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水上公園祭典 華やかファッションショー

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水上公園祭典 華やかファッションショー

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第 1 章 -リハーサル-

 ヴァイシャリーの水上公園で行われるファッションショーの前日、ステージ設営の準備に慌ただしく人の出入りがある中、モデル出場のリハーサルが始められた。
九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)さん、背筋は真っ直ぐに伸ばして下さいな。そう、いいですわね……もう少し注文をつけさせて頂ければ、そうね……歩幅に気を付けましょう」
 ラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)が舞台の上を歩くローズを始め、モデル参加者達へ歩き方の指導をしていく。ソロも良し、ペアも良しなファッションショーに選んだテーマの衣装の魅せ方を優雅に決めていくリハーサルの横で桜井 静香(さくらい・しずか)が司会進行と実況として手伝いをかって出てくれたリョージュ・ムテン(りょーじゅ・むてん)枝々咲 色花(ししざき・しきか)へ手順を説明していく。
「当日はお2人の盛り上げも重要なお役目です、といってもそんなに難しく考えなくても大丈夫ですよ。司会のリョージュさんは参加者さん達にインタビューも入れてもらって、実況の色花さんはモデルさん達の演出をアピールしてくれると舞台の外にいる人とかにもよく伝わると思うから」
「ほんとは喋るの……あまり得意じゃないけれど、頑張ります」
「盛り上げ役ならオレに任せな! 何なら今すぐモデルの子達を口説いて……っ」
 リョージュの言葉はそこで途切れ、何事もなかったかのようにその続きを口にする事はなかった。何となく彼の視線の先を見ると、ラズィーヤが優雅な微笑みを浮かべて威圧している。そのラズィーヤの横では白石 忍(しろいし・しのぶ)がオロオロとしながらリョージュのナンパ発言を見逃してくれるよう謝り倒していた。


 ◇   ◇   ◇


 ショーの順番を決め、いよいよ衣装選びに入るとモデルの参加者は見事に女性ばかりとなったものの男性部門で用意された衣装で男装する女性も数多いる事から、披露に問題はないとされたのでした。
「残念、チアガールの衣装はないのねぇ」
 桜月 舞香(さくらづき・まいか)がぽつりと呟いて別の衣装を選びにかかる。家庭科部の生徒達も衣装選びを手伝いながら、袖や裾の直しが必要な衣装を手早く直していったのでした。

「でも、私達が採寸するのを嫌がる人が居たんですけど……どうしてかしら。女の子同士なのに」
 衣装を合わせながら直す家庭科部の生徒には、1つの小さな疑問を残したのでした。


 ◇   ◇   ◇


 ステージのスポットライトの位置を最終確認の為、リョージュはマイクを持って実に楽しそうに動き回っていた。実況の練習とばかりに、色花はリョージュの動きを見たまま放送していく。
「リョージュさんが大道具さんに怒られている模様です……ステージの床を指差して、どうやら立ち位置を知らせるテープが剥がれてしまったようです。リョージュさん、靴の裏にテープを見つけたのでしょうか。……この調子で喋り続けるのは、相当頑張らないと……」
 実況をしつつ、独り言が混じりながら練習する色花とスポットライトに次第にテンションを上げるリョージュ。ラズィーヤからの特訓を再び受けるローズなど、ファッションショーを控えた会場は徐々に熱気を高めていくのでした。