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【冬季ろくりんピック】イコン スキージャンプ(生身もあるよ!)

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【冬季ろくりんピック】イコン スキージャンプ(生身もあるよ!)

リアクション


■生身部門・個人戦 序盤戦
 ――雪真っ青な空と明るい太陽が大地に積もるたくさんの雪を臨んでいます。ここ、冬季ろくりんピック・スキージャンプ特設会場ではこれより始まる、生身部門の演技を観客の皆さんは今か今かと待っているようです。
 実況はわたくしカタリ。総合実況にキャンディスさんを迎え、生身部門・個人戦を始めたいと思います。キャンディスさん、解説のほう引き続きお願いします。
「よろしくネ〜。イコン部門とはまた違った演技が見られると思うカラ、こちらも楽しみダワ。ミーも引き続き、参加者のデータを元にシテ解説をおこなっていくワネ」
 はい、よろしくお願いします。さて、午前中に行われていましたイコン部門とは違い、こちらはイコンには乗らず生身の状態で飛んでもらうスキージャンプとなります。ただルールはイコン部門の時と同じで、要はイコンに乗っているかいないかの違いですね。
 競技開始地点には、こちらも引き続き選手インタビューを担当してくれますのはヴィゼントさんです。ヴィゼントさん、最初の選手の準備が整ったそうですが、そちらの様子はどうでしょうか?
「こちらヴィゼント。生身部門も熱くインタビューしていくつもりだから、観客も実況も心の熱気爆弾をボンバーさせてくれよ! そして現在、競技開始地点にはラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)選手がスノボの手入れをおこなっているところだ。ラルク選手、調子のほうはどうだい?」
「おぅ、絶好調だ! 何事も楽しんだもん勝ちだし、楽しみながら思いっきり飛ばさせてもらうぜ!」
「なかなかご機嫌な返答だ、これを見てるみんなも楽しんでいこうぜ! ところでカタリ、知らせなきゃいけないことがあるんじゃなかったか?」
 あ、はいそうでした。えーとですね、ラルク選手には申し訳ないのですが……招待をしていた西カナン領主、ドン・マルドゥーク(どん・まるどぅーく)氏は外せない公務ができてしまったとのことで会場には来られないようでして。代わりにですが、使者の方から手紙を預かりましたのでそれを読ませていただきます。
『――今回は招待をもらい、非常にありがたかったのだが緊急の公務が入ってしまったため会場へ行けそうにない。カナンの地より心からの応援を送らせてもらおう。聞けば、会場にはバァルも来ているらしいではないか。同じカナンをまとめ上げる領主として一言挨拶をしておきたかったが、本当に残念でならない。ラルクよ、若い者は元気が一番。失敗を恐れず、思い切って飛んでくれ。それでは、これで失礼する。他の選手も頑張るのだぞ!』
 ……とのことです。ラルクさん、本当に申し訳ありません。
「なぁに、気にするなって。手紙の応援だけでも十分だ! うっし、いっちょ頑張るかなー!」
 どうやら、マルドゥーク氏の手紙による応援で気合は入ったようですね。公式のスノーウェアを身に纏ったラルク選手ですが、どうやらスノーボードによるジャンプを行うようですね。
「スキージャンプというよりハ、キッカーと呼ばれるジャンプ台で飛ぶ感じになりそうネ。ビッグエアを期待できるかもしれないワヨ〜」
 それは楽しみですね。さぁいよいよ滑走スタートとなります。
 ――滑走を開始したラルク選手、ある程度の助走をつけてから『ゴッドスピード』を使って加速! 加速したまま踏み切り台へときて――おっと、『風術』を使用してのダメ押し加速! すごいスピードでスピンしながら、高度を高めていく!
 そのまま落下を開始すると共に、さまざまなトリックを決めだしたぞ! ダブルバックフリップ、キャブナインなどの迫力あるスピントリック! そして流れる動きでロデオフリップと綺麗に連続トリックを決め、バランスを重点に置いた着地態勢を取る! そして――滑り止まるようにして無事着地だ! がっちりサムズアップして、渾身のドヤ顔! 楽しみきった表情が見て取れるようです!
 まさにビッグエア、スノーボードジャンプの見本ともいえる演技でした。高さを生かしての連続トリックはこの競技ならではのやり方でしたね。
ラルク選手も実に楽しそうに演技しており、こっちまで楽しい気持ちになりました。きっと審査員の人たちにも伝わってると思います。
 ――さぁ、得点が出ました。ラルク選手の演技の得点は60点です! 基本を押さえた典型的なジャンプだったものの、楽しさがこちらにまで伝わったということで加点されてるようです。生身個人戦、これは面白いことになってきました!


