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動物になって仁義なき勝負?

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動物になって仁義なき勝負?
動物になって仁義なき勝負? 動物になって仁義なき勝負?

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「……本当に助かります。ありがとうございます」
 ナコは他の捜索者と同じように森に入った園児達の詳細を聞きに来たエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)エオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)に丁寧に頭を下げた。
「分かっているのは人数と名前ぐらいです。子供達がどの動物になったかまでは分かりません。本当にごめんなさい」
 ナコは園児達について知っている事を話すも肝心の動物姿については不明のまま。
「子供達は必ず助けますから安心して下さいね、可愛いお嬢さん」
 エースは励ましにと薔薇を一輪差し出した。
「……あ、はい。ありがとうございます」
 ナコは驚きながらも受け取り、丁寧に礼を言った。
「それでは捜索に行きますね。行きましょう、エース」
 エオリアはエースを促し、森へと向かった。

 森、入り口。

「喧嘩は悪い事じゃないけど、子供達まで巻き込むとはね。子供達に何かあったら親御さんに合わせる顔が無い事、あの二人は考えてるのかな」
 エースは森を見ながら元凶である双子に呆れていた。
「……そう思いますが、今は園児救出が最優先です。薬を使って行きましょう」
「そうだね。土に邪魔される訳にはいかないし、相手は何をしでかすから分からない年頃の子供達だからね。自然の事も知らないだろうし」
 話は終わり、園児救出作戦に移る。
 二人は動物変身薬を使った。

「……鳥だね」
 エースは緋色で細身の緑目の鳥になった。しかも尾羽が長い大型猛禽類。
「この姿、園児が見たら確実に泣きますね」
 エオリアは緑目のエースと似た鳥で羽色だけが金色である。
 明らかに可愛さの無い姿、むしろ恐怖を与えかねない。
「……そこは手早くすれば何とかなるさ。とりあえず、今は情報が必要だ」
 エースはそう言い、森に入って行った。
「……盛り上がって目的を忘れなければいいですけど」
 エオリアはエースが何をしようとしているのか容易に想像出来るのか危惧しながらついて行った。

 アスレチック広場。

「誘いを受けて騒ぎを見学していたけど、随分面白い事になって来たわね」
 賑やかな様子を楽しむ松永 久秀(まつなが・ひさひで)
「本当にあの兄弟は懲りないな」
 全く学習能力の無い双子に呆れる佐野 和輝(さの・かずき)
「和輝、すごい事になってるね〜」
 アニス・パラス(あにす・ぱらす)は和輝の傍らで賑やかな周囲を見ていた。

「あ、アニスちゃん」
 いつぞや髪飾りを貸したりと仲良しになった魔女のスノハと誘拐騒ぎに巻き込まれた地球人の絵音がアニスを発見して声をかけて来た。
「うにゃ? スノハに絵音。どうしたの?」
 アニスは声のする方に振り向き、やって来た二人を確認した。
「アニスちゃん、エリエちゃんも森に入って行っちゃったの」
 スノハがとある守護天使の少女の名前を口にした。
「……大丈夫かな」
 絵音も不安そうな顔をする。一緒に遊ぼうと約束していた友達がいなくてとても不安になりそんな時に顔を知っているアニスを発見したという訳だ。
「大丈夫だよ! アニスが見つけて来るから」
 アニスはどんと胸を叩いて答えた。
「ね、和輝、久秀、助けに行こうよ」
 必死な顔でアニスは和輝達の方に振り返った。
「……そうだな。ただの喧嘩なら心配は無いがどうやら怪我だけじゃ済まなくなりそうだからな」
 和輝はアニスと二人の少女の顔を見比べた後、答えた。たわいのない喧嘩であれば、傍観でも良いが、今起きているのはそうではない。万が一が起きる前に園児達を救う必要がある。
「……仕方無いわね」
 久秀もアニスの必死さに折れてエリエの救出に協力する事にした。
「ありがとう!!」
 スノハと絵音は安心したように礼を言ってみんなの所に戻って行った。
 三人は森へと急いだ。途中、アニスが動物変身薬を使った。

 アスレチック広場。

「マスター、動物になれる薬ですよ! ちょっとだけ変身してみますね」
 捜索隊が動物になっていく様子を見ていたフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)は、自分も体験したくてうずうずしていたのだ。
「……フレイ、使うな。こういった薬は嫌な予感しかない」
 ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)は何とかフレンディスを止めようするが、その言葉は届かなかった。

