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黒の商人と封印の礎・前編

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黒の商人と封印の礎・前編

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 さて。
 一階でサラマンダーと交戦していた和泉北都たちと夜刀神甚五郎たちは、無事にサラマンダーを撃退することに成功していた。
 二組は合流し、先に行ったメンバーを追いかけて通路を急ぐ。と、その途中。
「……倉庫か」
 開け放たれた扉を見つけて、足を止める。その中からは数人が調査して居る声が聞こえてきた。
「何か見つかりましたか?」
 北都がひょこりと顔を覗かせてみると、中では佐野和輝たち三人が壁などを調査して居た。部屋の中は『ダンタリオンの書』が灯した光術の明かりで照らされている。
「ああ……何かありそうな感じはするんだが」
 突然掛けられた声に、和輝が出てきて答える。
「よし、わしらも手伝おう」
「クナイ、僕達も」
 甚五郎と北都達は手伝いを買って出、倉庫の中へ入っていく。
「ふむ……塔と言うと上ばかり見てしまうが、下、という可能性もあるのう」
 草薙羽純が、部屋の中をまじまじと見詰めながら呟く。その言葉に、甚五郎が振り向いた。
「なるほど、地下室か……その可能性はあるかもしれないな」
「確かに、床はまだしっかり探していないな……」
 甚五郎達の会話を聞いた和輝達もまた、足下を重点的に調べ始めた。すると。
――和輝、そこの床に何かあるよ。
 極度の人見知りのため和輝の後ろで小さくなって居たアニス・パラスが、テレパシーで和輝に呼びかける。
「リオン、ここを照らしてくれ」
 和輝は禁書『ダンタリオンの書』を呼ぶと、光術の明かりで床を照らして貰う。強い光に照らされてはじめて、床の模様の一部が深い切れ込みとなって居ることが見て取れた。
「ここに、なにかありそうだ」
 そして北都や甚五郎達にも呼びかけると、切れ込みの周囲をあれこれいじってみる。すると、床板の一部が外れ、とっかかりとなりそうな小さな穴が開いた。よし、と呟いて力の限り床板を持ち上げる。
 すると床板の下には、地下へと続く階段が伸びていた。
「地下室で当たりだったみたいだな」
 和輝は甚五郎にちらりと笑顔を向けると、先陣を切って階段を降りていく。後から甚五郎達、北都達も続いた。
 地下室には明かり取りの機構がないらしく、一寸先は闇という状態だ。しかし、『ダンタリオンの書』が光術で明かりを灯していき、視界を確保する。
 埃にまみれた階段を降りきった所にあったのは、無数の書架だった。
「おお……これは……!」
 『ダンタリオンの書』はその光景に歓喜し、目に付いた本から手にとって開いてみる。
 しかし、どの本も古代文字で書かれて居るらしく、解読は容易ではない。
「むぅ……これは、時間が掛かりそうだな」
 それでも魔道書としてのプライドがそうさせるのか、諦める素振りは見せずに本と向かい合う。
 他の面々もそれぞれに手近な本を手に取り、あるいは他に何かおいてないかと書庫内を調べて回る。
「なるほど……これは、この塔の見取り図みたいだね。あと……制御装置……注意事項……」
 そんな中、一人着々と本の内容を解読していくのは北都だ。隣ではクナイ・アヤシが北都の手元を懐中電灯で照らしている。
 北都は様々なことに造詣が深い。古代文字も、細かいニュアンスまでは取れずとも、大まかな意味なら読み取ることが出来る。
「この塔は、何かを封印するためのものみたいだねぇ。塔が壊れたり、制御装置を破壊したりすると……災厄……魔物、溢れる……うーん、嫌なことになりそう。制御装置に必要なものは……いけにえ……髑髏……あんまり趣味の良い建物じゃないみたい」
 この情報は皆に伝えた方が良いだろう。そう判断した北都は銃型HCを起動した。しかしそこには、通信圏外の表示。
「あ……地上に出ないと通信できないみたい」
 急いでみんなに伝えよう、と北都はクナイを促して階段を目指そうとした。
 その時。
 ごごご、と岩が軋むような音がした。
「北都、危ない!」
 禁猟区を展開して警戒して居たクナイが、北都を突き飛ばす。その瞬間、今まで北都が居た空間を、石で出来た大きな爪がかすめて行った。クナイは慌てて風術で風を巻き起こし、襲いかかって来たものを翻弄する。
「ガーゴイル?!」
 北都はクナイが作ってくれた隙を利用して体勢を立て直す。クナイが懐中電灯で相手を照らすと、そこには巨大なガーゴイルが翼をはためかせていた。
 戦闘の気配を感じ取り、和輝達と甚五郎達も慌てて駆けつける。
「仕方ないな……」
 和輝はとんとんとステップを踏んで、戦闘態勢を取った。戦闘は極力避けたかったが、こうなってしまっては仕方があるまい。
 両手に曙光銃エルドリッジを構え、時間差での一撃を放つ。ガーゴイルはすかさず羽ばたきで銃弾を叩き落とそうとするが、光の弾丸は弾かれることなく、ガーゴイルの翼を打つ。翼の一部がぼろりと崩れるが、しかし致命傷には至らない。
 アニスがすかさず神威の矢を放ち、ガーゴイルの気を逸らす。その間に和輝がガーゴイルの懐に飛び込んで、レガースを纏った脚でしなやかな蹴りを放つ。浸食型:陽炎蟲に寄生させて強化した脚の一撃は、確実にガーゴイルにダメージを与えた。
 しかし、あまり長時間接近戦をして居ては爪での攻撃を受けてしまう。和輝はエルドリッジに火を噴かせると、間髪入れずに距離を取る。
 そこへクナイがバニッシュを放つ。聖なる光がガーゴイルを包み込み、その原動力になっている魔力を弱らせる。
 さらに追い打ちを掛けるように、ブリジット・コイルが六連ミサイルポッドからガーゴイルを挟み込むように銃弾を撃ち込んだ。
 がら、とガーゴイルは崩れ落ち、階段への道が開かれる。
「よし、行こう」
 北都達は書庫で手に入れた情報を他のメンバーへ伝える為、階段を駆け上がっていくのだった。



