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決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊

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決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊
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リアクション

「オリュンポスね。こういう胡散臭い仕事をしていると、胡散臭い奴らに遭遇しやすくはるが、今回は輪をかけてだな」
 そう呟くのは十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)、さすらいのバウンティハンターだ。
「さあード派手に暴れます!」
「おーなのでふっ」
 宵一のパートナーであるヨルディア・スカーレット(よるでぃあ・すかーれっと)リイム・クローバー(りいむ・くろーばー)だ。モブ怪人たちを相手に前へ前へと突き進む三人。
 その道を塞ぐ怪人が現われる。
「ここから先は通れぬであろうな。なぜならば、我がいるのだから」
 只ならぬ不気味さを漂わせて現われたるはイングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)
 その姿と。
「蛸だな」
「タコですわ」
「たこでふ」
「いかにも!」
 一向に否定はしないイングラハム。名前とは裏腹に、その姿はまんま蛸。
 そう、彼は蛸型怪人『デビルオクトパス』なのだ!
「安直過ぎてしませんこと?」
「最近のアニメでもでてこないでふよ?」
「だからこそであろう! そしてこの姿の怪人がやることと言えば、一つ!」
 そう言ってギョロっと目を動かし、ヨルディアをターゲットするイングラハム・オクトパス、もといカニンガム。
「な、何です?」
「わかるであろう! 蛸型怪人、そして美少女ヒロイン! 触手、美少女! おわかりでしょう!?」
「?」
「わからないのであればそれもよし! わからせてあげるであろう!」
 イングラハムの手足、触手が一斉にヨルディアに襲い来る。
「よくわからいなですけど、そちらがその気ならば負けは致しませんわ! 行きます!」
「僕も一緒に変身でふ!」
「さあ、お仕置きの時間で〜す☆」
「僕の真の姿をお見せしまふ〜」
 掛け声と共に変身する二人。
 ヨルディアは白と黒の二色の竜巻を髣髴とさせる雰囲気を纏わせ、リイムは頭には天使の輪っかを、背からは天使の羽が生えた姿で現われる。
「変身少女とは! 視聴率アップは間違いないであろう!」
「さっきから何を言っているかわからないですけど、とりあえずわたくしの魔法をご賞味あれ!」
 空を浮遊しつつ、手にした杖から強風を巻き起こし、更に炎や雷を発現させ、イングラハムの触手を迎撃するヨルディア。
「ああ! 我の触手が!」
「まだまだですわ!」
 ヨルディアの猛攻は続く。猛攻を防ぐ術がないイングラハムの触手は減っていくばかり。
「そ、そうか! 彼女はヒロインでありながら、ヒーロー! だからこそ我の触手は届かない! そうなのであろう!」
「これで、とどめ!」
 これまで以上の強風は、竜巻と化してイングラハムに向かう。
「ぐあああああああっ!」
 まさに怪人、的な叫び声を上げるイングラハム。触手の数も残すところあと二本。
「ま、まさか大人のお友達たちが期待している1シーンもお送りすることができないとは、ん?」
「蛸型怪人さん、悪いことしちゃダメでふよ?」
「な、なんだこの可愛い生命体は!? 美少女とは違う、動物的に頂点に達する可愛さである!」
「ありがとうでふ。それじゃ参った、って言ってくれるまふか?」
「残念ながらそれはできないで、あろっ……?」
 イングラハムは自分の体の異変に気づく。体がカタカタと震えて、思ったとおりに動かないのだ。
「な、なんなのだこれは」
「参った、って言ってくれまふか?」
「そうは、いかっ」
「参った、って言ってくれまふか?」
「か、かわいすぎるのである! ……むっ?」
 リイムの頭についている紫色の花が微妙に動いている。
「あれは、一体何なのでしょうか! 解説の隠岐次郎左衛門さん」
「ムラサキツメクサだとは見受けられます。恐らくあそこから麻痺を促す花粉を巻いているのだと」
「ちなみに、ムラキサツメクサはハーブ等に使われていますよ!」
 ここにも現われるフィーアと、そのパートナーである隠岐次郎左衛門 広有(おきのじろうざえもん・ひろあり)。実況者に休みはないのだ。
「参った、と言ってくれまふか?」
「ま、ま、ま。……参った」
「ありがとうございまふ。でもしばらくはじっとしててでふ」
「ナイスですわ! リイム!」
「えへへ、お姉さまに褒められたでふ!」
 天使の羽をぱたぱたとさせて、ヨルディアの元へと帰る。
 その後ろでのっそりと動くイングラハムがこう言う。
「ふ、ふふ、ふふふふ!」
「ど、どうして笑っているんですの?」
「確かに、我にはもう戦う力は残されていない、だが! 我を倒しても更なるかませが現れるであろう! 忘れぬことだな!」
「だったとしても、屈するわけには行かないですわ!」
「そうでふ!」
「精精、頑張るのだな! ウ、ウウウ、グハー!」

