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動物になって仁義なき勝負?

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動物になって仁義なき勝負?
動物になって仁義なき勝負? 動物になって仁義なき勝負?

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「……この周辺にはいないようだな」
 陽一は行き交う土塊の体内に深紅のマフラーの先を慎重に突っ込んで漁って戻り薬の有無を確認し、無ければただの土に戻して行く。行き交う土塊が見当たらなければ、人型にした漆黒の翼を餌として土塊を呼び起こし、漆黒の翼の人型を解除してから体内を探った。休む暇無く作業を繰り返していく。。戻り薬を盗んだ土塊が同じ姿をしているとは限らないが、やらないよりはいい。

 何十回目かの作業をしていた陽一の耳に悲鳴が聞こえて来た。

「ちょ、来るなよーーー」
 ヒスミの悲鳴。

「……すぐ近くだ」
 陽一は声のする方へ全力で急ぎ、現場に到着した。

 到着するなり陽一は、
「助けに来た。早く手近の木に登れ!」
 大量の土塊に囲まれているヒスミに指示を出した。
「あ、あぁ」
 ヒスミは言われるまま木に登った。
 それを確認すると陽一は、ヘルハウンドの群れで木の周りをぐるりと守らせる。
 それから土塊と戦闘だ。
 陽一は漆黒の翼で絡め獲って動きを封じ、体内を探るため深紅のマフラーを偵察に出し、無ければそのまま破壊していく。

「おい、狼が来たぞ」
 ヒスミがやって来る狼の群れを指さした。

「……誰かが変身した様子はないみたいだな」
 人語も離さず、雰囲気からも本物だと確認する。
 狼に土塊とヒスミの警護と忙しい。

 突然、
「フギャン」
 妙な叫び声を上げ、群れの内何匹かが突如走った光によって倒された。魔法だ。

「大丈夫ですか」
 『光術』を使ったのは、ホリイだった。
 ヒスミの叫び声を追った甚五郎達が登場。

「あぁ。狼を頼む」
 陽一は甚五郎達に狼達を頼んだ。

「任せろ。よし、一掃するぞ」
 甚五郎は陽一の頼みを引き受け、『歴戦の魔術』を使って狼達を撃破していく。
 やはり、魔法は口の周辺から発射されている。

「……多いな」
 オリバーは巧みに向かって来る狼を避けながら、きっちり大砲台の役目を果たし、魔法の照準がぶれる事が無い。
「……これでどうじゃ」
 羽純が『サンダーブラスト』で狼の群れに雷の雨を降り注いだ。
 狼達は悲痛な叫び声を上げ、倒れた。
 狼の群れは全て一掃され、土塊達もも片付いた。

「これで少しは安心だな」
 陽一は周囲の安全を確認した。

 そして、ヒスミに木に降りるように陽一が言おうと振り向くと
「な、なんだ!!」
 ヒスミは隣に現れた蛇になった園児を掴んだエオリアの姿に驚いていた。
 ヒスミだけではなく、この場にいた全員がエオリアに注目した。

「悲鳴が聞こえたので駆けつけたのですが」
 エオリアはそう言いながら現場が片付いた事を確認していた。
「……あの、その掴んでいるのは」
 他のみんなが気になっている事を素直なホリイは恐る恐るエオリアに訊ねた。
 どう見ても蛇を餌として狩った猛禽類にしか見えないから。
「……園児ですよ。やっぱり、狩りにしか見えませんか」
 エオリアは、苦笑しながら答えた。
 他のみんなはもう一度、エオリアの姿を見たが、やはり狩りにしか見えない。

 そんな時、
「すげー、何でこうなったんだ」
 いつの間にか木から下りていたヒスミが物珍しげにフルアーマー姿のホリイを眺めていた。安全だと知るなり変わり身が早い。

「変身した後、鎧化したらこうなりました」
「へぇー、もしかしたら薬を全部混ぜたせいかな」
 ヒスミはホリイの説明にますます何が原因なのか興味を抱く。

「……そんな気楽な事言っている場合ではないだろう。自分達の喧嘩に子供達を巻き込んで」
 あまりにも空気を読まない気楽なヒスミに陽一が厳しい言葉を投げた。
「……それは、キスミが」
 ヒスミは陽一の発した正論に不満そうな顔をしてぶちりと言い訳をする。
「今頃、子供達が自分と同じ目に遭っているかもしれないんだ。その子達の友達や先生や両親が心を痛める事になるのを忘れるな」
 陽一はさらに厳しい言葉をヒスミの胸に突き刺す。
「……」
 ヒスミは、陽一の言葉にすっかり沈黙してしまった。
「さて、これからどうする? 俺はこのまま戻り薬を探したいんだが」
 説教が効果を発揮しているのを確認してから陽一はこれからの事を相談しようと他の捜索者達に話題を向けた。
「では、わしらがヒスミの警護をしながら森の外まで行こう」
 甚五郎がヒスミの身柄を引き取る事にした。
「その子も連れて行きますよ」
 ホリイはエオリアが助けた園児も一緒に連れて行こうと思い、声をかけた。
「お願いします」
 そう言ってエオリアはオリバーの背中にあるかごに優しく園児を寝かせた。
「次はわらわの番じゃな」
 羽純はヒスミにとって不穏な事を口にした。
「……番って」
「説教じゃ」
 嫌な予想を思い浮かべながら聞き返すヒスミに予想が的中している事を知らせる羽純。
「うー」
 思わずうなだれるヒスミ。
「安心するのだ。二人揃ってからするからのぅ」
「うはぁ」
 羽純は安心できない事を言い、ヒスミをますますうなだれさせた。

 甚五郎はヒスミと園児を連れて森の出口に向かった。途中で何人か園児を救いながら。
 陽一は戻り薬探索に戻った。
 エオリアは、エースと合流しに行った。途中、園児を見つければきっちりと救助をしていた。