――後編へつづく――

担当マスターより

▼担当マスター

常葉ゆら

▼マスターコメント

ご参加頂きました皆様、ありがとうございました。常葉です。
相変わらず、ぼかぼかお腹を蹴られながらの執筆でした。出産までにこのシリーズには決着を付けたいと思いますので、近く後編のシナリオガイドを公開致します。是非後編にもご参加頂ければ幸いです。

さて、現状をまとめたいと思います。

・森までの道のり
魔物を掃討して安全な道を確保することは出来ませんでした。
塔にたどり着くことは出来ましたが、後編で森を通る必要が有る場合、また魔物の群れを突っ切らなければなりません。

・塔の秘密
ナラカと地上を繋ぐ通路を封印するための施設だということが明らかになりました。
制御装置はジョーカー=エーデルの肉体と水晶髑髏によって制御されていて、塔や制御装置を壊すとナラカと地上が繋がってしまう、ということも解っています。
ただし、その情報は現在、ジョーカーと接触した三組、および書庫の探索を行った三組しか知りません。
後編で情報共有を行わない限り、この情報は共有されません。

・商人の正体
商人の正体はナラカの生き物であることが明らかになりました。
なお、奈落人とは異なる性質を持っています。(主に、誰かに憑依しなくても活動できる、分身できるなどの特徴があります。なお本シナリオのみの設定です)

・皆さんの現在位置と状況
※MCのお名前のみ記載しています。LCはMCに同行しているものと判断してください。

<塔の外>
ネーブル・スノーレイン
佐野ルーシェリア
紫月唯斗
辿楼院 刹那
源 鉄心
樹月 刀真
レキ・フォートアウフ
エヴァルト・マルトリッツ

<塔一階> ※全員すぐに二階・塔の外へ移動可能
清泉 北都
佐野 和輝
夜刀神 甚五郎

<塔二階> ※全員すぐに三階へ移動可能
騎沙良 詩穂
ルカルカ・ルー
冴弥 永夜
セレンフィリティ・シャーレット
グラキエス・エンドロア
レリウス・アイゼンヴォルフ
白津 竜造

<塔三階> ※キメラと交戦中
御凪 真人
トマス・ファーニナル
エース・ラグランツ
(エッツェル・アザトース)※参加はLCのみ

(ヴォルフは塔三階で勝手に身を守ったり、隠れたりしています)


と言うわけで後編はいよいよ商人との対決となります。
後編もよろしくお願い致します。

そういえばジョーカーの台詞に一カ所ネタを仕込んでいるのですが、気付いた方はいるかしら。うふふ。