校長室
婚活卯月祭、開催中!!
リアクション公開中!
和深たちがお互いにお互いを意識しながらギクシャクと歩いている道のほど近くで、キロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)とアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)がピクニックをしていた。 ……と、書くと語弊がある。確かにレジャーシートに座ったアルテミスは白いワンピースに帽子というデート用の可愛い格好をしており、キロスの前にお手製の弁当を広げている。 だがしかし。これは、決闘前の食事なのである。 ――数日前。 「アルテミスちゃん。今、卯月祭というお祭りをやってるそうですから、キロスさんを誘って行ってみたらどう? 今まで色々迷惑をかけてるんですし」 「ええっ?! わ、わたしがキロスさんを、さ、誘うんですかっ?! き、騎士たるもの、そ、そのような軟弱なことをするわけにはっ!」 高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)の提案に、アルテミスは驚くほどうろたえた。普段、恐ろしいほどの行動力でキロスにアタック(無意識)しているにも関わらず、だ。 「騎士は、礼儀を重んじるんでしょ? こういう時は、素直にいつものお詫びをしておくべきじゃないかしら?」 「……わ、わかりましたっ! そ、それでは、キロスさんに、決闘の申し込みをしておきますっ!」 咲耶に半ば言いくるめられるようにして、意気込むアルテミス。 「……。あ、あの……、それで、咲耶お姉ちゃん……」 「なあに?」 「も、もし良かったら、お、お弁当の作り方、教えて……」 「え?お弁当の作り方? ええ、いいわよ。いくらでも教えてあげるわね」 こうして、アルテミスは咲耶に習った弁当を携え、キロスを誘ってピクニックに行くことになったのだった。 「あれー、めずらしー。アルテミス料理してるんだー」 卯月祭当日、朝の五時過ぎ。寝る前に夜食を求めてキッチンを訪れたデメテール・テスモポリス(でめてーる・てすもぽりす)は、アルテミスの姿を見付けた。アルテミスは、デメテールに気付いていない。 「朝5時起きでお弁当作るなんて、真面目だねー、アルテミスは。どれどれ、デメテールが味見してあげようっ」 と、気配を消して疾風のごとくつまみ食いをしたでデメテールだったが。 「なっ……、こ、これはっ……!!」 咲耶にお弁当の作り方を習ったアルテミスだったが、――咲耶は『殺人的調理師』だったのである。 「咲耶とおなじ……りょう……り……」 謎のうごめく料理……のようなものを食べてしまったデメテールは、その場に崩れ落ちた。 そんなわけで、アルテミスはデメテールの持つ適者生存の効果さえかき消す、恐ろしい料理を持って卯月祭の会場に向かったのである。