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正体不明の魔術師との対決準備?

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正体不明の魔術師との対決準備?

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 双子が生気の無い顔で仕事に従事していた時、
「心配で来てみたら元気そうだな、ヒスミ、キスミ」
「作業の進み具合はどうですか?」
 最後の引率者であるシリウスとリーブラが合流した。

「……これが元気に見えるかよ?」
「ん〜、ぼちぼち」
 厳しい監視の目にさらされすっかり元気は無いが、目の奥に何とかしてサボるぞという意思がきらめいていたり。
「おいおい、まさか、こないだ襲われたばっかで、撃退作戦の準備をさぼるって気は無いよな?」
 シリウスは双子がサボる事を諦めていない事を見抜き、少々厳しい口調で問う。
「……」
 双子は図星を見抜かれ沈黙してしまう。
「ほぅ、その顔は作業をどころじゃない何かを掴んで気もそぞろ……ってあたりか?」
 シリウスはニヤリと口の端に笑みを浮かべる。わざとらしいノリで。
「……それは、なぁ?」
「だよな」
 双子はいつもと違うシリウスの様子に戸惑い、返答に口ごもる。
「そうだよな。よし、行くか! という事でヒスミたちが何か遺跡に感じたそうだ! 念のため一緒に調査してくる! 何かあったら携帯に連絡してくれ! ほら、行くぞ!」
 シリウスは双子から監視者一同に向き直り、大声で言うなり返事を待たずにすたこらさっさと行ってしまった。

「あ、おい!」
「待てよ!」
 双子も急いでシリウスの背中を追った。

「もぅ、シリウスは。あの、すみません。抜けた分の仕事はしっかり後で三人にさせますから!」
 残されたリーブラはまさかの展開に呆れ、監視者一同に頭を下げてからシリウス達を追いかけた。
 残された監視者一同は一瞬だけ呆然とするもすぐに落ち着きを取り戻した。なぜならシリウスとリーブラを信頼していたからだ。

 監視者達から離れて。
「どうだ、無事にサボれたろ? さて、オレは魔法理論はからっきしだから前は任せる。好きにやってみな。何かあったら後ろくらいは守ってやるから」
 シリウスはニカと笑いながら言った。
「おう、サンキュー!」
「よし、ヒスミ、今度は遺跡の奥に行ってみようぜ」
 シリウスのおかげで自由になった双子は早速、最深部を目指して歩き始めた。
「シ〜リ〜ウ〜ス」
 最後にやって来たリーブラがシリウスに背後から現れた。笑顔だが怒っているのは明らか。
「おっ、リーブラか。そう怒るなって」
 振り向いたシリウスは軽く笑ってやって来たリーブラを迎える。
「怒りますわよ。引率に来たはずがあなたまで悪戯小僧になってどうするんですか、もう!」
「更正させるのは無理そうだから“有能な怠け者”にでもなって貰おうと思ってな」
 まだ怒っているリーブラにシリウスは軽く言ってから双子を見失わないように歩き始めた。
「だからといって悪知恵の使い方を教えてどうするんですか」
 リーブラは呆れたようにシリウスに言ってから楽しそうにお宝探しにあちこち歩き回る双子の様子を見る。
 そして、
「はぁ、仕方ありませんわね。ちゃんと報告できるよう、遺跡調査の記録を残しながら進んで下さいな。そうすれば、何もなければないで『現在の安全を確認できた』という報告ができるでしょう? それは他の皆さんにも有益なはずですわ」
 リーブラはこのまま遺跡調査に付き合う事を決めた。
「……よろしいですわね、三人とも?」
 リーブラは怖い笑顔でシリウスと双子に釘を刺した。
「……りょ、了解」
「お、おう」
 リーブラの気迫に押された双子は思わず敬礼で答えた。
「あぁ、分かったって」
 シリウスは苦笑気味に答えた。
 シリウス達と双子はこのままお宝探しをしながら最深部を目指した。
 途中、凶暴化した動物に遭遇するが、シリウスの『ルーン空間結界』で双子を守り、リーブラが光条兵器で気絶させて進んだ。

「魔法中毒者だけに見つける素材も魔石も上質な物ばかりだな」
 恭也は入り口付近は無視してひたすら最深部を目指しつつも価値が有りそうな素材や魔石などは忘れずに回収していた。
「……このレシピも書物も回収しとくか」
 『オカルト』を持つ恭也は役には立たないが貴重な魔法薬のレシピや書物も回収。
 時々、凶暴化した動物に遭遇するもイーダフェルトソードの『抜刀術』で瞬時に片付けて行く。

 そうこう進んでいるうちに最深部。

「……地図だとこの辺りから最深部か。こういう遺跡のお約束と言ったら隠し部屋のお宝とそれを守る番人だよな」
 恭也は他の人から貰った地図で現在地を確認しながらまだ見ぬ最深部に存在していると思われる隠し部屋を想像していた。
 現在地の確認を終了してから先を急いだ。
 それからしばらく後、
「ん? 誰かいるな。おい!」
 恭也は壁の前に突っ立っている団体を発見し、大声で声をかけながら近付いた。
「……お前もこの部屋に用事があるのか?」
 一番に恭也に気付いたシリウスが振り向いた。
「部屋というと隠し部屋か」
 恭也は目の前の壁に視線を向ける。どうやら想像していた通り隠し部屋は存在していたようだ。
「開けないのか?」
 恭也はふと疑問に思った事を訊ねた。隠し部屋と分かっているのならさっさと扉を見つけて入ればいいのにそれをしていないから。
「いや、開かねぇんだよ。隠しレバーとかスイッチとか探したけど見つからねぇんだ」
 とヒスミが肩をすくめながら答えた。
「魔法などはかけられていないんですが」
 リーブラが困ったようにヒスミの言葉に追加する。
「となれば、これだろ」
 恭也は対イコン用手榴弾を取り出した。入り口が無いのなら自分達で入り口を作ればいいだけのこと。

「おおっ、手榴弾か」
「いいんじゃね?」
 面白い展開にわくわくし始める双子。

「大丈夫か?」
 シリウスが安全性について訊ねた。何せここは遺跡なので少しの衝撃で瓦礫の山というのも有り得なくはない。
「火薬の量は調節するから問題無い。ダンジョンRPGって言えば爆発物で壁ブチ抜いたり力押しが定番だろ。まぁ、俺の場合だけど」
 恭也は適当に答えてから手榴弾の火薬量を減らして準備を整える。
 準備が整うとシリウス達と双子は安全圏まで離れて静かに見守る。
「おーし、一発どかんと」
「いけ!」
 双子は手榴弾を壁に向かってぶん投げる恭也を応援していた。

 恭也が勢いよく投げた手榴弾は激しい爆裂音をとどろかせ、粉塵を生み出した。
 皆は万が一の事を考え粉塵が収まるまで安全圏からは動かない。
 粉塵が晴れて現れたのはがっつりと壁がぶち抜けられた隠し部屋だった。
「すげぇ、綺麗に壁をぶち抜いてるぞ」
「……お宝は無いな」
 双子は早速隠し部屋に入るなり、目に付く宝は無いかと探すも何も無かった。