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夏最後の一日

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夏最後の一日

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 朝、シャンバラ鉄道駅前。

「今日は夏休み最後の日、思いっきり遊ばないと」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は時間を確認しながら遊びに誘った親友が来るのを待っていた。親友と遊ぶ様を色々と想像し、この日をどう楽しい物にしようかと考えたり。
「もう来るかなぁ」
 美羽は親友がやって来るだろう方向に視線を向けた。時間は約束の時間数分前を示していた。

 数分後。
「美羽ちゃん、お待たせ!」
 美羽の親友高原 瀬蓮(たかはら・せれん)が現れた。
「それじゃ、行こうか、瀬蓮ちゃん……そうそう、少し高いけど美味しいマドレーヌを売ってるお店に案内してあげるね!」
 美羽は笑顔で瀬蓮を迎えた。親友と行きたい場所は色々とある。ここで長々と時間を潰す暇は無い。
「美味しいマドレーヌ、瀬蓮も食べたい! 是非案内して!」
 瀬蓮はすっかりマドレーヌに興味を向けていた。
 そのためショッピングの最初の店は高級マドレーヌとなった。

 高級マドレーヌ購入後。
「無事にマドレーヌ買う事が出来たね。ついでにラスクまで買っちゃった」
「瀬蓮もついついマドレーヌの他にクッキーの詰め合わせ買っちゃった」
 美羽と瀬蓮は上品な紙袋入っている購入したマドレーヌとついでのお菓子を見た。
「……見てると食べたくなるね」
 と美羽が言うと
「だね。後で食べよう。クッキー、美羽ちゃんにもあげるね」
 隣を歩く瀬蓮はクスリと笑いをこぼした。
 それを受けて
「じゃ、ラスクを瀬蓮ちゃんにあげる。ラスクもとっても美味しいと評判だから」
 と美羽もお返しを。
 そして
「次は可愛い小物とか服とか見てみよう♪」
「うん、そうしよう」
 美羽と瀬蓮は雑貨や衣服などを見に行った。
 美羽と瀬蓮はショッピングを続け色々な物を買い込み、ぶらぶらと歩いていた所、たまたま見知ったあおぞら幼稚園に立ち寄る事に時間はすっかり昼になっていた。

 昼、あおぞら幼稚園。

「ここ、あおぞら幼稚園……明日から子供達が来るから掃除をしてるみたいだね」
「大変そうだね。今日は暑いし」
 美羽と瀬蓮はこっそり園内を覗き込み、保育士達が明日来る園児のために屋内外を掃除しているのを知った。
 そして、
「ねぇ、瀬蓮ちゃん」
「うん、美羽ちゃん」
 二人は顔を合わせ、互いに思いは一緒と確認するなり
「ナコ先生!」
 美羽は園庭の草むしりをしている顔見知りの保育士の女性に声をかけた。
「あなた達は……久しぶりですね」
 気付いたナコは腰を浮かせ、美羽達の所へやって来た。
 そして
「はい。よかったら私達、掃除手伝うよ!」
「明日のためだよね」
 美羽と瀬蓮は手伝いを申し出た。
「えぇ、明日から子供達が通園してくるから総出で掃除をしている所です。手伝いはありがたいですが、今日は夏休み最後ですよ」
 ナコは美羽達の申し出をありがたくは受け取らない。
「気にしないで……ナコ先生あと、もう二人増えるけどいいかな?」
 美羽は笑顔で言うなりふと顔見知りの通行人を発見するなりナコに言い置き、そちらに向かった。
 もう二人とは
「ヒスミ、キスミ、こっち、こっち」
 悪戯好きの双子の事である。
「って、どうしてここにいるんだ」
「幼稚園で何してるんだ」
 声をかけられた双子はまさか美羽に会うとは思っておらずびっくり。
「今から掃除するんだ。二人もしようよ」
 美羽が掃除に勧誘。
 当然
「掃除? 何で暑い中、掃除しないといけないんだよ」
「そうそう、さっきも散々な目に遭ったしさ」
 双子は嫌そうな顔。休みが潰れる上に先程イルミンスールの公園で散々な目に遭ったので。
「まぁた、何かやったんだ……教えて欲しいなぁ」
 双子を知る美羽はすぐに何かあったのか読み取りジト目で双子を見た。
「何もしてないさ」
「さぁ、やるか、ヒスミ」
 美羽の蹴りで度々成敗されている双子は心一つに悪さを隠し掃除をするため園内へ。
 その時、
「美羽ちゃん、あれって……」
 瀬蓮は双子の後ろを尾行する吹雪入り段ボールに気付き、こそっと美羽に耳打ちすると
「……多分、双子の監視役だよ。だから二人には……」
 悟った美羽が口元に人差し指を立てた。

