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リアクション
stage2 森のどこかで
「この森のどこかに≪隷属のマカフ≫がいるのか……」
早見 騨(はやみ・だん)は生徒達と一緒に、遺跡とは別方向から森の中へと侵入していた。
騨は震える手でハンドガンを持つ。
「絶対に見つけ出して聞き出すんだ。
いざとなったら僕だって……」
「騨。戦闘前に気合を入れるのはいい事だ。
だが、先に安全装置を外しておいた方がいいと思うぞ」
セドナ・アウレーリエ(せどな・あうれーりえ)に言われて騨は握りしめたハンドガンを確認した。――安全装置がかかったままだった。
騨は頬を赤く染め、慌てて安全装置を解除する。
その様子を見ていた騨のパートナー、≪猫耳メイドの機晶姫≫あゆむが箒を手に頬を膨らませて怒っていた。
「騨様、しっかりしてください!
戦いではちょっとのミスが命取りなんですよ!」
「そう思うのでしたら、あゆむさんも持つ場所を変えた方がよろしいかと……」
「ふえ!?」
上守 流(かみもり・ながれ)に言われて、あゆむは仕込み刀になっている握りしめた箒を見つめる。
あゆむの手は柄と鞘の合わせ目部分をしっかり握っていた。
慌てて握る箇所を直すあゆむは、途中で箒の仕込み刀を落としていた。
一途の不安
生徒達は皆、戦闘は自分達が全面的に担当するしかなさそうだと思った。
そうこうしているうちに、敵が生徒達の元へと集まってくる。まるで行く手を阻むかのように立ちふさがる≪機晶ドール≫達を見て、瀬乃 和深(せの・かずみ)がふっと鼻で笑った。
「なんだよ。幹部様はそっちにいるのか。
わざわざ教えてくれるなんて親切なこった」
和深は武器を握りしめると、腰を低くし、足の裏へと力を込める。
「騨さん、あんたの道は俺が切り開く。気にせず先に行ってくれ」
騨は少しの間逡巡していたが、じっと返答を待っている和深の背中を見て、短く了承の言葉を述べた。
「よし! それじゃあ師匠、流さん、出し惜しみはなしでいくぞ!」
「当然であろう。援護は任せておけ!」
「セドナ、あまり動き回らないで!
あなたを守らなくてはならない私の身にもなってください!」
地面を蹴って飛び出した和深の後を、セドナと流が追いかける。
「言っておくが我は頼んでいないのだよ。
別に我一人でも問題ないのだが、戦略上仕方なくというやつなのだよ」
セドナは流に言い返しながら、魔力を集中させて【無量光】を前方の≪機晶ドール≫達に叩きこむ。
「今だ、和深!」
「了解!」
和深は【疾風迅雷】で一気に接近すると、妖刀白檀で怯んでいる≪機晶ド−ル≫の武器を吹き飛ばし、ワイヤークロー【剛神力】で拘束していった。
「よし、この調子でどんどん行動不能にしていくのだ!」
「はい、師匠!」
お互いに親指を立てあうセドナと和深。
そんなセドナの背後に≪機晶ドール≫が近寄る。
ナイフを逆手に気づかれぬように近づく。
だが――
「そうはさせません!」
セドナを狙う≪機晶ドール≫の存在に気づいた流は間に入り込むと、刀の棟で脛を叩いた。そして体制を崩した≪機晶ドール≫の腹に柄頭で強烈な一撃を入れた。
流は気を失った≪機晶ドール≫を木に寄りかからせて座らせると、ホエールアヴァターラ・バズーカで和深を援護するセドナに少し怒った様子で話しかけた。
「ちょっとセドナ。一人でも問題ないのではなかったのですか?
もう少しで危ない所だったんですよ。しっかりしていただきませんと――」
「何言ってのさ!」
流が不満そうに話していると、セドナが言葉を遮ってきた。
セドナは首だけ回して流を振り返る。
「それは流の仕事であろう。
自分で言ったことなのだから、流が我のことをしっかり守るべき。それが義務であり、責任というものであろう?」
セドナは楽しそうに無邪気な笑みを浮かべていた。
流は暫し唖然とした表情でセドナを見ていたが、ふいにやれやれというように深いため息を吐いた。
先陣を切って戦っていた和深が振り返ると、すでに騨と生徒達の姿はその場にいなくなっていた。
和深は再び前へ向き直り――
「全員救ってやるよ!」
≪機晶ドール≫を睨みつけて叫んだ。
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