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リアクション
二章 探索と調査
ヨルクらが倉庫に向かう途中、何名かの契約者と出会う機会があった。
佐々布 牡丹(さそう・ぼたん)とレナリィ・クエーサー(れなりぃ・くえーさー)、東 朱鷺(あずま・とき)、佐野 和輝(さの・かずき)とアニス・パラス(あにす・ぱらす)、スフィア・ホーク(すふぃあ・ほーく)である。
事情を聞いた牡丹、レナリィ、朱鷺はヨルクと合流、しかし和輝、アニス、スフィアは独自行動を取ることを告げた。
「俺たちは、ヴェーネルトの家に行く」
ヨルクは難しい顔をした。
「私の家には、機甲虫に関する調査結果を纏めたノートがある。しかしこの騒ぎだ。燃えてしまっている可能性が非常に高い」
「構わない。可能性は多い方がいいだろう」
「そうだな……。私の家は病院のすぐ隣にある。道に迷ったら、病院を探すんだ。
念のため、携帯電話の番号も交換しておこう。健闘を祈るよ」
和輝らと別れると、ヨルクと契約者の集団は倉庫の探索を開始した。
アルト・ロニアにはあちこちに倉庫が乱立している。機甲虫の襲撃によりほとんど倉庫は焼失してしまったが、奇跡的に延焼を免れた倉庫もあった。
ここ十七番倉庫もその内の一つだ。さほど広くない倉庫の中を探りながら、レナリィは明るい声で言った。
「機甲虫に効果のある物ってなんだろうね〜? 『虫』って言うぐらいだから、やっぱりナントカジェットみたいな感じの物かな〜?」
「ナントカジェットがどういう物かは知らないが……機甲虫に対抗できるのなら、何だっていいさ」
薄暗い倉庫の中を懐中電灯で照らしながら、ヨルクは保管された遺物を一つずつチェックしていく。
凹んだ円盤、揚羽蝶の銅像、ヒビの入った水晶球、謎の文字が刻まれた石版……妙な物が随分とあった。床に無造作に置かれた遺物の埃を払いながら、ヨルクが告げた。
「ダメだ、使えそうな物が無い。次の倉庫に向かおう」
上空から機甲虫が迫ってきたのは、ヨルクらが倉庫を出た直後であった。
……ウゥゥゥゥン……
ヨルクらと共に倉庫から出た佐々布 牡丹は、上空より迫る機甲虫を捉えた。
「みんな、逃げろ! レーザーが来る!」
ヨルクが警告した直後、宙を飛翔する機甲虫の口が大きく開き、砲門を思わせる装置が前方に迫り出す。
恐らく、あれがレーザーを照射するための装置なのだろう。ヨルクが慌てて逃走の指示を出す中、牡丹はマグネティックフィールドを使った。
レーザー自体は曲げることは出来ないが、機甲虫自体は金属で出来ている。発生した磁場に機甲虫の体が反発し、レーザーの射線が大幅にずれた。
レーザーは目には見えない。光速だからだ。もしレーザーが見えたとしたら、大気を漂う粉塵や微粒子に光が乱反射しているからだ。
膨大な熱が真上を通過するのが分かった。一拍遅れて、ズズズ……という音が後方から響く。
振り返ると、背後の倉庫が溶解していた。屋根の部分は大半が蒸発してしまっており、かろうじて残った部分も赤熱化して融け落ちている。
レーザーの威力を目の当たりにし、牡丹はごくりと喉を鳴らした。
「これは……生身で受けたら一溜まりもありませんね」
「だが、弱点でもある」
機甲虫はレーザー照射装置を口腔内にしまい込むと、口を閉じた。同時に装甲各部が開き、内部に籠もった熱が放出される。
しかし、その動きは鈍い。リネン、ヘリワード、牡丹、レナリィ、朱鷺、空賊団員らは散開すると、機甲虫を取り囲んだ。
「奴らは一度レーザーを照射すると、体内器官を冷却する必要がある。
冷却期間は五分だ。五分経たないと、レーザーを再照射できない」
ヨルクの話を受け、牡丹は頷いた。
ならば話は早い。冷却が終わるまでに、機甲虫を倒してしまえばいいのだ。
契約者たちは、一斉に機甲虫に飛びかかった。
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