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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 8

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 8

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第13章 After Story2

 ラスコット・アリベルト(らすこっと・ありべると)に質問しようと真宵は部屋を訪れた。
「こんばんは、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」
「何…?」
「(うわ、煙がっ)」
 スモーキングタイムだったようで、部屋の中に煙が充満している。
「質問です、ラスコット先生の家族構成を教えてください」
「えぇ〜。そういうプライベートなことはねぇ…」
「わたくし、今回実戦でかなり助力していたと思いますよ?さぁっ、教えてください!」
 年を教えてもらえないのなら、別の方向から攻めてみようと詰め寄る。
「……地球に父親がいるだけだよ」
「ご結婚は?」
「してないね。オレ、そういうのしない主義だから」
「ほほう、ではカノジョは…?」
「そんなの興味ないし、めんどくさいからいないよ」
 そっけなく適当な態度で言う。
「ぇー、ホントですか?じゃあ昔の好みのタイプとか…」
 過去に悲劇でもあったのでは?と考え、興味津々に聞く。
「じゃー、大和撫子」
 現在、絶滅している可能性大な存在を口にする。
「(う…わぁ〜、それってほぼ発見不能なんじゃ…)」
 それらしい生き物が存在していたか真宵にも分からなかった。
 質問を終えた真宵は、部屋の備え付けの風呂に入る。
「ちょっとテスタメント。早く出なさいよ」
「いやです。今入ったばかりですから!」
 自分ほどではないがこのパートナーもかなり長風呂タイプだ。
「そう?じゃあもっと詰めてよ」
 髪を新た真宵は無理やり湯船に入る。
「ま、真宵。何をするのですか」
「うるさいわね、わたくしが入っちゃ悪い?」
 苦情を訴えるテスタメントを無視し、彼女のエリアを浸食して堂々と浸かる。



「スーツが汗まみれですな」
 ガイは洗濯機に放り込み、風呂場に入る。
「持ってきたのって1着だけなのか?」
「えぇ、手荷物を出来るだけ少なくしておこうと思いましてな」
 移動で疲れないように、運ぶスーツケースを軽くしている。
 軽くシャワーで髪を濡らし、備えつけのシャンプーで洗う。
「それにしても、死人が出なくてよかったですな」
「あぁ。どっちも攻撃的な性格だったが、一般的な理性が欠けてる可能性もあるな」
 シャンプーの泡をシャワーで流し、実戦で遭遇した魔性について語る。
「なんとか説得に成功してよかったですな」
 ガイは湯船に浸かり、説得していた様子を思い出す。
「長風呂しないでさっさと寝るか」
 湯船から出たラルクはリンスで髪を洗い、ボディーソープで体を洗い終わると風呂場を出た。
 ドライヤーで髪を乾かし終えた後、バスローブを纏ったガイが洗濯機の乾燥ボタンを押す。
「ほら、乾かしておけ。そのまま寝ると風邪ひくだろうからな」
「昼間と違って冷えますからな。次はどんな授業を行うのやら…。…おや?眠ってしまいましたな」
 早朝から活動していた影響で、かなり疲労しているらしくラルクはすぐに寝てしまった。



