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忘れたき黒歴史の流出危機

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忘れたき黒歴史の流出危機

リアクション

「フハハハ! 我が名は世界征服をたくらむ、悪の秘密結社オリュンポスが大幹部であり、
天才科学者であるドクター・ハデス(どくたー・はです)である! 『社会を変える』という志を持つ同志の助太刀に来た!」
 白衣をなびかせメガネを光らせて契約者たちを威嚇するハデス。
 更に、運が悪いことにハデスの部下? 忠臣?である者が三者三様の顔で待ち構えていた。
「む、武李様? メイドとして仕えさせて頂いて光栄なのですが、その……私に関するデータは消去してくださいませんか?」
 と、必死な形相で自身にまつわるデータの削除を願い出るメイド姿の高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)
「ここから先には行かせませんよ?」
 意気込み、気合たっぷりに契約者たちを見据える怪人 デスストーカー(かいじん・ですすとーかー)
「ふむ、アテが外れましたね。まあ、そちらのほうが楽でいいでしょう」
 余裕さを決して失わず、涼しい笑顔を浮かべる天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)
 プラスで秘密結社オリュンポス在籍の戦闘員たちが「ヒィー!」とか「フゥー!」と言いつつ、シャドウボクシングをしている。
 いろんな意味で強敵である。
「これはまた、厄介なのが出てきたわね」
「それでも引くわけにはまいりません」
 個性ばっちりの敵の登場に頭を抱えそうになるルゥ・ムーンナル(るぅ・むーんなる)と、それに合わせて相槌を打つメルティナ・バーンブレス(めるてぃな・ばーんぶれす)
 ただその実、メルティナの心の中では色々な思いが渦巻いていた。
(とは言うものの、ルゥさんの黒歴史……とっても知りたい。教えてくれとは言えませんが……仮にそれを知ったとしても全て受け止める覚悟は出来ています。私は、あなたには負けません!)
 心中で思いを巡らせながら雅羅をしっかりと見るメルティナ。が、当の本人である雅羅の顔色は優れない。
「ど、どうかしたの雅羅?」
 様子がおかしい雅羅を見かねてルゥがそう尋ねると、雅羅はゆっくりと返答をした。
「私の中のカラミティアラートが警報を鳴らし続けているのよ……『今すぐ武李を無力化しろ』って」
「カラミティアラートってまた大げさな……」
 雅羅の過剰とも思える言い草に、ルゥは何もいえなくなった。何故ならば、彼女が自他共に認める災厄引き寄せ体質だからだ。
「さあ武李よ! 貴様の本気を見せつけろ! 黒歴史の一つや二つ、バラしてみせるのだ!」
「ななななんだかよくわからないけど……こうなったらやれるとこまでやってやる! ってことで黒歴史を暴露します! ターゲットは、雅羅、さんです!」
 アラート大正解である。

-----雅羅・サンダース三世の黒歴史-----
「そ、その外見からもわかるかもしれないけど、雅羅、さんは元々高飛車な部分があり、
結構前まではぶいぶいしていたこともあったらしいけれど、
最近はいろんな人に「雅羅なら(どんなことがあっても)仕方ない」「雅羅なら(何でも)ありえる」「事件あるところに雅羅あり」なななんて言われ始めて、自分がネタキャラ化しつつある?と悩んでいる。
だだからさ、最近寝る前に数十分、高笑いの練習をしたり、お嬢様口調でしゃべってみたりと躍起になっている模様……ふ、ふひ」(蒙 武李談)
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「そんなことないわよ! そんなことないわよ!!」
 極々最近のことを暴露された雅羅がなりふり構わず武李へ向かう。それを待ち受けるは武李&ハデス連合軍『秘密結社オリュンポス 〜社会の歯車なぞクソ食らえ!〜』。そのコマンダーであるハデスが部下たちに指示を飛ばす。
「冷静さを欠き猛進してくる相手など恐れるに足らず! 待ち構え、迎え撃つのだ!」
「了解しました、ハデス師匠! これより戦闘員を率いて、侵入者の迎撃をおこないます!」
「うぐぐ、こうなれば戦うほかありません! みなさん、お覚悟をっ!」
 いつもならハデスのストッパーとして機能する咲耶も黒歴史流出の危機を前にしては、メイド姿でその辺にあったモップを構え立ちふさがるしかできない。
 また、ハデスの声に呼応しその心を奮い立たせるデスストーカーも、先ほどのハデスの指示に従い雅羅を待ち受ける。
「では私は念のため、予防策をしいておきましょう」
 ダメ押しといわんばかりに情報の攪乱を行い、妨害に対する妨害網をしく十六凪。
 このままでは雅羅が迎え撃たれ、多分パンチラ的なハプニングとかが起きてしまうかもしれない。
 しかし、そんな旗すらもぶち折る者がいた。
「ククク、では俺も武李に習い素敵な過去を暴露しよう! とくとその細胞に刻むがよい!」

