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【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ

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【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ
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リアクション



『おえかきのじかん』


「それじゃあ皆、お絵描きの時間だ。
 机にクレヨンを出して。今日は好きな絵を描いていいからな」
「はーい!」
 白い画用紙配り終わると、海先生の合図で、皆が一斉に絵を描き始めました。
 それぞれ茶色いクレヨン、黄色いクレヨンを持って画用紙に向かう真君と菊ちゃんに、ジゼル先生が「何を描くのかな?」と聞いてみます。
「ぼくわんこをかくんだぁー」
「きくちゃん、きくのはなかく〜」
 おやおや、絵を描いている真君と菊ちゃんの腕が何度もぶつかっていますよ。
「菊は左利きだから、絵や書き取りの時間は真と席順を場所を代わるように」
「はいっ!」
 海先生にそう言われて、ジゼル先生は慌てて二人の場所を交換させています。

 その間に海先生は前の席の二人を見ていました。
「シェスティンだめー!」
「われがてつだってやろうというのだ。ありがたくおもえ」
 シェスティンちゃんは雫澄君のクレヨンを奪うと、雫澄君の絵の上に自分の絵を描いてしまいます。
「みずいろ……つかいたかったのに」
 雫澄君は何処へ行く時も連れて歩いている宝物の猫のぬいぐるみを抱きしめて、今にも泣きそうです。
 暫く様子を伺っていようとしている海先生と、ジゼル先生は半笑いでそれを見ています。
「この間雅羅――先生に言われたんだけど、
 サクラ組さんってなんかコントっぽいって……」
「取り分けあの二人とあっちの二人はな」

 海先生が示す先では、鴉君が文長ちゃんの絵を覗き込んでいます。
「ぶんちゃん、なにをかいてるの?」
「これはひょうたんってゆーの。びんなの、おさけがはいってます」
「あー! こどもがおさけのんだらいけないだー!」
「のんでないもん。かいてるだけだもん」
「ぶんちゃんおさけのみたいの?」
「カーくんしらないんだ。
 おさけはね、にがいんだって。だからぶんちゃんいらなーい」
「じゃあぼくもいらなーい」
 マイペースなやりとりに二人の先生は噴き出してしまいます。
 そうしている間にも、雫澄君は泣いてしまいそう。お友達はどうするのかな?
「なすみくん! ぼくのくれよん、かしてあげる!」
 真君が雫澄君の手をぐいっと引っ張って、その上に水色のクレヨンを乗せてあげました。
「偉かったな、真」
「雫澄君も泣かなかったのね。二人とも強い子かっこいいぞ」
 先生達に褒められて、二人は照れくさそうです。
 そこへ一番早く絵を描き終えたルイ君が走ってやってきました。

「せんせいかけました!」
 出された絵を覗き込む二人の先生。
 そこにはマッチョな男性が、もの凄い笑顔でベンチプレスをしている姿が描かれていました。
「こ、これは……何の絵なのかな?」
「ルイ君、この男の人はだぁれ?」
「これはみらいのじぶんです!
 いつか、こんなたくましいひとに、なりたいんですー!」
「お、おう……そうか」
「……なれるといいわね」 

 かわいらしいルイ君の笑顔を見ながら、先生達は絵に描かれた男性の姿を頭の中に描き、複雑な気持ちで顔を見合わせました。





『おべんとうのじかん』


「おべんとおべんとうれしいなー
 ごはんのときはおおきなこえでいただきまぁす!
 きょうのごはんはなんだろねーっおいしいものがいっぱいだー
 のこさずたべるよー」
 真君はうきうき歌いながらお弁当の蓋を開けました。
 今日のお弁当はおにぎりにハンバーグ、お魚のフライにミックスベジタブル、それから……
「うっ」
 あらら、真君の苦手な酸っぱいお漬け物も入っているみたいですね。
 ――ネェ、ダレかタベナイかなぁ……ボクのブンも……
 真君はキョロキョロ見回しています。誰かお漬け物が好きなお友達はいるかしら?


「ふぇえええん! ない! ないよぉ!」
 菊ちゃんの声です。
 海先生が見に行くと、菊ちゃんが椅子に座って、机にぼろぼろ涙を零しています。
「どうした?」
「おべんとうわすれちゃったの、おべんとうのうた、れんしゅうしたのに……」
 海先生に縋り付いて泣いてしまう菊ちゃん。
 そこへルイ君がフォークにタコさんのウィンナーを刺して持ってきてくれました。
「きくちゃん、タコさんあげます!」
「ルイ君、いいの?」
「ししょうがつくってくれたおべんとうはおいしいんです。
 タコさんもまだたくさんあるし、たまごやきとほうれんそうのおひたしもあります」
「ルイ君優しいのね」
「えへへ。
 きくちゃん、よくかんでたべてね。よくかまないとけんこうにわるいって
 いつもおししょうにいわれてます」
 ルイ君が自分のお弁当箱の蓋にタコさんを置いていると、そこへミートボールが転がってきました。
「これもやろう」とソースでベトベトの手を広げているのはシェスティンちゃんです。
「シェスティンちゃんも優しいね」
 先生に褒められてえっへんとふんぞり返るシェスティンの後ろで、大好きなミートボールを奪われた雫澄君が肩を振るわせていました。
「ぼくのと、ぶんちゃんのもあげるね!」
「きくちゃんどうぞ」
 鴉君が、文長ちゃんの手をひいてやってくると、蓋に唐揚げと豚カツをのせてあげました。
「なんだか肉だらけだな……」
 海先生が呟いていると、鴉君と文長ちゃんと入れ替わる様に真君がやってきました。
 どうやら今度はお肉じゃないみたいですが……
「きくちゃん、ぼくのもたべて!」
 そういうと真君はいそいそとお漬け物を蓋に乗っけています。海先生とジゼル先生は「あら?」と思って目が合い笑いました。

「ありがとうみんな!」
 すっかり泣き止んだ菊ちゃんに、先生達がおにぎりを幾つか持ってきた所で、改めてお弁当の時間が始まりました。