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春爛漫、花見盛りに桜酒

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春爛漫、花見盛りに桜酒
春爛漫、花見盛りに桜酒 春爛漫、花見盛りに桜酒

リアクション

「留学って言っても、あまりたいした思いではないんですよ?」
「でも、知らないことがいっぱいあるでしょ」

 榊 花梨はむぅ、とした顔でニーフェ・アレエに詰め寄った。黒猫のリンも同意したようににゃーんと、返事を返す。

「まぁまぁ、そんな尋問みたいに詰め寄らないの。ただ、思い出話とかでもいいんだよ」

 五月葉終夏がフォローをしながら、その横でディオネア・マスキプラが崩城 亜璃珠にもふもふされながら鼻歌を歌っていた。

「新しい歌覚えた? 地球の歌とか!」
「どんな本を読んだとか、そういうのでもいいのよ?」
「うーん。JPOPというのとか、アニソンもたくさん聞きました。日本のアニメをたくさん見てきましたよ。日本の百合園女学院の人たちはみんな優しくって……私たちは勉強だからってたくさんのアニメとか見させてもらえたんですよ」
「お嬢様学校だから、普通ならしてくれないかもね」

 崩城 亜璃珠がくすくす笑いながら相槌を打つと、小鳥遊 美羽がそれならそれなら、と口を挟む。

「ね、アイドルソングとかは? ニーたんも興味持ってくれた?」
「はい! でも、私美羽さんや葵さんの歌のほうがずっと好きです!」
「わぁ、嬉しいな! それなら、今度3人でカラオケいこうね!」

 秋月 葵がニコニコしながらニーフェ・アレエの手をとって指切りをする。

「新しいクッキーですよ〜」

 ネージュ・フロゥができたてのクッキーを手に、話に花が咲いているところへと腰掛ける。

「このクッキー、とってもおいしいです!」
「桜酒の茶葉って、本当に甘い香りがして素敵な味がするよねぇ」
「それにしても、ニーフェもとてもよく食べるのね」

 イリス・クェインが桜酒を飲みながら、思い出したように呟いた。
 先ほどから大食漢に囲まれているから目立たないが、大食いとまでは行かないがかなりの量を食べ続けているような気がする。

「そ、そうですか?」
「いくら食べても、ここの肉は増えないからなぁ」

 毒島 大佐が脇の肉をつつくが、引き締まった機晶姫の体つきは以前と変わらない。

「そ、そんなことありませんよ。少し太っちゃったと思います……一生懸命剣の練習で搾っているつもりですけど……なかなか体重が落ちないんです」
「それなら、今度弓の稽古に付き合いませんか? 弓も身体全体を使いますから、いい運動になりますよ?」

 ディアーナ・フォルモーントからの申し出に、目を輝かせながらニーフェ・アレエは頷いた。

「あ、でもニーフェ、その前においしい喫茶店でケーキバイキングが先だよ?」
「あたし達といくの、忘れないでね?」

 ノーン・クリスタリアとルーナ・リェーナの言葉に、「もちろん!」と言葉を返していた。

「ニーフェもお友達が増えましたねぇ」
「ツヴァイさんも大事な親友ですよ!」
「当たり前です。ニーフェの妹キャラの先輩として、大事にしてもらわないと」

 ラグナ ツヴァイはそういってクス、と笑うとニコニコするニーフェ・アレエの頭をなでてやった。少しばかり、お姉さんのような気分になってラグナ ツヴァイはいつも以上に優しい微笑を零していた。






「ルーノさん、大丈夫ですか?」
「アイン、大丈夫です。少し水を飲んだら落ち着きました」

 ラグナ アインに頭につめたいタオルを乗せてもらいながら、ルーノ・アレエは苦笑した。

「すみません、お恥ずかしいところを」
「いやいや、まさかルーノがあんな風になるなんてな。ソアと酔っ払い方が一緒だぜ」
「もう!ケイったら! でも、頭痛かったりしませんか? 無理しないで下さいね?」
「ふふ、大丈夫ですよ。ソア・ウェンボリス。緋桜 ケイも心配してくださってありがとうございます」

