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リアクション
「何、してるの?」
イリア・ヘラー(いりあ・へらー)は、レジャーシートに座ってリュックの中をごそごそしている魔女の少女、キリスに声をかけた。
「あ、お姉ちゃん! あのね、お弁当が終わったら先にどのお菓子食べるのか決めてるの」
キリスはたくさんのおやつを並べながら話した。
「へぇ、キリスちゃんたくさん持って来てるんだね」
イリアはそう言いながら靴を脱いでシートに座った。
「うん」
こくりとうなずくキリス。
「赤色、可愛いねー」
イリアはおやつの横に並べられている赤色のお弁当箱に気付いた。
「あたしもそう思うよ」
赤色大好き少女のキリスは嬉しそうに笑った。
「お姉ちゃん、いいものあげる」
そう言ってキリスはリュックから大きめの容器を取り出した。
その時、
「あ、お姉ちゃん」
イリアを発見したスノハと絵音が仲良くやって来た。
「二人共、仲良しだねー」
イリアは嬉しそうに言った。
「うん!」
「何してるの?」
スノハは元気にうなずき、絵音は興味深そうに訊ねた。
「お姉ちゃんにいいものをあげるんだよー」
キリスはそう答えて容器のふたを開けた。
中に入っていたのは、
「うさぎりんご。たくさんあるね」
大量のうさぎりんご。イリアは数の多さに驚いた。
「うん。ママが作ってくれたんだ。食べていいよ」
キリスは一つ取ってイリアに差し出した。
「いいの?」
「いいよー」
訊ねるイリアにキリスはあっさりと言った。
「ありがとう。うん、とってもおいしいよ」
受け取り、シャクリと食べた。
「お姉ちゃん、あたしのお菓子も食べていいよ」
スノハも持参したリュックからたくさんのおやつを出してイリアに勧める。
「これ、一番おいしいよ! でも先生には内緒だよ」
絵音はお気に入りのお菓子を開けながら、口元に人差し指を立てた。いつの間にか二人もお喋りに参加。
おやつはお弁当を食べた後なので先に食べているのを知られたら少し怒られてしまうかもしれないから。
「うん、内緒!」
イリアも口元に人差し指を立てながら答えて、四人で笑った。
本当なら注意をするべきだがしない。こうやって秘密を共有するのは楽しいし、何より自分のためにしてくれているから。
「キリスちゃん、これは?」
イリアは他のお菓子とは特別に分けていると思われるお菓子が気になって訊ねた。
「これ、前に遊んでくれたお兄ちゃんにあげるんだ!」
キリスは笑顔でそう言った。お兄ちゃんとは、写真館で色々遊んでくれた北都の事を言っているのだ。ちなみにこの騒ぎの後、キリスは北都にお菓子を忘れず渡した。
「あ、あたしもそのお兄ちゃん。好きだよ」
スノハも間髪入れずに言った。汚れたリボンを洗って元気付けてくれたから。
「そうなんだ。絵音ちゃんは誰か気になる子はいる?」
イリアはまだ発言していない絵音に訊ねた。
「いるよー」
絵音は笑顔で言う。
「だれだれ?」
イリアは楽しそうに聞く。
「たくさんいるよ。新しいお友達に会えるようにしてくれた……もう森に行ったのかなぁ」
絵音はそう言ってきょろりと周囲を見回すも目当ての人はいない。誘拐騒ぎで出会った亡き妹の影を追う三人組と騒ぎ後も会えるように計らってくれた陽一を捜していたのだ。
「……んーと、あ、いたよ」
陽一を捜すのを諦めた絵音が次に指さしたのは、ナコと話しているルファン・グルーガ(るふぁん・ぐるーが)だった。以前遭遇した誘拐騒ぎで優しくしてくれた事が心に残っているのだろう。
「えっ、ダーリン!?」
イリアの表情が一瞬、変わった。まさか小さなライバル登場かと。
「……お姉ちゃん、好きなんだー」
イリアの表情を見逃さなかったスノハがツッコミを入れた。
「うん、好きだよー」
イリアはそう言った。子供相手に隠しても仕方が無いので。
絵音の告白はまだ終わっていなかった。
「まだ、いるよー」
絵音が次に指さしたのは、動物に囲まれているウォーレン・シュトロン(うぉーれん・しゅとろん)だった。以前、一緒に歌ったりなど遊んだりして楽しかったから。
「レオも」
イリアは絵音が指さしたウォーレンを見ながら声を上げた。
そして、最後に絵音は
「あとね、お姉ちゃんも大好き。だってお料理も上手だし優しいもん!」
最後にイリアに向き直り、にっこりと笑った。
「わぁ、お姉ちゃんも大好き!」
嬉しくなったイリアは思わず、絵音の頭を撫で撫でした。
何かが違う気はするが、好きと言われて嬉しくならない人はいない。
やはり、幼稚園だからか恋愛心を持つ子は少ないのかもしれない。
それからお菓子を食べながらいろんな事を話して時間を過ごした。
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