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学生たちの休日15+……ウソです14+です。

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「なんだか、この艦内も殺風景になったわねえ」
 伊勢の艦内を見回して、コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が言った。
 艦首荷電粒子砲を始め、武装関係は着々と強化されてはいるのだが、それに比例して生活ブロックの備品が次々と消えているような気がする。
 いや、気がするのではなく、事実消えているのだ。消えていく先は質屋だろう。目の前にある家計簿がそれを如実に物語っている。
 このままでは、寝る場所も、食事をする場所も、シャワーにトイレさえ、いつの間にかなくなっていそうだ。さすがに、最低限の設備だけは死守しなければ、なんだかとんでもないことになってしまう。
「いったい、何に予算をつぎ込んでいるのやら……。とにかく、伊勢の機能と、私たちの生活を維持することが最優先だわ」
 先日、半殺しにされた葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)の治療費は後回しにして、コルセア・レキシントンは今後の予算作成に頭を悩ませ続けていった。
 まあ、葛城吹雪も契約者であるのだから、そう簡単に死にはしないだろう。

    ★    ★    ★

「ふふふふふ、この程度では自分は死なないであります。生きねば!」
 伊勢の医務室では、全身を包帯でグルグル巻きにされたミイラ男のような葛城吹雪が、ベッドに横たわっていた。
「だが、今はまだ潜伏の時であります。ヒラニプラの山間に隠したこの伊勢が、簡単には見つかるわけがないのであります」
 葛城吹雪がほくそ笑んだ。バレンタインデーのこともあって、現在は教導団に追われている状態だ。見つかれば、反省文100通に、全身を拘束された状態で夜の空京公園に放置されて一晩中リア充にツンツンされるという恐ろしい刑が待っている。ここでつかまるわけにはいかない。
「見ているであります、次のクリスマスやバレンタインは、町ごとリア充を吹き飛ばしてやるであります。それまで、短い春を謳歌するがよい、リア充共めであります」
 どす黒い野望に燃えながら、葛城吹雪が包帯の下からくぐもった声で言った。そのために、着々と伊勢に大量破壊兵器を装備させていっているのだ。
 はたして、この包帯の繭から、葛城吹雪が羽化できる日は来るのだろうか。

    ★    ★    ★

「ふふふふふ、第三世代イコンが次々とリリースされる現在、小ババ様専用イコンも第三世代、いや、新小ババ世代にパワーアップすべきなのだよ!」
 複数のモニタにいくつものCAD画面を展開しながら、三船 甲斐(みふね・かい)が目を輝かせていた。
 どうやら、小ババ様専用イコンをリニューアルしようという野望に取り憑かれてしまったらしい。まさに、マッドなサイエンティストの鑑である。
 アーキタイプである第一世代の小ババ様専用イコンは、大型ブースターを背負った機晶姫のような形をしていた。小ババ様が、イコン中央のコックピットに収納されるという、いかにもイコンらしいデザインだ。
 実際にパラミタ各地を巡った第二世代の小ババ様専用イコンは、ランドセル型のコンテナユニットを背負った小ババ様そっくりの姿であった。コックピットは帽子の部分にあり、ランドセルにもくつろぎ空間が用意されている至れり尽くせりの設計であった。
 その第二世代機の開発には、三船甲斐も大きく関与している。
 そして、満を持しての第三世代機開発である。ここは手抜きをするわけにはいかない。今まで作りためてきたパワードスーツの設定没画……もとい、アイデアスケッチを総動員して最高のイコンを作りあげなければならない。いや、別に、設計図が余っていたとか、そういうわけじゃないのよ、ほんとよ。
「どうせなら、合体、変形、超進化型にしたいものだのう」
 何やら、マッドな理想に取り憑かれる三船甲斐だった。
「本家アーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)が成長バージョンを持っているのだから、小ババ様専用イコンも幼女モードと少女モードを切り替えられるようにしないと……」
 その他にも、様々なオプションをつけたいものだ。
「ええと、あれとあれとあれと……。ふふふふ、夢がふくらむのう」
 らんらんと目を輝かせながら、いくつもの設計図を適当に組み合わせていく三船甲斐であった。

    ★    ★    ★

「えーと、そういうわけで、小ババ様専用イコンの、図面がほしいんですがあ……」
『こばー?』
 猿渡 剛利(さわたり・たけとし)からの呼び出しでイルミンスールの公衆電話に出て来た小ババ様が、意味が分からず聞き返した。
 勝手にイコプラ――小ババ様専用イコンを持っていって押しつけても、ちゃんと受け取ってもらえるか分かったものじゃない。ここは、きちんと根回しをしておこうという、きっちりした猿渡剛利であった。
 それに、今のままでは、資料がなさ過ぎるような気もする。
 というわけで、イルミンスールに電話をかけて小ババ様を呼び出してもらったのだが、案の定電話ではこばこばーの嵐で埒が明かない。
「前回、乗りで作ってしまったため、ちゃんとした設計図がほしいんですが……」
『こばー、こばこばこばこばこばー』
「だからあ……」
『こばこばこば、こばあー』
「ダメだ。これはやっぱり、直接行かないと……」
 さすがに諦めて、いったん電話を切る猿渡剛利であった。