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血に染まる学園

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血に染まる学園

リアクション

 切断した部位から漂う血の匂いを、超感覚で追って祭壇のある場所まで来る事に成功したラルド・ヴィッセル(らるど・う゛ぃっせる)

 そこには複数の祭壇が壇上の上にあり、その下に耀・アルベール・荒神・セレンフィリティそして、フードをかぶって顔がえないがソラン・ジーバルス(そらん・じーばるす)が思い思いに座っていた。

 隠れ身で様子を窺っていると、五体満足の死体をどう分解するか議論しているのが聴こえてくる。

「(1、2、……5人か。まだ儀式が始まってる様子は窺えないが、これからすんのか?)」
『よーし、じゃぁ、このまとまってるヤツ、分解しよっか!』
「(は?)」
『動かないし、一人一体ね!』

 取り仕切っているのがまだ幼い耀であることに驚きを隠せないラルド。
 耀に言われ、時鍵とユーリの解体が始まる。

 肉の潰れる音、腱が切れていく音、ぐちゅぐちゅといったなんとも形容しがたい音が静かな空間に反響していく。
 解体している人物の一人の衣服に血染めの百合の頭飾りがくっ付いている事に気付いたラルド。

「(あの百合の首飾りは……時鍵……!)」

 時鍵が死んだことに気付いたラルドが、ぐぎりと歯を食いしばる。

「(落ちつけ……今ならあいつらの視線はあの死体に向かってる……このチャンスを無駄にしてたまるか)」

 この場に入る人たちの視線は解体中の死体に集まっているのを好機ととらえたラルドは、今まさに見ている状況をパラミタがくしゅうちょうに記していく。
 書き上げると、メモを始末されないよう、最魂剣で刺しておき、ラルドは祭壇を破壊しようと接近する。

「(もらった!)」

 ブーストソードを振り上げ、いざ壇上に上がろうとした際、アルベールが用意した道具で作った荒神のトラップに引っ掛かり、ラルドは捕まってしまった。

「ネズミがどうやら居たようだね」
「隠れ身でも使ってたかな?」
「あぁ! 離せっ離しやがれ!!」

 じたばたと暴れて拘束している縄を解こうともがくラルド。
 暴れている際、視線の先に解体された時鍵の頭が。

「と、時鍵……!? くそがぁぁっぁぁぁああああああ!!」

 死んだと気付いていても、実際に見るとでは受け取る感情が余りにも違いすぎる。
 獣のような叫びを上げ悲しむラルド。

「そう言えば、これで三人が蘇る事が出来るね!」

 たたっと壇上を駆け上がり、耀は祭壇に並べていたパーツをいくつか並び変える。
 3つの祭壇にはあちこち穴があいている状態にして、ソランとアルベールの方を見降ろす耀。

「もうすぐ逢えるんだね」
「主の意のままに」

 耀の視線を受けて、ソランは左足を、アルベールは頭部を自ら斬り落とした。
 血を噴き出しつつ倒れていくアルベール。
 ソランは切断した部位に青赳槍のワイヤーで止血する。

「な、なにやってんだよ、てめぇら……」

 思考が付いて行けず、茫然とことの成り行きを見るしかないラルド。
 捧げられた頭と左足を祭壇に乗せる耀。

「あとは、もう一体分と右腕分だけど、誰が右腕を捧げてくれる?」
「それなら、私が」

 そう言って右腕を捧げるソラン。そちらも左足同様止血する。

「じゃ、あとはコレを分解しなくちゃね」
「これで、セレアナを蘇らせる事が出来る……」

 歪んだ表情でゆっくりと近づいてくるセレンフィリティ。

「や、やめろ……来るな……」

 それで止まるはずもなく、かみさまを呼ぶ為の供物とされてしまったラルドだったモノ。
 それぞれに分解された肉塊を、耀が空いていた場所に置いて行く。

 こうしてそれぞれ頭の部分にはトリア・セレアナ・アルベールの頭を。
 右腕には、時鍵・ラルド・ソランの右腕を。
 左腕には、ラルド・時鍵・香菜の左腕を。
 右足には、ジェライザ・ユーリ・ラルドの右足を。
 左足には、ソラン・ジェライザ・ユーリの左足を。
 胴体には、ユーリ・キャンディス・時鍵の胴体を。

 3体分の供物を捧げる事に成功した耀たち。
 地響きと共に、黒・赤・紫の人型が捧げられたパーツを天に掲げる。
 宙に浮いたパーツは光と共に1柱の神々しい人型となった。
 ただし、逆光で表情を見る事はかなわないが。

「はじめまして、かみさま。現世はどう?」
『……………久々にこちらへ来たようだ……そちらの望みはなんだ。願いを3つ叶えてやろう』
「だってさ。三人は逢いたい人がいるんでしょ? 願い事はなぁに?」

 現れたかみさまと言葉を交わせた耀は、いたい人を待っていたソラン、セレンフィリティ、荒神にそう尋ねる。

「俺は数年前に失ってしまった綾を蘇らせてほしい」
「私は私のせいで死んでしまったお姉ちゃん……ニーナを蘇らせてほしい」
「あたしは、目の前で死んでしまったセレアナを蘇らせてほしい」
『それが今回の望みか……よかろう』

 かみさまが手を横に振ると、自らの身体を3つに分かち、ソランにはニーナを、荒神には綾を、セレンフィリティにはセレアナを創りだした。
 視える存在としてのかみさまは居なくなったが、確かにこの場にいる気配はする。

「荒神……?」
「ソラン?」
「セレン?」

 三人がそれぞれ思い人の方を見てそう口を開く。
 三人が呼びもどされた事を知る荒神たち。

「「「かみさま。綾を/ニーナを/セレアナを/蘇らせて下さりありがとうございます」」」

 感謝の意を貰い受けたかみさまは、使者の3柱と共に消えて行った。
 残されたのは、かみさまによって創られた身体はばらされたパーツがそのままくっ付き、中身だけが思い人の魂であった三人の姿だけ。
 再び会う事が出来たことを喜ぶ三人。しかし、蘇った者は今一つ自分が生き返ったことに慣れないでいた。


 蘇らせた三人の喜びもつかの間。

 かつみたちによって真実を、ラルドによって現状を知った某がこちらに入ってきたことにより、喜びの空間は破壊されたのだった……。