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夏最後の一日

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夏最後の一日

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 昼頃、空京。

「あ、いんぐりっとちゃん、こっち、こっち」
 天苗 結奈(あまなえ・ゆいな)は通りの向こうから急いで来る恋人を視認するなり元気に手を振って呼んだ。
「お待たせしました。今日はお誘いありがとうございますわ」
 結奈の元に着いたイングリット・ネルソン(いんぐりっと・ねるそん)は笑顔でデートに誘ってくれた事に礼を言った。
「さぁ、いんぐりっとちゃん、行こう、デート♪」
 そう言って結奈はイングリットの腕に自分の腕を絡ませ、背の高い彼女を見上げた。
「えぇ、行きましょう」
 イングリットは笑顔で小さな恋人を見下ろした。
 二人は仲良く腕を組んで店巡りを始めた。

 店巡り中。
「ねぇ、ねぇ、いんぐりっとちゃん、このお店に入ってみよう!」
「えぇ、いいですわ」
 色んな店を巡る中、結奈は通り掛かったブティックを指し示しイングリットを誘って来店した。

 ブティック店内。

 売れ残った夏物が格安に販売され、秋物が大半を占め帽子やマフラー、靴など服に関わる物が所狭しと並んでいた。
「可愛いお洋服が沢山あるね」
「……えぇ、店内もすっかり秋ですわね」
 結奈とイングリットはあちこちの棚に目を巡らせ、時には手に取ったりと物色していた。
 その最中
「ねぇ、いんぐりっとちゃん、これ試着してみて、きっと似合うからお願い!」
 結奈が見て気に入った服を手にイングリットに試着をお願いする。
 じっと結奈が手に持つ服を見て
「……これをわたくしが……分かりましたわ。折角あなたに選んで頂きましたし、着てみますわね」
 自分が選ばないような物だったため少し迷うも折角恋人が選んでくれたのだからと試着する事に決めた。

 試着後。
「どうです?」
 イングリットは自分がチョイスをしない服を着ているためか少しだけ不安そうに選んでくれた結奈に聞いた。
「とっても似合ってるよ。いつものいんぐりっとちゃんも素敵だけど今のいんぐりっとちゃんも素敵だよ」
 結奈は手を叩いて褒めた。まさにその通りでいつもとは違う魅力が結奈が選んだ服によって引き出されていた。イングリットが好きな結奈だからこそ選んだ服だったのだ。
「……そこまで褒められると照れてしまいますわ」
 と言うもののイングリットはすでに照れていた。
 ここで
「いんぐりっとちゃん、今度は私の服も見立てて」
 結奈は次は自分をと見立てをおねだり。
「おまかせ下さいな」
 イングリットは結奈のおねだりを受けて見立てを始めた。
 そして、イングリットが結奈のために選んだ服は
「えへへ、似合ってるかなぁ」
 一見結奈のイメージとはかけ離れている物だが、試着してみると存外似合っていたり。
「えぇ、とても似合っていますわ」
 イングリットは嬉しそうに頭から爪先まで衣装が替わった結奈を見た。
「ありがとー」
 結奈は嬉しそうに言った。
 この後、しばらくこのお店で色んな服を見ては試着をしたり
「この帽子可愛いよ!」
 結奈は愛らしい猫耳が付いた帽子を被って見せたり
「この靴も素敵ですわ」
 イングリットが靴を試着してみたりと賑やかに過ごした。

 ブティックの他には
「ん〜、アイス美味しいねぇ」
「そうですわね。今日で夏が終わるとは言え、暑いですものね」
 結奈とイングリットはアイスクリームを手に街を歩いていた。まだ暑いため涼を得るためである。
 突然
「……」
 自分の物を食べていた結奈がじぃとイングリットの手にあるアイスクリームに視線を注ぎ始めていた。
「どうしまして?」
 結奈の視線に気付いたイングリットは小首を傾げながら訊ねた。
「いんぐりっとちゃんのアイスおいしそう」
 結奈が可愛らしくおねだり。
「良ければ、一口食べてみます?」
 あまりにも可愛い結奈にイングリットは微笑みを洩らし食べかけのアイスを差し出した。
「うん、私のも一口食べていいよ」
 結奈はぱぁと表情を明るくさせると共に自分のアイスも差し出し互いに互いのアイスを一口食べて味を楽しんだ。

 アイスを食べ終わってからもぶらぶらと二人は歩き回り
「……(何か、いんぐりっとちゃんとお揃いで持てる物無いかなぁ)」
 結奈は恋人とお揃いで持つにぴったりな物は無いかと店や露店で探していたが、なかなか見つからずだった。

 しかし、しばらく歩いた結果、
「あっ、見っけ。いんぐりっとちゃん、これこれ」
 望みの商品に出会う事が出来、結奈は自分が目を付けたお揃いのストラップをイングリットに見せた。
「まぁ、お揃いですわね」
 イングリットがお揃いという事に喜んでいるのを見て
「うん、どう? ストラップだから普段身に付けられるし、お揃いだし、今日の記念になるよ?」
 結奈が誘ってみると
「聞くまでも無くですわ」
 イングリットは即答した。
 二人の意見が満場一致した所でお揃いのストラップを購入した。

 購入後、
「いんぐりっとちゃんとお揃い♪」
「大事にしますわ♪」
 結奈とイングリットはお揃いのストラップを見せ合い、微笑み合った。