 ともかく、新たに加わった四人は掃除に参加する事に。
 美羽達と双子は暑くて大変な園庭の草むしりや遊具の手入れを手伝う事に。ちなみに屋内は教室や廊下などの掃除となっている。
「あちぃ〜」
「何で外掃除なんだよぉ」
 双子はダウン気味。
「何でって外が一番大変だからだよ。きちんと暑さと熱中症対策してるんだから文句言わない!」
 文句垂れる双子にぴしゃりと言い放つ。掃除と双子の指揮と大変である。
「ぶー」
 双子は渋い顔で草むしりを続けた。

「こんなに暑いのに植物は元気だよ」
 瀬蓮は花壇の水やり。
「うわぁ、本当だぁ」
 美羽も花壇を覗き込み暑い中立派に花咲く植物に感動。

 美羽が瀬蓮とやり取りをしている間。
「……今の内にぱぱっと終わる物を出すか」
「……あぁ、あれだろ。地面に生えている植物を吹っ飛ばす魔法薬」
 双子が緑の液体が入った瓶を取り出し、
「よーし草むしりだ」
「投入!」
 早速地面に数滴落とす。
 その時、
「って、二人共何やってるの?」
 美羽が気付くが、すでに時遅し。
「草むしり。この液体をかけるとかけた範囲の草が根っこごと吹っ飛ぶんだ」
 ヒスミがもう一滴地面に落とそうとし
「見てみろよ……って、ヤバ花まで吹っ飛んでやがる。ヒスミ、またやり過ぎ……」
 キスミは魔法薬の効果に驚いた。
「確かに草が自分から吹っ飛ぶのはいいけど……綺麗に咲いている花を苛めるのは駄目!」
 美羽は注意と共に仕置きとしてヒスミと同罪としてキスミにも魔法薬共々蹴りをぶち込んだ。
「!!」
 双子が吹っ飛ぶと同時に空を漂う魔法薬。
 それを美羽より先にキャッチしたのは
「……(ふふふ、面白効果を追加でありますよ)」
 吹雪であった。しかも追加の素材を混ぜてからこっそり双子にぶっかけた。
 途端、
「!!」
 双子は再び吹っ飛んだ。どうやら人間にも効果が出るようになったらしい。
「な、何で俺達が吹っ飛ぶんだよ」
「と言うか、今オレ達に薬をぶっかけたのは誰だよ?」
 訳の分からぬ双子は顔に疑問符を浮かべるが周囲を捜す隙無く
「……それより、花を元に場所に戻してあげるんだよ」
 美羽が厳しい顔で双子の前に仁王立ちに立ち、厳しく指導。当然吹雪が関わっている事を知りながらも言わない。
「……(ふむふむ、追加効果で人間吹っ飛ばし効果が追加されたでありますか)」
 吹雪はこそっと魔法薬を地面に転がしてから呟いた。
 双子は魔法薬使用を諦めて真面目に手伝いを始めた。
「瀬蓮ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だよ」
 美羽と瀬蓮も頑張った。
 ある程度、落ち着いた所で休憩となり美羽達と双子は屋内に入り、冷たい飲み物やお菓子を用意して貰った。その際、美羽達も美羽達は購入したばかりのお菓子を保育士達に振る舞った。
 それから
「途中、悪さしてたけど、掃除はきちんとしてくれたからご褒美」
「瀬蓮からもクッキーをどうぞ」
 美羽と瀬蓮は双子にもご褒美をあげる。
「お、うまそうだな」
「二つとも貰うぜ」
 双子は嬉しそうに受け取るなり即頬張り和みの顔に。
 それから
「瀬蓮ちゃん、ラスクをどうぞ」
「美羽ちゃんにはクッキーを」
 美羽と瀬蓮はラスクとクッキーを交換して食した。
 ついでに
「……二人の監視、お疲れ」
 美羽は双子に気付かれぬように吹雪にも差し入れをした。共に双子を相手にする同志として。
「……ありがとうであります」
 吹雪はありがたく受け取り頬張った。
 この後、美羽達はしばらく手伝い、双子は用事があるからと行ってしまった。当然、双子の後ろには段ボールで尾行する吹雪がいた。