 緋桜 ケイとソア・ウェンボリスから水の入った新しいコップを受け取りながら、ルーノ・アレエは笑みを返していた。そこへ、柔らかなクッションを持ったメシエ・ヒューヴェリアルが現れ、ルーノ・アレエの腰のところへとおいてやる。

「少し、もたれかかるといい。身体が楽になるはずだ」
「ありがとうございます」
「本当にレディ扱いしてるんですね」

 いまだネコミミメイド姿の榊 朝斗が氷水を補充しに来ると、ルシェン・グライシスが冷たいデザートを持って現れた。それに付き添って、アイビス・エメラルドが心配そうな表情で覗き込む。

「大丈夫ですか?」
「ええ。ありがとう、アイビス・エメラルド……。あ、そうだ」

 荷物の中から、オルゴールを取り出す。箱を開けると、あの曲が入ったオルゴールだった。

「アイビス・エメラルド。あなたと一緒にこの歌を歌いたいと思っていたんです」
「え、私と、ですか?」
「あとでニーフェと、いっしょに歌っていただけませんか?」
「はい、勿論です!」

 ルーノ・アレエの手をとり、にこやかにアイビス・エメラルドは微笑んだ。カチュア・ニムロッドがひざ掛けを駆けてあげると、六本木優希と霧島 春美が心配そうな面持ちで現れた。

「大丈夫ですか?」
「お酒の飲みすぎで、倒れたと聞きましたが……
「はい。お恥ずかしいです、六本木優希。あ、それと先ほどは素敵な演奏を、ありがとうございます。霧島春美」
「いいえ。あのくらいはたしなみですよ。それにほとんど終夏さんに助けてもらいました」

 照れ笑いを浮かべながら、探偵の装いのままである霧島 春美は、ルーノ・アレエの表情をじっと見つめた。

「どうかしましたか?」
「いいえ。さっきディオも言っていたけれど、本当に表情が柔らかくなった気がします。地球での経験が、よい方向に向かったんですね」
「ええ。私は……ニーフェの付き添いのつもりでしたが、とても楽しい日々を送ることが出来ました。パラミタにある書物も膨大ですが、地球にある文献も大変勉強になります。そして、自分が何者であるかということを一旦置いて、世界を見ることにしたんです」
「世界?」

 ルーノ・アレエはこくん、と頷いた。

「私は、自分のことや、自分の周りしか見えていなかった。ほんの少し目を上げるだけで、みんなが見ているものまで見えた。その時、私が悩んでいた些細なことや、みんなが私を思ってくれることの大事さを改めて感じられたのです」

 呼吸を置いて、ルーノ・アレエは胸元に手を当てて、小さく呟く。

「私の胸の機晶石は、滅びを齎すかもしれない。でも私がたくさんの時間の中で、経験をした中で、出会った仲間がいて……出会うことが出来なければイシュベルタとは和解できなかった。エレアノールと再会できなかった。ニーフェを知らずに過ごすところだった……自分の存在の小ささを改めて考えさせられたのです」

 六本木優希はクス、と笑ってルーノ・アレエの手をとった。

「人にできることは、些細なものだと思います。だけれどそれを知る人は、とても少ない。ルーノさんは、とても貴重な体験をしたのだと、私も思います」
「ありがとう。六本木優希」
「さて、それではまた私のヴァイオリンで皆さんで楽しい時間を始めましょう! ルーノさん、オルゴールを開いてください!」

 そういうが早いか、楽器を取り出し楽しげなメロディを奏でる。
 それは、アレンジされたあの歌だ。オルゴールの音を殺さないように、先程より少しゆったりした印象を受ける。

「この歌、一体何の歌なんですか?」

 リース・エンデルフィアが小首を傾げて問いかける。それに対して、霧島 春美は胸を張って答えた。

「ルーノさんたち家族の歌。とても素敵な希望の歌なんです」
「アイビス・エメラルド」
「はい。ああ、それならニーフェさんも呼びましょう」
「みんな呼んで! そしたら写真を撮るから! お願いね?」

 ルカルカ・ルーが号令をかけると桜春の宴に参加しているほとんどのものが集まり、集合写真を撮った。カメラを持っている面々がかわるがわる撮影をする。その間も、互いに笑いあい一時の平和を楽しんでいた。