波羅蜜多実業高等学校

リアクション

　
　
『さあ、早くもリトルシルフィードが撃墜されました。ある意味、当然の結果と言えば当然の結果です。
　戦いは、その後、各機距離をとって様子をうかがっているようです。
　すでにアペイリアー・ヘーリオスはステルス機能をアクティブにして姿を隠しています。
　次にしかけるのは、このアペイリアー・ヘーリオスか、それとも……』
「高みの見物なんてのは、この私を倒してからにしてもらおうか」
　織田信長が、六天魔王の背負っていたヴリトラ砲を外すと、高空に位置するゼノガイストに照準を合わせた。
『――ロックオンシグナル』
『――回避！』
　ヴェルリア・アルカトルから警告の意志を受けた柊真司が、即座にゼノガイストに回避運動をとらせる。
「避けてすむと思うな！」
　織田信長が、ヴリトラ砲を発射した。太い砲身から発射された弾体が即座に分裂する。敵は空にいる。当然の結果として対空拡散弾が使用されていた。
　ゼノガイストが射程外の上空に逃げようとするところに、別方向からミサイル群が襲いかかった。遮蔽を解いたアペイリアー・ヘーリオスからのアバランチミサイルの攻撃だ。
　六天魔王やシュヴァルツ・ｚｗｅｉに気をとられすぎたゼノガイストの索敵ミスだった。
　一射を行うと、すぐまたアペイリアー・ヘーリオスが遮蔽装置を発動させて姿を消す。
　かろうじてビームシールドで難を逃れたゼノガイストではあったが、爆風に押されて機体が下がった。だが、そこは六天魔王の拡散弾の射界だった。
「出し惜しみはなしだ！」
　機体をかたむけて肩のビームシールドを前面に押し出すと、柊真司がエネルギーウイングを全開放して加速した。そのまま、エナジーバーストを起動させる。全身の装甲がスライドして、スリットから目映い光が迸る。全身をつつむバリアが、拡散弾を弾き飛ばした。そのまま地面に激突する勢いで着地する。
　再加速して一気に六天魔王を潰そうとするところへ、側面からシュヴァルツ・ｚｗｅｉのレーザーバルカンが襲いかかってきた。
『ここが見せ場ですよ』
「分かっているさ」
　ロア・キープセイクの通信に答えると、グラキエス・エンドロアがシュヴァルツ・ｚｗｅｉの無事な右手でビームサーベルを抜き放った。
　誰かに攻撃をしかけるときが、誰かからもっとも攻撃を受けるときと言う、バトルロイヤルの恐ろしさを柊真司は実感していた。だが、これで怯んでいては、乱戦となった戦場では生き残れない。もっとも、乱戦などという状態を作りださないことが、上質な作戦と言うものであるのだが。
　なんとか銃剣で切り結び、いったんシュヴァルツ・ｚｗｅｉとゼノガイストが離れる。だが、二機が近距離に纏まった瞬間を織田信長は見逃さなかった。即座に、嵐の儀式で二機をつつみ込んだ。
　いや、三機だ。遮蔽して接近を狙っていたアペイリアー・ヘーリオスが、運悪くもろに嵐の儀式に巻き込まれた。そのまま遮蔽が解けてしまう。
　持ち前の重装甲でなんとかアペイリアー・ヘーリオスとゼノガイストは耐えきったが、シュヴァルツ・ｚｗｅｉの方は限界が近かった。
「いったん離れましょう」
　再び神出鬼行で転移したシュヴァルツ・ｚｗｅｉであったが、再出現した際にオートバランサーが破損して転倒した。
「さすがに無理がたたったか。二刀流さえ使えていればまだいけたかもしれなかったが……」
　ちょっと悔しそうに、グラキエス・エンドロアが言った。
『シュヴァルツ・ｚｗｅｉ、擱坐です。戦線から離脱しました』
　シャレード・ムーンのアナウンスが響く。
「やっぱり……。みんな無茶苦茶本気じゃないか！」
　模擬戦だからと、ちゃんと模擬弾や低出力ビームを用意していた無限大吾が、またかというふうに叫んだ。
「いつものことよね」
　西表アリカが軽く肩をすくめる。
「こうなったら、なるようになれ！」
　無限大吾が、ビームアサルトライフル・エルブレイカーを六天魔王にむかって連射した。
「新しいモーションを今こそ生かすときだ」
「任せておけ」
　アンチビームファンを持った六天魔王が、摺り足でイコンのむきを様々に変化させつつ、襲いかかってくるビームをアンチビームファンで弾いていった。
「見よ、我が舞を！」
　ひらりひらりと移動しつつ、六天魔王がミサイルを一斉に打ちあげた。
　アペイリアー・ヘーリオスの頭上から、ミサイルが雨霰と降りそそぐ。遮蔽して回避しようとしたのが裏目に出て、展開しようとしたスラスターユニットにミサイルが直撃し誘爆を起こした。機体まで誘爆することはなかったが、メイン推進器にダメージを受けてアペイリアー・ヘーリオスが動けなくなる。
『アペイリアー・ヘーリオス、ここでリタイアです。さあ、残るは六天魔王とゼノガイストとなりました』
　六天魔王はほとんど損傷を受けてはいないが、ゼノガイストの方は全体的にダメージを受けている。状況としては、ゼノガイストの方が不利だ。
『――エネルギー残量は？』
『――このゼノガイストの大容量であれば、まだエナジーバースト、ファイナルイコンソード、共に一度ずつは使えます』
『――充分だ』
　ヴェルリア・アルカトルの回答に、柊真司が満足気に答えた。
「さて、どういう結末を見せてくれるのですか？」
　平等院鳳凰堂レオが次の展開に注目する。
「へたに必殺技でも使われたらやっかいだ。ここは、こっちのペースで決めさせてもらおう」
「的確な判断であるな。ヴリトラ砲、収束モード。チャージ開始だ」
　桜葉忍のアドバイスに、織田信長が六天魔王にヴリトラ砲の発射体勢をとらせた。
『――ヴェルリア、リミッター解除。突っ込む！』
　ファイナルイコンソードを前方に構えたゼノガイストが、エナジーバーストを発動させた。全身から光を迸らせたゼノガイストが、自分よりは二回りは大きい六天魔王にむかって突っ込んでいく。
「速い！」
　ビームアイで気休めの牽制をしつつ、織田信長がゼノガイストをロックオンした。エナジーバーストのせいですでに直線運動しかできなくなっているので、もはや外しようがない。桜葉忍がチャージを急ぐ。
『これは、どちらが早い？』
　観客たちが固唾を呑んだ瞬間、チャージを終えたヴリトラ砲の砲口に、ファイナルイコンソードが突き刺さった。そのまま突き崩すかと思われた瞬間、トリガーを引かれたヴリトラ砲が爆発した。爆炎につつまれて、六天魔王とゼノガイストが吹っ飛ばされる。
『おおっと、これはダブルノックアウトです。これ以上戦いを続けると模擬戦の範疇を超えてしまうと言うことから、レフリーストップがかかりました』
「終わりだそうですよ」
　シャレード・ムーンのアナウンスを聞いて、魯粛子敬が猿渡雉秋に目配せした。
『それでは、ＰＳラインダンサーズの、終了の踊りをお楽しみください！』