 ……二組目のジャンプとなります。続いての選手はロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)選手。百合園女学院の生徒会執行部『白百合団』の副団長という肩書を持っています。実は競技開始地点に登場するまで姿が見えなかったのですが……ヴィゼントさん、どうなってるでしょうか?
「こちら競技開始地点だ。ロザリンド選手は準備を済ませていつでも滑走スタートできる状態だが……その姿は度肝を抜くだろう。さっきおこなったインタビューじゃ「どこまでできるかわかりませんが、精一杯やりたいと思います」と、やる気あふれるコメントをくれたぜ」
 衣装に注目ですか。百合園の出身なら、その姿も清楚可れ――こ、これは……! ――完全武装! 情報によりますと、狼型機晶生命体“ギフト”が変形した鎧であるウルフアヴァターラ・アーマーを全身に纏い、その手には飛竜の槍と女王のカイトシールドを携えての、重騎士ルックの姿だぁ! 固い、重い、遅い! 3拍子揃った重装槍兵の姿が天に舞おうとしております!
「どうやら上空ではロザリンド選手の使役しているレッサーフォトンドラゴンが待機しているようネ。演技でどのように関わってくるカ、期待しちゃうワネ」
 果たしてどのようなジャンプを見せてくれるのか、楽しみです。さぁロザリンド選手、女王のカイトシールドを滑走路に置き、持ち手の部分に強固な足鎧を着けた足を噛ませて滑走準備完了。そのまま滑走を開始しました!
 武具の重量のせいでしょうか、重力に引かれるかのように自然加速がついていく! そのまま投げ出されるような形でジャンプしたが――これはまずい! 慣性と勢いで空中に飛び出たまではいいが高さが出ない! 重量が重力に勝てていないぞ!
 しかしそれにもめげず、ロザリンド選手は槍を上空に思い切り投げた! 槍は天高く飛び――それをレッサーフォトンドラゴンが口でキャッチした! これはいいコンビネーションです!
 続けて、ウルフアヴァターラ・アーマーが狼形態になる形で分離! へヴィアーマーがライトアーマーへと大胆クラスチェンジ! ロザリンド選手、ロイヤルガードマントを風になびかせながらゆっくりと片手を上げ、着地準備に入る!
 片手が上がるのに合わせ、ギフトを背に乗せたレッサーフォトンドラゴンが口に咥えていた槍を落としました、これがどう影響するのか! 一方のロザリンド選手は重量を生かす安定した着地をしたと同時に――前方の雪に刺さった槍を回収! その穂先を天に向かって掲げ、フィニッシュを決めたぁぁぁ!
 ……重量感を生かし、騎士というものを全面的に押し出したかのようないい演技でした。なによりも使役している龍やギフトとの絆がこの演技を昇華させたといってもいいでしょう。
 このように、千差万別の見せ方をできるのがスキージャンプの醍醐味と言えますね……おっと、得点が出たようです。得点は60点! やはり高さが出なかったのが痛かったか! しかしそこまで低くはならなかったようで、十分な得点と言えるでしょう!


 次の選手の準備が整ったようです。次の選手は幼い氷雪の精霊、ナカヤノフ ウィキチェリカ(なかやのふ・うきちぇりか)選手。チーシャという愛称で親しまれています。
「雪の精霊、というくらいダカラ、こういった競技では有利なのかもしれないワネ。『氷術』でお手製の氷のスキー板を作っての参加らしいケド、どんなジャンプを見せてくれるのカシラ」
 期待したいところですね。ヴィゼントさん、選手のほうはどんな感じなのでしょうか?
「ああ、こっちは気合十分といったところだ。特に背中の羽の手入れを念入りにおこなっていて、競技時はそれを使うと予想される。なんにせよ、精霊が冬空へジャンプする姿をばっちり見ていってくれよ!」
 はい、ありがとうございます。それでは、競技開始の時間となりました! 雪の精霊ナカヤノフ選手はどのような演技を見せてくれるのでしょうか?
 滑走開始と共に、『地獄の天使』を使っての加速だ! そのスピードはどんどんと上がり、ナカヤノフ選手の羽が剥がれ落ち、骨格が見え始めてきている! そしてそのまま踏み切り台から飛んだぁっ!
 空中へ飛び出たナカヤノフ選手、どうやら『地獄の天使』を解除した模様です。そして最高高度のところまでは特に何もしない! 加速のおかげで高度は保てているものの、どういう考えでしょうか!?
 最高高度を通り過ぎ、下降を開始――っとぉ、ここで『ブリザード』だ! 雪の精霊の本領発揮、氷の嵐を呼びだして……それを羽の部分に覆っていった! ――これはすごい! 剥がれた羽を氷の嵐で一気に再生し、元の純白な羽を取り戻していった! 荘厳な雰囲気を持たせる白き羽を纏ったまま、ナカヤノフ選手……今、フィニッシュです!
 おおっと、着地を決めたナカヤノフ選手、ブイサインと共に『歴戦の必殺術』顔負けのクリティカル笑顔! 会場の観客たちもその笑顔に一撃必殺されております!
 いやぁ、見事な翼再生術でした。これも雪の精霊ならではの技なのでしょうか? 『地獄の天使』と『ブリザード』をうまく使った綺麗な演技だったと思いましたが、技数が少なかったのは少し気がかりです。
 ――さて、得点が出ました。その得点は70点、どうやら先ほどのクリティカル笑顔で堕ちてしまった審査員が何人かいた模様ですね。もちろん、それとは別にジャンプの高さも評価してあるようです。


