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学園に潜む闇

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学園に潜む闇

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第六章

「皆、思い思いの格好をせよ。制服や衣装など着崩して構わぬ。自由に行くぞ!」
「おー!」
 舞台袖でグロリアーナが一声かけ、鼓舞すると、勢いよくステージへと飛び出していく。
「うゅ、きんちょーはダメ、なの」
 表情の固いメンバーたちを見て、エリシュカがドラムセットから声をかける。
 エリシュカはステージの一番後ろから一同を見渡し、程よく緊張が取れ、集中力が高まった瞬間を見計らうと、カウントを入れる。
「ワン、ツー、スリー、フォー!」
 バンドによるイントロが終わると、吹奏楽と合唱が始まる。

  Hey Everyone!joyful,joyful Lord,We adore Thee.
    And in my life.
  put none before Thee.
    Yeah!

  But since I was a youngster 
  I came to know that
  You was the only way to go
 
 ンガイはともかく、合唱メンバーまでが思い思いに動き回りながら進むあまりにも想定外のステージに、観客はぽかんとしていた。
 エリシュカとグロリアーナ、東雲が時折目を合わせつつ、リズムを支えていく。
 菊が支えるメロディラインに、瑛菜とローザマリアの息のあったツインギターが絡み合ってゆく。

  So I had to grow up and to come to an understanding
  And I’m down with the king so now I’m demanding
  That you tell me who you’re down with,see
  Cause all I Know is that I’me down with G‐O‐D!

 音の螺旋からソーマがアレンジを展開、息のあった演奏で北都が吹奏楽を誘導する。
 そこに歌声がかさなり、新しい世界が提示されていた。
 ンガイはステージ上を走り回り、邪魔にならないようにパフォーマンスを繰り広げている。
 自由に、のびのびと演奏されているように見えて、旋律は常にきっちり噛み合い、同じ景色を表現する。
 大会という枠に囚われず、のびのびと表現されるパワー、若さ。今の彼らにしか表現できない音楽に、客席は息を呑む。

  You down with G‐O‐D!
  Yeah,you know me!

  You down with G‐O‐D!
  Yeah,you know me!

 客席からは自然と手拍子が起こっていた。

  You down with G‐O‐D!
  Yeah,you know me!

  Who down with G‐O‐D!
  Everyone!

 その瞬間、突然舞台袖から、行方不明になっていた吹奏楽部員たちが飛び出してきた。
 素早くそれぞれのパートに着く。
「ヘンデル先生は?」
 ヘンデル……ゲオルクの代わりにタクトを執っていた部長が尋ねる。
 皆、静かに首を振る。
「そっか……」
 部長は一度下ろしたタクトを再び上に掲げた。
 そして始まった音楽に、皆が耳を傾ける。

「水上の音楽 組曲第3番、か」
「もしかして、気づいてたのかな」
 ソーマの言葉に、北都が寂しそうに笑った。
「本当に、今この瞬間の彼らにしかできない演奏だね」
 東雲が呟く。
 ンガイも大人しく演奏に聴き入っている。
「そういえば、全員が揃っての演奏聞くの初めてね」
「そうであったな」
「うゅ、やさしい、おと」
「ええ、想いの込められた旋律ですね」
 ローザマリアたちと並んで、瑛菜もじっと演奏を見つめていた。
「まさか、管弦楽ぶち込んでくるとはなぁ。……ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル、か……こっそり練習したんだろうな……ヘンデル先生に見つからないように」
 ウォーレンはそっと呟くと、生徒たちの演奏を見守る。

 演奏を終え控え室に戻ったメンバーたちは、達成感に満ちた表情をしていた。
 すべての学校の演奏が終わり、上位3団体が表彰される。
 山ノ葉学園のメンバーは惜しみない拍手を送った。

「来年も頑張ろうね」
 部長がそう言って笑った瞬間だった。
「審査員特別賞、山ノ葉学園吹奏楽部」
 司会者の声が響き、会場中から沸き起こる拍手に包まれた。
 

担当マスターより

▼担当マスター

花井詠巳

▼マスターコメント

こんにちは。花井です。
この度は「学園に潜む闇」にご参加いただきありがとうございました。
公開の遅延誠に申し訳ございません。
一部の方には称号を付けさせていただきました。
どうぞよろしくお願いいたします。