 食事を作って情報交換や反省会をしながら食べようと思ったが、それぞれ予定があったため食事を作る時間がなかった。
 レストランで食事する者がいると聞き、涼介とミリィは厨房を借りる。
 涼介はトマトの皮を湯むきして包丁でカットし、自宅から持ってきた和風だしとレストランにある塩を入れて煮る。
「しょうがとコンソメで味をつけようか」
 数十分煮詰め…。
 ワインや砂糖などを入れて味見をする。
「もう少し煮たほうがよいかな。……よし、そろそろ火を止めるか」
 コンロの火を止めて粉ゼラチンを振り入れ、刻んだパセリを加える。
「ミリィ、氷術で冷やしてくれないか?」
「分かりました、お父様」
「…それくらいでいいよ、ありがとう。さて、パスタを茹でないとな」
 沸騰した鍋に、細めのパスタを入れて茹でる。
「私はフルーツゼリーを作りますわ」
 鍋で溶かしたゼラチンに刻んだマスカットとさくらんぼを入れて氷術で冷やす。
 さらにスライスした桃とメロンを入れて2層目を作り、また氷術で少しだけ冷やした。
 最後に、ミカンとグレープフルーツの層を作る。
「キレイに出来たみたいだね、ミリィ」
「お父様のパスタも美味しそうです」
「家庭で出来るものにしてみたよ」
 親子は料理をトレイに乗せてテーブルへ運ぶ。
「わぁ〜美味しそう。私も食べていい?」
「もちろん、そのために作ったんだからね。レストランに来た皆と食べよう」
「ありがとう!」
 選んだ料理をテーブルに置き、美羽は席に座った。
「お腹すいたね、ベアトーチェ。早く食べよう」
「この料理はマカロニで挟んでますね」
 普通のサイズよりやや大きめなマカロニに、卵や牛ひき肉などが挟んである。
「パスタのソースはゼリー状ですね?」
「トマトのジュレにしてみたんだ。どうかな?」
「とても美味しいです」
 夏らしい爽やかな酸味と甘さのジュレを味わう。
「ねぇ、エリザベート。ラスコットさんは?」
「部屋でお仕事中ですねぇ。何か用事でも……?」
「えっと、もっと立派なエクソシストになるためにはどんな勉強を頑張ったらいい?」
「基礎的な魔道具のコントロール、本当に対象を滅してまわないといけないかの判断とか…。物事を近視眼的に見ないことも大切ですねぇ」
 術を極めるのも大事だが、祓魔師としての判断力も養ったほうがよいと言う。
「それと滅することは、正義でも悪でもありませんから。それも覚えておいてくださいねぇ〜」
「命を消してしまうことだものね」
 周りの声をよく聞き、それから判断することも大事なのだろう。
 美羽はエリザベートの言葉をしっかり心に刻み込む。
「お話はそれくらいにして食べましょう♪」
 ミリィが作ったデザートに手をつける。
「フルーツがいっぱいで美味しいですねぇ〜」
「ラスコットさん、村で事件を解決させた時も仕事中みたいだったけど。ちゃんと食べてるのかしら…」
「すぐ偏食しちゃうから、本当は皆と食事を取らせたいんですけどねぇ。私が頼んだお仕事を早く片付けたいらしいですぅ〜」
 自分のことは棚に上げてゼリーを頬張る。
「今日は、いっぱい祓魔師の修行したよね!」
 もぐもぐパスタを食べながらノーンがエリシアに言う。
「戦う前に説得しようと思いましたが、無駄でしたわね。…冷たい海に入る者は少ないというのに」
「え?何言ってるの、エリシアおねーちゃん。今は夏だよ、夜はちょっと寒いけど昼間は暑かったよ?」
「…そういえば村に行った時は夏でしたわね」
「うん、1日かからないくらいで解決したね。ここに来るために、朝早くて大変だったよ」
「5時起きくらいでしたっけね…」
 ものすごく早い時間に起きたことをエリシアも思い出した。
「陽太からメールが来ていたみたいですわ」
「何々?」
 エリシアの携帯に届いた御神楽 陽太(みかぐら・ようた)からのメールをノーンが覗き込む。

 -合宿2日目ですね-

 今回の実戦の場所は、砂漠の町だそうですね。
 昼間と夜の温度差がありますから、風邪などひかないように気をつけてください。

 俺はちょっと風邪をひいてしまって、妻に看病してもらっています。
 病院の医者が言うには、過労で風邪に対する抵抗力が低下していたようです。
 駅舎のショップの売り上げチェックをしている時…。
 お客さんがせきをしていたので、それでうつってしまったかもしれません。

 休んでいる俺のために、妻が刻みしょうが入りの卵粥を作ってくれました。
 自分で食べるからいいっていうのに、食べさせてくれました。
 誰も見ていなくてもなんだか照れてしまいますね……ははは。

 それでは、またメールします。

 太陽

「……なんですの?この見せびらかしメールは」
 その光景をこっそり妻が撮っていたらしく、メールに添付されていた。
「おにーちゃん、看病してもらってるんだね」
 熱々っぷりを見せ付けられ、呆れた顔をするエリシアの傍ら、ノーンはメールを見てほわわんとする。



 月夜は“ご飯を食べに行こうよ〜”と、刀真の背中に抱き付いておねだりした。
「にゃ〜にゃ〜にゃ〜」
「もうそんな時間か」
「刀真、頑張った我らを労っても良いぞ?今の我はとても疲れている…」
「えっ?」
「疲れていると言っている!」
 労う気配を見せない刀真を尻尾で殴る。
「あばっ!?レストランでやってやるから尻尾で叩くな」
「美味しそうな料理がいっぱいあるよ、玉ちゃん」
「ほう、気が利くではないか」
 パートナーが運んだ料理を、遠慮なく手をつける。
「ん〜…スパイスの効いた肉料理だな」
「トマトのジュレパスタ、この美味しいよ」
「ふぅ。さぁ労うがよい」
 ちらりと刀真へ目を向ける。
「あ、はい」
 マッサージを要求する玉藻の肩を揉む。
「(校長に意見を聞く時間はなさそうだな…)」
 シャンバラ電機のノートパソコンに転送したデータを、小さくする時間がなくなってしまった。
 手を休める度に、玉藻に尻尾でばしばし叩かれるし、また別の機会にするか…と心の中で呟いた。