 四番目の選手はリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)選手です。先ほどのナカヤノフ選手の契約者であり、パラミタ大荒野をうろうろ旅しているという変わった経歴を持っているようですね。
「Mサイズ以上のイコンに対してトラウマを持っているようネ。遠目からなら大丈夫とのことなんダケド、さっきのイコン部門はどんな気持ちで見ていたのか気になるところヨ」
 応援席にはパートナーの一人であるカセイノ・リトルグレイ(かせいの・りとるぐれい)さんが応援に来ているようですね。ナカヤノフ選手の時にもその姿が確認されております。
 果たしてどんなジャンプになるのでしょうかね。ヴィゼントさん、競技開始地点の様子はどうなっていますかー?
「あー……とだな、リリィ選手は少し落ち込んでいるようだ。さっきカセイノさんをここへ呼んで、なにやら策の協力を懇願したり泣きついたり卑怯な手段を看破されたりしてたんだが、結局断られたようだ。そのせいか、リリィ選手のテンションは下がっているようだな。元気づけたいところだが、そろそろ競技開始時間っていうから、非常に歯がゆいぜ……」
 わかりました、ありがとうございます。となると、無策で挑む感じなのでしょうかね? ちょっと不安ではありますが……それでも時間は無常です、競技開始時間となりました。リリィ選手、不安な面持ちのまま滑走を開始――。
 ……ああっと!? 何やら空が割れたっ!? そしてそこから『何か』がリリィ選手のほうへと降り注ぎだす! これは一体どういうことだ!?
 これは……『崩落する空』です! しかしリリィ選手はこの技を登録してはいないはず。――となると、これは競技妨害でしょうか!
 競技妨害の可能性が出た、ということでルシェイメアさんが上空から発動者を探していますが――おおっと、そんな中リリィ選手は意を決した表情で滑走を始めた! 『崩落する空』に対して『女王の加護』『歴戦の防御術』『キュアオール』で自らの怪我を抑えながら滑走、ジャンプ! なんという特攻演技だ!
 だが『崩落する空』によって降り注がれる『何か』の光を味方に付けたまま下降し、そのまま着地! それと同時にリリィ選手、『バニッシュ』を使って地上の雪を一斉に清め、輝かせていく! これは神々しい! 世紀末に突如として現れた聖女を体現しているかのようだ!
 ――えー、『崩落する空』でだいぶダメージを受けたと思われるリリィ選手ですが……スタッフの方に対し、どうやら無傷を装っているようですね。ただ、すぐに看破されたのか陽一さんの待つ救護テントへと運ばれていく様子です。
 また、『崩落する空』を競技者に対して使った人はどうやらカセイノさんだった模様です。リリィ選手の無事を確認しようとした着地地点へ来たカセイノさんへ実行委員会からの厳重注意はいたしましたが、演技でもともと行う予定だった、というリリィさんの証言もあり、放免の形となりました。観客の皆様、テロなどではありませんでしたのでご安心ください。
 えー、得点が出ました。リリィ選手の得点は50点です。忍耐のジャンプは評価されたようですが、今回のトラブルのこと、そして空中での技が少なかったという点から減点がされたようですね。


 ――会場の皆様へお知らせします。先ほどの『崩落する空』の影響でジャンプ台に少々の被害が出たようなので、それの修復と着地点整地が終了するまで競技は一時中断されます。楽しみにされている方は非常に申し訳ありません。すぐに終了いたしますので、少々お待ちください。それでは、ここで一度CMです。