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学生たちの休日15+……ウソです14+です。

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学生たちの休日15+……ウソです14+です。
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    ★    ★    ★

「ふふふふ、やっとこの日がやってきたわ」
 セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の操縦する小型飛空艇に乗って鷽の巣へやってきたセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が、復習に瞳を燃やした。
 過去何度も鷽に酷い目に遭っているのだ。今年こそ、一矢報いてやろうということらしい。
「あんまり気合い入れすぎると、反動が怖いわよ……」
 なんだかろくなことになりそうにないと、一応セレアナ・ミアキスがセレンフィリティ・シャーレットに釘を刺した。
「何を言っているのよ。あんなにうじゃうじゃいる鷽たちを見逃せって言うの?」
 そんなことを言われても、セレンフィリティ・シャーレットとしては、鷽を倒す気満々だ。
「だいたい、この華麗なボディラインと脚線美を顕わにした私たちの服装を、ほとんど裸同然だとか……」
 言ったとたんに、なんかスースーした。
「きゃあ、レオタードが消えてる!」
 セレアナ・ミアキスがあわてて胸を隠そうとしたので、小型飛空艇が墜落して地上近くの藪に突っ込む。
「あいたたた、お肌に葉っぱがちくちくして……。おのれ、鷽め! 絶対に許すものですかあ。ふふふ、ここにこうして集まってくれているとは、好都合。まさに飛んで火に入る夏の虫よ、いや、エイプリルフールの鷽よお!」
 拳を握りしめてポーズをとると、セレンフィリティ・シャーレットが叫んだ。
「ええっと、それはいいから、少しは隠して……」
 恥ずかしそうに、セレアナ・ミアキスがセレンフィリティ・シャーレットに言った。
 そんなセレンフィリティ・シャーレットの怨念が実を結んだのだろうか、アワビ養殖にいそしんでいた鷽たちの足許の水槽が、突然鍋に変わった。
「うしょん?」
 鷽たち自身が戸惑う中、鍋の中の水がぐつぐつと煮えだし、アワビの出し汁の中で鷽たちが次々に水炊きになっていった。
「はははは、笑止! このまま食べてあげるわ!」
 今が好機と、セレンフィリティ・シャーレットが鍋の中でもがく鷽たちめがけて走りだした。
「ああ、だから、せめて隠して!」
 申し訳程度に葉っぱのついた小枝でいろいろと隠しながら、セレアナ・ミアキスが後を追いかける。
「な、なんだ!? 全裸の痴女がこっちに走ってくるぞ!?」
 ちまちまと仕方なくアワビ養殖の仕事をしていたセリス・ファーランドが、目を白黒させて叫んだ。
「むむむ、我のアワビを狙ってきた盗人か!? 構わぬ、三六九よ、丸ベタ持って走ってくる女も一緒にやっておしまい!」
「よかろう。仏罰発動!」
 願仏路三六九が、カイザー・ガン・ブツのビームアイを発射した。
「あーれー」
 至近弾の爆発に、セレンフィリティ・シャーレットとセレアナ・ミアキスが吹っ飛ばされる。だが、そこは鷽空間のこと、ちゅどーんに威力はない。
「さらに、仏罰!」
「危ない!」
 第二射を放とうとするカイザー・ガン・ブツの前に、セレアナ・ミアキスが持っていた賽銭箱を投げた。
「あれは、賽銭箱」
 思わず、条件反射的に願仏路三六九が賽銭箱を目で追ってしまう。それに呼応するかのように、ビームアイのビームが逸れて、そばにいたアワビ要塞に直撃した。小さな爆発が起こり、外部装甲として貼りついていたアワビの一つが剥がれて吹っ飛んでいった。

