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新興都市シズレの陰謀

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新興都市シズレの陰謀

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▼序章 水面下の動き


◆地下エネルギープラント・最深部◆

「やっぱり、契約者共が外に集まってるみたいですぜ?」

 報告を受けに出払っていたカルロスは、
 部屋に戻るなり簡潔に情報を伝えつつ、ソファに腰を落とす。

「なんでも教導団と恐竜騎士団、2つの組織から部隊がやってきてるそうです。
 大半は、地上に棄てた失敗作と遊んでくれちゃってるみてェですが……
 それを引いても、相当の数が突入してきそうだって話です」

 報告を受けたジェラルドは、振り向きもせずしばらく無言のまま考えこんでいた。
 やがて時計の針が半周ほどして、
 カルロスとしてはそろそろ居心地が悪くなってきた頃―――
 ようやく、ジェラルドが口を開いた。

「やむを得んな、『6月の花嫁』を使い、私が迎撃しよう。
 カルロス、お前にはその起動作業と、抽出機周辺防衛の任務を与える」
「……よろしいんですかい?
 あれはまだ不安定なもんで、起動には相応の犠牲が必要だと思いやすが」
「背に腹は代えられん。80番台と90番台は全て接続し、出力を高に設定。
 更に、要所以外の光源などを全て落とし、過剰分のエネルギーも回すんだ」
「かしこまりやした……迎撃はお一人で?」

 ジェラルドはニヤリと顔を歪め、剣の鞘のような物を掲げてみせる。

「安心しろ……こいつがある限り、私は無敵だ





◆地下エネルギープラント・保存庫◆

 こちらは少し前のこと。

「…………」
「あら、気がついたみたいね」

 ジュリエンヌ商会暗部の人間に、保存庫と呼称される場所。
 その一室で、熾月 瑛菜(しづき・えいな)は目を覚ました。

「あんた、商会幹部の……」
モルガナよ。今の名前は―――だけどね?」

 含みのある物言いだったが、瑛菜が気にしているのはそこではない。
 おぼろげな記憶の中……
 彼女、モルガナが、自分を懸命に治療してくれていた事についてだ。
 試しに体全体を動かしてみたところ、
 お陰様で怪物から受けた脚の怪我まで、全て完治していた。
 それだけではない―――拘束に使われていたはずの縄が解かれている。
 『茨の鞭』など手慣れている武装は奪われたままだが、
 その気になれば全力で戦闘可能な状態である。

「治療の腕、なかなかでしょう?」
「……あのカルロスって男の仲間だろ、あんた……どうしてあたしを助けたりする?」
「別に、商会長が貴女を人質に使いたいって言ってたから、死なないように治しただけよ」

 嘘だ。
 人質に使う予定なら、かろうじて生きているくらいでもちょうど良いはず。
 まして縄を解くなんて、意味がわからない……
 抵抗される危険性を考えたら、絶対にありえない所行ではないか?
 と、そんな瑛菜を横目に、これで私の任務は終わりね、と背を伸ばすモルガナ。
 彼女はもはや、瑛菜の方を全く見ていない。

「さてと、任務が終わったわけだから、ここからは私の自由よねー」

 そう言い残して、モルガナはさっさと出て行こうとする。
 瑛菜はハッと我に返って、状況を整理する。

(部屋の出口にはロック付きの扉がある……。
 なんでか警戒が薄いけど、さすがにロックせずに去るってことは無いよね)

 つまり、脱走するなら今しかないということだ。

(……いくしかない。
 真意が掴めないままなのは気持ち悪いけど、この状況なら勝機はあるッ!!)

 そうして、モルガナが扉に手をかけようとした、次の瞬間。
 彼女の無防備な背中に、瑛菜は飛びかかった。