここは一つ命をかけた死闘を演じてもらうというのは」
 ドン・小次郎が提案するには。
「このカジノの目玉、闘技場で戦ってもらいましょう。掛け率によって危険度の異なる相手と死闘を繰り広げてもらい、それの勝利によって賞金を支払います。もちろん強力な敵ほど倍率も高く、勝つのは困難でしょうけどね。なに、ご心配は無用です。死んだら強制的に復活させてかかった金額を借金として背負わせ、これを稼ぐまで闘技場から出れなくすると言うサービスまでおつけしますよ」
「……やめておきましょう。そんな危険を冒し見世物になってまで、大金を稼ぐ必要はないです」
 と島井は一行に言います。もし負ければ借金漬け。冒険どころではなくなります。
「……ほう。それもまたよしですね」
 小次郎は穏やかに頷きます。しかし、血気にはやる他の者たちは黙ってはいません。
「50億VG、本当に用意されているんでしょうね?」
「もちろん。勝てばそれだけの賞金を支払える準備はできていますよ」
 いやらしい含み笑いを絶やさない小次郎に、勇者たちは言います。
「ならば、受けて立ちます。こんなところで怯んで立ち止まっていては勇者ではありませんし、こんな悪党を野放しにしておくほど腑抜けでもありませんから!」
「悪党とは人聞きの悪い。ですが、参加は大歓迎です。さっそく戦いの準備をしましょう。くくく……」
 小次郎の指示によって、舞台が整えられます。
 ギャンブルをしに来ている客たちの前で、勇者たちは闘技場で戦うことになりました。
「大戦は、一対一でも複数モンスター対勇者パーティ(ただし四人)でも構いませんよ」
「まずは、様子を見てみましょう」
 彼らは、もともと協力し合って力を発揮するタイプです。集団戦闘を選びます。
「ふふ……。でしたらこちらも様子見で、易しい敵から出してあげましょう。なに、たかが山賊団ですよ。いかにもザコ敵でしょう」
 小次郎の紹介で敵が出現します。
 さあ、戦闘開始です。

 モンスターが現れた!
 盗賊ボス   1匹
 盗賊子分   4匹

 盗賊ボスの攻撃。
 ……。
 勇者たちは死んでしまった。
「……え?」
 残ったみんなあっけにとられます。強すぎです。盗賊ボス。
「どうした、もう終わりか?」
 盗賊ボスとしてククク……と笑みを漏らしたのは、計画を持ってカジノの小太郎に雇われていたオルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)です。
「なに、心配することはない。俺は黒狼盗賊団の頭オルフィナ・ランディだ。たかが、盗賊団だよ。お前たちが本気を出せばイチコロさ」
「そ、そんな……」
「おやおや、こんなことでは先が思いやられますね」
 小次郎は、雇ってあった神父を呼び、死んでしまった勇者メンバーを蘇生させてから、向き直ります。
「賭けを続けましょうか。ちなみに、倍率はこうです」
 
 オルフィナ・ランディ&盗賊団     2倍
 勇者たち               15倍

「見物のお客様にも賭けてもらっていますが、あなたたちは彼女に勝つだけで15倍の金額が手に入るのです。これを繰り返すだけで所持金は見る見る50億VGに! 簡単でしょう? 」
「……」
「ご来場の観客たちにも、賭けを楽しんでもらいましょう。では……スタート!」
「……!」
 
 ……勇者たちは全滅した。
「……あうう」
 これは何とかしないといけません。もっとパーティー編成と戦術をよく考えて……。
「蘇生のための費用は借金としてツケておきますよ。さあ、次は、ランディさんには少し休んでもらって、魔王軍のモンスターです」

 チョウブッコロシ  3匹    2倍
 勇者たち            8倍

「……え?」
 皆は驚きます。
 データブック(?)によると、目の前のモンスター、ラストダンジョンに出てくる強敵ではありませんか。強烈な吹雪を吐いたり、おかしな特技を使ったりしてきます。
 これはマズいです。まだLVの上がりきっていない勇者たち一行にとっては倒せる確率の低い相手です。
いったい、このカジノはどこからこんなモンスターを呼んできたのでしょうか?
「私は私なりにコネがありましてね。でないと、カジノのボスなどやっていられません」
 と小次郎。

 ……勇者たちは全滅した。
「どうしよう、このままでは……」
 と……。
「考えなさい。あなたたちはどうすべきか。勝ってもいい、でも勝たなくてもいいのです」
 ふと、勇者たちにささやきかける声があります。
 後ろを振り向くと、物陰に隠れるように様子を見ていたセフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)が微笑んでいます。悪意のある笑みではなく、何かを伝えようとする笑み。
「戦い続けるだけで道は開けるかもしれませんよ。大丈夫、私がついています。思い切って死んできなさい」
「いや、死んできなさいって……」
 そんなことを言っているうちに、またしても敵が現れます。
 またラスダンで登場するモンスターのようです。

 ……勇者たちは全滅した。
 
「ふははははっっ! お客様たちも大喜びです。前途有望な勇者たちが苦心する様は、見ていて気持ちがいいですね!」
 特等席で美女をはべらせて高笑い。ドン・小次郎、ナイスな悪党ぶりです。魔王軍の幹部のあぶれ者たちを高額の報酬で募り開催しただけのことはあります。
 観客からの賭け金もあってウハウハです。
 勇者たちは何度闘っても勝てません。おのずと借金も膨れ上がっていきます。
 イベントとはいえひどい扱いです。
 ああ、どうしましょうか……。
「……しかし、そろそろ飽きてきましたよ。もう終わりにしましょうか」
 勇者たちは奴隷商人にでも売り飛ばして……、それはそれで新たな冒険になるでしょう。奴隷として十年働いた主人公もいることですし。そんなことを考えている時でした。
「ボス、大変です。お客様の中で大勝している方が!」
 子分が血相を変えて駆けつけてきます。
「どういうことですか?」
「この闘技場で客として1億VGを賭けておられる方がいるのです、勝ち続けているモンスター側に! それが倍々に膨れ上がって……!」
「なんですって!?」