    ★    ★    ★

「ごにゃ〜ぼ☆ なんかとれたよー」
 いきなり天地がひっくり返って、テンペストを装着していた鳴神 裁(なるかみ・さい)が叫んだ。
 たしか、アワビ要塞に便乗でくっついて、キャリアーの鮑三娘の中で待機していたはずなのだが。
『なんとか、立てなおしてみます』
 魔鎧として鳴神裁に装着されていたドール・ゴールド(どーる・ごーるど)が、鮑三娘にコンタクトを試みた。テクノバシーで操作を試みるが、機体制御のオートパイロットのスイッチを入れるのが精一杯であった。
 鮑三娘の機体がなんとか水平になる。とたん、どこかに着水した。
『――なんだか熱くない?』
 鳴神裁に憑依していた物部 九十九(もののべ・つくも)が言った。機内温度がどんどん上昇している。
「だ、脱出!」
 たまらず、鳴神裁が黒子アヴァターラ マーシャルアーツ(くろこあう゛ぁたーら・まーしゃるあーつ)の力で全身に炎を纏って鮑三娘の内壁に体当たりした。大きな穴が開き、鳴神裁が鮑三娘の外へと飛び出す。
 見下ろすと、巨大な鍋の中で、ほとんど本物の鮑と化していた鮑三娘が美味しそうに煮えていた。
 その近くに、すっぽんぽんのセレンフィリティ・シャーレットが落ちてきた。
「ああ、いいお出汁の出たお風呂……じゃない、熱い熱い熱い!」
 たまらず、セレンフィリティ・シャーレットが裸拳で鍋の一部を破壊して脱出した。

    ★    ★    ★

「あちあちあちちちち。せっかくの活きアワビが水煮の加工品に……いや、でも、これはこれで……」
「ポウ、熱いポウ!」
「だから嫌だったんだ」
「これもまた苦行のうち……」
 溢れ出した煮アワビと鷽の水炊きが、大量の出し汁と共に大波となってマネキ・ングたちを呑み込んでいった。

    ★    ★    ★

「何これ、あっつーい!」
 茂みの中で幸せなひとときを過ごしていたネージュ・フロゥが、服を押さえながらあわてて茂みから飛び出してきた。
「何これ、なんとかしないと、きっとどんどん被害が拡大していっちゃうよ!」
 思いっきり、ネージュ・フロゥが最悪の結果を妄想する。それが、全ての厄災をここへと集めだした。

    ★    ★    ★

「なんだか、凄いことになっています」
 その様子を上空から目撃した御神楽舞花が、エリシア・ボックに報告した。
「鍋ですか。もの凄く怪しいですわ」
 エリシア・ボックが、注意するように御神楽舞花に言った。もっとも、言われるまでもなく、限りなく怪しい阿鼻叫喚が下界では繰り広げられていたわけだが。
 そんな中、何かヘビのようなものがその場に近づいていった。イレイザー・スポーンだ。
 流れ出したアワビと水炊きに近づいていくと、イレイザー・スポーンは次々それらを食べて取り込んでいった。みるみるうちに、小さなヘビであったイレイザー・スポーンが、大蛇になり、巨大な蛟の化け物となった。
「でました!」
「分かりましたわ。さあ、退治してしまいましょう!」
 御神楽舞花の連絡を受けたエリシア・ボックが、自身もアクロバットウイングで空中に飛びあがった。御神楽舞花と連携して、上空から攻撃を開始した。
「なんか、よく分からないけど、攻撃するよー」
 巻き込まれる形となった鳴神裁も、上空からイレイザー・スポーンにむかって攻撃を開始した。
 集中砲火を受けたイレイザー・スポーンであったが、大ダメージをくらっても、すぐに新たなアワビと水炊きを吸収して回復していく。
「これでは、キリがありません」
「なあに、じきに物好きの援軍が集まってくるはずですわ」
 呆れる御神楽舞花の言葉にエリシア・ボックが答えたとき、数体のイコンが戦いの場に乱入してきた。
「あれは、前に戦ったことがあったような!?」
 リーフェルハルニッシュを見て、エリシア・ボックが顔を引きつらせた。援軍は援軍でも、敵の援軍がやってきたらしい。