「……私は一体、何になるのでしょう。楽しみです」
 ベルクの制止を聞かずフレンディスは狼の耳と尻尾を好奇心でピコピコさせながらあっという間に使い、見事に変身し、トテトテとベルクの元に戻って来た。

「……マスター、見て下さい。私、小熊さんになりましたよ! がおーですよ!!」
 フレンディスは、両手を構えて襲うぞー、というポーズを取ったりして嬉しそうだ。
「……フレイが熊……」
 少しショックのベルクは焦げ茶の小熊になったフレンディスを見て熊なのに迫力が無いとか小熊なだけに可愛いのかなどと思いながらも自分の予感が的中した事にため息しか出なかった。
「あのあの、似合いますか?」
 フレンディスはじっとつぶらな青い瞳をベルクに向けた。
「……なんつーか、似合うとか似合わねぇの前に熊としか言いようがないぞ? ていうか戻り薬が見つかるまで元に戻れないんだぞ。もーちょい考えて行動して欲しいんだが」
 ベルクは後先考えずに行動したフレンディスにため息混じりの注意を投げかけた。万が一の事が起きないとも限らないのにこの平和さ。
「……申し訳ありません」
 フレンディスはしょぼんと顔をうつむかせた。
「まぁ、蛙や蛇よりはマシだから。いいか」
 あまりのしょんぼりさに少し可哀想になったベルクは注意をやめた。
「マスター、ありがとうございます」
 フレンディスは顔を上げて元気を取り戻したかと思ったらすぐにじゃれつき始めた。
「……何と言うか」
 想い人にじゃれつかれるのは嬉しいが、人間状態でやって欲しいという本音などが混ざり合い、じゃれつかれているベルクの心境は複雑だった。
「何でご主人様が小熊に!?」
 ショックしたのはベルクだけではなく、忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)もだった。その理由は、フレンディスの姿が犬ではなかったからだ。いくら熊がイヌ科と比較的類縁関係が近いと言えどショックだ。
「見て下さい。どうですか?」
 ベルクから離れたフレンディスはポチの助の前でくるりと一回転。
「どうして狼や犬ではないのですか!」
 あまりのショックに声を大きくするポチの助。
「似合いませんか?」
 気に入ってくれない事に少し悲しそうにするフレンディス。
「ご主人様にはそのような下等生物の姿は似合いません。させておくわけにもいきません!」
 ポチの助の不満は続き、きっとベルクの方に顔を向ける。フレンディスは熊な姿を気に入りポチの助にじゃれつき始める。
「エロ吸血鬼、さっさとご主人様を戻すのですよー!! ってご主人様、じゃれつくのは少しだけ重たいです」
 ポチの助は、ベルクに上から目線で命令を始めるも背中に重みを感じて潰れそうになってしまう。
「一緒に遊べますよ!」
 フレンディスはポチの助の言葉にもニコニコとするばかりで離れようとしない。
「……熊だから爪も鋭いな」
 ベルクがポチの助の顔間近に迫る爪に対して一言。
「わわ、爪、爪が危険です!!」
 ベルクの言葉で気付いたポチの助は大慌て。もう数ミリの距離に爪が。少し触れるだけで切り裂かれそうな鋭さ。
「大丈夫ですよ」
 フレンディスは笑顔のままそう言いつつもポチの助のために離れた。
「あの、園児さん達と遊んで来てもいいですか?」
 二人にじゃれついて満足したフレンディスが次に思ったのは園児達と遊ぶ事だった。
「……遊ぶ前に戻り薬を探しに行くぞ」
 ベルクはきっと苦労するだろうと思いながらも戻り薬探しに行く事を提案。
「……はい」
 フレンディスは表情を引き締め、うなずいた。
「ご主人様、僕が先頭を歩きます。必ず、この鼻で薬を見つけてみせます!」
 ポチの助は胸を張って役に立つ宣言をしてから歩き始めた。
「頼みます。マスター、森で襲われた時は任せて下さい」
 フレンディスはどんと胸を叩きながら唯一人の姿であるベルクに言った。残念なのは、頼り無く見えてしまう事だ。
「……あぁ」
 ベルクはそれしか言えなかった。愛らしい小熊に胸を張られてもと少し複雑だった。

 ポチの助のここ掘れワンワンの術こと『トレジャーセンス』を使いながら急ぐ事に。広い森だがフレンディスの『方向感覚』で迷う事は無かった。