-----高天原 咲耶の黒歴史-----(え、わたしですか!?)
「まずはこれを見るのだ!(あ、それはっ!!)
これは中学生の頃の咲耶の写真である。その身に纏いしは女幹部(悪)のものだ。(し、しまってください!)
この満面の笑顔、今は見ることも少ないがこの頃は他にもいろんなコスプ

「ストーーーーーップ!」
「わぷっ!? い、いきなり何をする!」
「兄さんこそいきなり何言ってるんですか! 言うのなら自分のにしてくださいよ!」」
 兄であるハデスの突然の暴露、それは咲耶自身のものだったのだ。咲耶が怒るのも無理はない。
「しかし、俺に黒歴史など……『秘密結社オリュンポス』を設立し、その天才的な頭脳を駆使し世界征服を目前に控えたこの天才科学者『ドクターハデス』に黒歴史など……」

――――エラー発生。エラー発生。システムを修復します。

 AIはがっちりと反応していた。
「……味方だと思ったら敵だった死にたい」
「武李様! 何も言わずに立ち去ろうとしないでください!」
 物語の(一応)ラスボス的存在である武李がいきなり途中退場しようとするのを必死に止める部下。
 仮に部下がいなければ物語はここで終了していたかもしれない。
「何だかよくわからないけど、向こうの指揮系統はほぼ死んだようね。いっきに攻め込むわよ!」
「了解しました」
 ハデスたちの仲違いを好機と判断したルゥとメルティナが雅羅を援護するために前進。
 渾身の力を一歩一歩に込めて、雅羅との距離を縮めていく。
 だが、そこへデスストーカーが立ちふさがる。
「過去にとらわれることがどれだけ無意味か、僕はハデス師匠たちに教わった! だから過去に囚われ自分の過去を否定しようという君たちに負けるわけにはいかっ」
「話がながーい! あと、そんなことなーい!」
「うぐわー!」
 ……気合は十分なのだが、しかし現実は非情。デスストーカーにはまだ、強さが足りていなかった。
 ちなみに今の雅羅は狂化モードのため通常の三倍くらいのステータスをほこる。
「ったく、冷静になりなさい!」

―――ピシッ!

「あたっ! な、なにするのよ!」
「暴走していた貴女を止めただけ。メルティナ、そっちは任せるわ」
「仰せのままに!」
 そう言って寄ってくる武李の部下たちを、ほどよく手加減しながらあしらっていくメルティナ。
 一方のルゥは自分も黒歴史をバラす覚悟を決める。
「もう、仕方ないわね。……ちゃちゃっと言うから、ささっと聞いて流して頂戴ね」
 そう言った後、ルゥがゆっくりと言葉を紡ぎ始める。

-----ルゥ・ムーンナルの黒歴史-----
「子供の頃から今でもずっと詩(ポエム)を書き続けているわ。
思い浮かんだことをぱっと詩にしただけとか……まあ色々よ。
例えば、『雲さんこんにちは』とか『カエルさんこんにちは』、そこから色々書き連ねていったりするわ」(ルゥ・ムーンナル談)
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「……やっぱ、言わなきゃよかった」
「ルゥさんにそんな趣味が……でも、素敵だと思います」
 暴露後の羞恥心に襲われるルゥと、まだ知らないルゥの一面を知ることが出来たメルティナ。
 更にメルティナはいま一歩踏み込んでみる。
「ところでまだ他にもあるそうですが、そちらは一体?」
「それは……いや、うん。機会があれば言う。機会があれば、ね……」
「ならその機会を得るためにも、この場を切り抜けましょう!」
「……?」
 やけにやる気になっているメルティナを不思議そうに見つめるルゥ。……どうやら、メルティナの心が若干先行しすぎているようだ。
 未だ恥ずかしさから脱却できないルゥは、それを和らげるように雅羅へと話しかける。
「ああそうだ、雅羅? ……貴女に“もらったパンツ”、とりあえず保管してるから、返してほしかったら言ってね? 気合の入ったものなら、それなりにお値段するものなんでしょうし。私が持ってても記念品くらいにしかならないし」
「やめてー! その話はやめてー! もう下着の話はしないでー!」
 ……雅羅に軽度のトラウマが残らないこと、それを願うばかりだった。