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暴走する機械と彫像の遺跡

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暴走する機械と彫像の遺跡

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■幕間:彫像の記憶

 石女神の遺跡には数多くの彫像が在る。
 その姿は様々で人型から動物まで幅広い。
「この彫像は古王国時代にこの辺りに生息していた動物を模しているようですね」
 メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)は目前の彫像を調べながら言った。
 彼の背後、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は感嘆の声をあげる。
「メシエはさすがに詳しいな」
「この程度で詳しいということはないよ。しかし思ったよりも彫像が多いな。いや、多すぎると言ってもいい」
「それには同意だね。めずらしい遺跡だと俺も思うよ。せっかくだから後でレポートにでもまとめてみるかな」
 彼らが周囲を見回すと、何十体という彫像がそこかしこにあった。
 適当に倉庫に物をしまったらこんな風になるかもしれない。
「ここに来る前に博物館にも寄ったが、この街には災いがやってきたという伝承があるらしい。このあたりの壁画や彫像を見る限りではパラミタ古王国時代の動物が街を襲ったのだろうね。ただ……」
 メシエはそこで言葉を区切った。
「ただ?」
「遺跡と彫像に見られる特徴が違いすぎるのが気になってね」
「そんなに違うのかい?」
「パラミタ文明では国家神や古代種族、巨獣の彫像はめずらしくない。というのも地球同様に信仰の対象となる場合が多いからね。でもこの遺跡は違う。遺跡自体にはそういった彫刻が残っているのに彫像にはその一切がないんだよ」
「それは何を意味してるのかな」
「それをこれから調べるのさ」
 メシエは言うと彫像に触れる。
 脳裏に浮かぶビジョンは佐野と同様だ。しかし――
「これは興味深いね」
「何が見えた?」
「平地を駆け抜けるビジョンが……たしかシャンバラ大荒野は元々緑豊かな土地だったと聞いたことがあったな」
「駆け抜けるって……これが?」
 エースは彫像を見つめる。
 動く気配はまったくない。ただの石像だ。
「硬化していくイメージもあったよ。おそらく石化か封印の類だろうね」
「いわくありげな遺跡だね。あとでこの辺りの伝承なんかを調べてみよう。まだなにかありそうな気がするし」
 エースは言うと手にしたカメラで写真を撮る。被写体は彫像だ。
 色々な角度から撮っていく。資料にするつもりなのだろう。
(封印だとすると『何が』封印されているのだろうね)
 メシエは一人思い、エースと共に調査を続ける。
 そしてかなりの数の彫像を調べて一つの事実に気付いた。

 全ての彫像に機械的な文様が彫り込まれている部分があるということに。