 盛大な爆発(人畜無害)を伴い、自爆したイングラハム。その残り香は、たこ焼きの匂いを連想させた。
「戦場はどこでも変わらないものなのよ……。それでも、先に進みませんと」
「残念ながら、そうはいかないのであります!」
 高い所からヨルディアたちを見下ろす忍者風の姿のシルエット。その人物がヨルディアの背後から攻撃をする。
「背後から、ごめんであります!」
「そうはさせるか」
 直前で、宵一が割って入り、攻撃を受け流す。
「ほう! やりますですな!」
「そちらこそ今までの気配の消しよう、中々」
「お褒めに預かり光栄ですが、容赦はしません。それにイングラハムは我ら怪人の中では下の下の下下下怪人、モブ怪人をちょびっとグレードアップさせた程度の怪人であります!」
 そう言いながら宵一に対して攻撃を仕掛ける。一方の宵一も攻撃を軽快にかわしながら話を続ける。
「ならば君はそうではないと?」
「その通りであります! 自分の名前は、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)! 行くであります!」
 素早い動きと銃器での攻撃。先ほどのイングラハムとは比較にならない強さ。
「宵一!」
「リーダー!」
 ヨルディアとリイムが叫ぶ。しかし、宵一は慌てない。
「俺はしがないバウンティハンター。だが今宵だけは怪人を刈り取るヒーローとなろう」
 そして宵一はミラクルバッチを使い変身する。
「むむむっ、先ほどより渋さ二割増しとは! 一体何者でありますか!」
「十文字 宵一、そして今だけは『鮮血の風』となろう」
「わたくし『スコルージガール』に!」
「僕『プリティー・フェアリーZ』もいますでふ!」
「3対1とは、戦況は芳しくはありませんですが、それでも戦わせてもらうであります!」
「いや、戦うのは俺一人。二人には支援に回ってもらう」
「いいんですの?」
「ああ、よろしく頼む」
「わかりましたわ」
「わかったでふ」
 そう言って1対1の戦いが始まる。宵一と吹雪。
 素早い攻防の激しさに、他のモブ怪人たちも蹴散らす。
「やるでありますな!」
「【スレイプニル】に追いつける君の早さも驚くべきだよ。だからこそ、使わせてもらう」
 宵一は【エクソスケルトン】を身に纏う。頭からつま先まですっぽりの包まれ、血の様に赤き装甲からは硝煙の匂いが色濃く漂う。
「な、なんでありますか!?」
「ヒーローの最終兵器さ。さあ覚悟は出来たかな?」
「その程度、やられるわけにはいかないであります!」
 それまで以上の弾幕を張る吹雪。しかし、それはあくまで宵一の視界を奪うため。
 吹雪は宵一の背後に回り、空中から一気に攻める作戦を立てていたのだ。
 作戦通り、後ろに回りこみ空中に飛んだ吹雪が見たもの、それは。
「す、スレイプニルしかいないであります!? ……まさか!」
「その通り、スレプニルは囮。君なら後ろに回りこんでくるだろうと思ったから、それを逆手に取ったまで」
 吹雪の行動を読みきっていた宵一は吹雪が背後を取る、その更に背後を取った。
「これでチェックメイト、賞金ゲット、なんてな」
 【第二世代パイルバンカー】を持って吹雪を攻撃する。吹雪を捕らえたパイルバンカー。だが、しかし。
「甘いであります! パイルバンカーは内部からの破壊を可能とした武器。しかし、第二世代の杭はもろく、だからこそこれすら貫けない!」
 吹雪が取り出したのは強化され、分厚くなった【機晶爆弾】だった。パイルバンカーの攻撃はこれに阻まれた、かに思われた。
「その分厚くなった機晶爆弾だからこそ、パイルバンカーは散弾を撃たずに済んだ。致命傷はきついからね、こいつの」
 そう、バイルバンカーの散弾が内部から放たれればいかに怪人と言えども致命傷は必死、それを避けるためにあえて分厚い機晶爆弾を狙った。そして、ダメージを受けた爆弾。
「!? ば、爆弾が膨張してるであります!?」
「どれだけ分厚くても、このパイルバンカーの攻撃を受けて誘爆しないものはない。だから言った、チェックメイトと」
「む、無念でありますー!」
 
ドッカーン!

 綺麗な花火を咲かせて、吹雪は散っていった。
「最後の一撃は、あまりにもせつないな……」
 変身を解き、【エクソスケルトン】も解除し、いつもの姿に戻った宵一は、帽子を深くかぶる。
「お見事ですわ!」
「さすがリーダーでふ」
「二人も、周りの怪人を相手にしてくれた。邪魔がなかったからこそさ。さあ次へいこう」
「はいですわ!」
「おーでふっ」
 そう言って、オリュンポス・バレスを目指す三人だった。